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複数のキャラが該当する。

大本は古典『滝夜叉姫』の登場人物であるが、現代においてはそこからネーミングを拾った、小説『甲賀忍法帖』に登場する忍者(本項で解説)が有名であり、そこから派生して他作品でも忍者キャラの名前として使われることがある。

滝夜叉姫の夜叉丸 → 平将門の娘とされる妖術師「滝夜叉姫」の臣下。

甲賀忍法帖の夜叉丸 → 本項で解説

NARUTOの夜叉丸 → 夜叉丸(NARUTO)

東京レイヴンズの夜叉丸 → 『滝夜叉姫』の方を元ネタとして名付けられたキャラ。

妖怪百姫たん!の夜叉丸 → 『滝夜叉姫』の夜叉丸を美少女化したキャラ。

『甲賀忍法帖』の夜叉丸についての概要

声:矢薙直樹

山田風太郎の小説甲賀忍法帖、およびその漫画版「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」に登場する忍者。

伊賀・鍔隠れの里の十人衆が一人。メンバーの中ではかなりの若手。

女の髪をより合わせ獣油を染み込ませた糸状(※漫画版。原作では鞭状)の武器「黒縄」を持つ。

同じ里の忍者蛍火とは許婚で、深く愛し合っている間柄。

漫画版では、登場時点はロングヘアを後頭部で縛った髪型(トップ画像)であるが、冒頭の甲賀卍谷衆、風待将監との戦いにより自ら髪を切らざるを得なくなり、ボサ髪のショートカットになってしまう。

原作小説で「美少年」と明記されているが、漫画版のデザインはどちらかといえば不良っぽさ(あるいは野性味)を感じる顔立ちのためか、せがわまさきのラフ画には「美少年?」と書かれていた。

風待将監との代表試合後、伊賀と甲賀の不戦の約定が破られ、その巻物を伊賀の里に持ち帰ろうとするが、甲賀の頭領・甲賀弾正に、全く気づかぬうちに懐の巻物をすり取られる。

その後は無くした巻物を探して里への帰還が遅れ、蛍火や仲間への被害への懸念や失態への不甲斐なさを感じながらの道中で、甲賀忍者・如月左衛門に見つかってしまう。左衛門は伊賀忍者の副頭領である薬師寺天膳の声を模し、姿を隠して探りを入れる。

夜叉丸は、天膳が姿を現さないのは甲賀の攻撃を受けて「死んだ」ためと納得し、巻物がなくとも不戦の約定が破られたことを伝える。

しかし、その情報に驚愕した左衛門がうっかり地声を出したことで人違いに気づき、反撃に出る。

相手が伊賀の倒すべき1人と知り、左衛門の首を土産に失態の汚名返上にと思った瞬間、左衛門に同行していたもう1人の甲賀の忍びである霞刑部の襲撃を受け、手と首の骨を砕かれ、死亡する。

その後は、伊賀の里への潜入を企図する左衛門によって顔を写し取られ、死体は刑部によってどこへともなく処分された。

戦闘力

若年ながら御前試合に伊賀の代表として選ばれただけはあり、歴戦の猛者である風待将監とも互角の戦いを演じるほどの高い戦闘能力を有している。

しかし、逆にその若さ故に油断しやすく、御前試合の後で預かった大切な人別帳を甲賀弾正に容易くスリ盗られてしまうという大失態を犯している。

概要にもある通り、極細の糸状武器「黒縄」を自由自在に操る「黒縄地獄の術」の使い手。

この武器は原作小説と漫画版では描写が異なり、原作小説においては「極細の鞭」というべき描写となっている。

このため、原作における夜叉丸の戦い方は「鞭使い」のそれであり、例えばインディ・ジョーンズなどに類似する。

切断能力も「人体を切り裂く」といった程度であり、要するに「使い方次第で刀並みの切断能力を持ち合わせる鞭」といった描写となっている。

一方、漫画・アニメ版においてはいわゆる「糸使い」のイメージとなっている。

これは、後述するが「夜叉丸をアイディア元のひとつとして産み出された「糸使い」の元祖キャラ」のパブリックイメージを、逆輸入したものである。

こちらのバージョンでは極細の切断糸である「黒縄」を一度に何本も操ることで相手の動きを封じたり、バラバラに切り裂く戦法を得意とする。

また、細く長い糸のような性質と、力加減の僅かな調整だけで拘束と切断を完璧に切り替えたりするほどの夜叉丸自身の驚異的な操作技量も相俟って応用の幅も広く、攻撃から防御、周囲に忍ばせての即席の罠まで、劇中でも変幻自在の多芸振りを見せている。

「糸」を使って戦うキャラの“先祖”

今でこそ「極細の糸を手足の如く使って戦うキャラ」というのは一ジャンルを形成するほどメジャーなバトルスタイルとなっているが、その源流をたどると行きつくのが夜叉丸である。

ただし「糸使いの元祖(後述)」が産み出される際にアイディア元のひとつとなったのが夜叉丸、という関係性であり、夜叉丸自体が直接、今でいう「糸使い」の元祖となっているわけではない事には注意が必要である。

前記した通り、原作小説における黒縄の描写は武器ジャンルとしては「鞭」であり、今でいう「糸使い」とは直接には結びつかない。

では実際に「糸使い」という戦闘スタイルを生み出したのはといえば、山田風太郎に強い影響をうけた作家「菊池秀行」が、「魔界都市ブルース」シリーズの主人公として作り出した「秋せつら」になる。

彼の戦闘イメージを考案する際、夜叉丸の「黒縄」と、おなじく山風作品に登場する忍法「風閂」をアイディア元として、さらに独自のスタイリッシュさを加えて産み出された秋せつらの戦闘スタイルが今でいう「糸使い」である。

そのため、これも前記した通り漫画及びアニメ「バジリスク」における夜叉丸の「両手の指を使って無数の鋼線を自在に操る」描写は、上記の「秋せつら」が広めた「糸使い」のパブリックイメージを逆輸入した形である。

ネット上で時たま見かけられる「糸使いの元祖はせつらではなく夜叉丸」という誤った言説は、漫画かアニメでしか夜叉丸を知らず、この描写を誤解したためと考えられる。

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