解説
スタジオぴえろ10周年記念作品として製作されたOVA作品で、原作・脚本・監督は押井守が手がけた。
『家族』をテーマとして、本作と同じスタジオぴえろで製作し押井が監督したヒットアニメ『うる星やつら』と同様に、ある家庭に美少女がやって来て起こる騒動を描くコメディーであり、配役もそのほとんどが『うる星やつら』の出演者である。そのため、後に『裏うる星やつら』とも評されることになった。
アニメでありながら小劇場での舞台演劇のような演出がなされており、饒舌に語られる講談調の長台詞や楽屋オチ、立ち食い等の押井が得意とする題材や小ネタが全体に散りばめられている。
押井の趣味が色濃く反映された実験的作風ゆえに商業的にはあまり振るわなかったものの、出演した声優陣からの評価は好評で、実際に舞台俳優として活躍している者が多かったためか、本作の舞台演劇調の絶妙な掛け合いを皆現場で嬉々としながら楽しんでいたという。
オープニングのナレーションは永井一郎で、カッコウ、コウテイペンギン ダチョウなど鳥類の生態が語られる。
上記のとおりみんなで嬉々として演じたため、永井はそのオープニングが出ない最終話で、屋台の親父として登場しているうえ、自身の収録後もスタジオに居座ったらしい。
オープニングアニメーションは映像作家の南家こうじが手がけており、テレビの走査線から文字や絵が浮き上がるという独特なもので、エフェクト作画とセルアニメの撮影技術を最大限に利用した当時としては衝撃的かつ斬新なものだった。
また、今作はうつのみや理の作画監督・レイアウトマンデビュー作でもあり、千葉繁が初の音響監督を担当している。
1990年には本作を90分に再構成・再編集した劇場版が『MAROKO 麿子』というタイトルで劇場公開された。
あらすじ
高級マンションに父母と住む高校生・四方田犬丸(よもたいぬまる)は、ホームドラマ的な日常に退屈していた。
そんな或る日、犬丸は我が家を訪れた四方田麿子(よもたまろこ)と名乗る少女に抱きつかれる。
彼女は自身を38年後の未来からやってきた未来人であり、犬丸の孫娘なのだと語り、その尻に四方田家直系の者にしか顕れぬ「五芒星の蒙古斑」があることを見せる。
麿子を家族に受け入れる父・甲子国(きねくに)と犬丸だったが、その事実を受け入れられず自分は飽くまで「嫁」という「家族でありながら血縁の外にいる他者」であることを思い知り家を出る母・多美子。
果たして麿子は本当に犬丸の娘なのだろうか。そして彼女を追ってやってきたタイムパトロールを称する男・室戸文明の目的は何なのか。
四方田家による明朗家庭崩壊喜劇の幕が上がる。