憎悪のホワイトルーム生
ぞうおのほわいとるーむせい
ようこそ実力至上主義の教室へに登場するキャラクターの通称。
崇拝のホワイトルーム生とは違い、主人公の綾小路清隆に対し、憎悪の感情を抱いているホワイトルーム生の一人で、綾小路の一学年下の5期生に該当する。
月城理事長代理がホワイトルームから呼び出した刺客で、2年生編のキービジュアルで綾小路と共に映る6人の1年生の中に存在する。
ホワイトルーム生として、5期生の中で飛び抜けた成績を納め続けていた筈だが、毎度のように4期生の綾小路を引き合いに出されている。
『1年前の綾小路清隆は、もっと凄かった』
教官に言われたこの言葉が、ずっとトラウマのように残り続けており、ホワイトルームで1番を目指すために綾小路清隆を憎み続けている。
ある意味、洗脳教育の被害者の完成体であり綾小路を『憎悪』する感情を持ち続けたことで、ホワイトルームにおいて生き残ることに成功している。
ホワイトルームにいる間はどんな手段を使っても『綾小路清隆』が1番でないことを証明しなければならないと考えており、それを生きる目的としている描写が存在する。
──そう。
直接葬り去ることが出来る、唯一無二のチャンスが巡ってきた。
そのためには常識などという絵空事はかなぐり捨ててしまう方がいい。
言うなれば、殺してしまうのも‥‥問題解決方法の1つだ。
この先、2年生編の核心に触れるネタバレがあるため注意。まだ原作小説を読んでいない方はブラウザバック推奨。
多くの生徒が船内の施設へと足を向けている時間。
1年Aクラス天沢一夏は、1人の生徒が待つ客室内へと足を運んでいた。
「この時間、同室の子が戻ってきたらどう言い訳するつもり? って、普通なら言うんだけど、あんたのことだから絶対に戻ってこないように計算してるんでしょ?」
そう問いかけた天沢に、薄く笑いかけどちらとも答えない。
「今の状況分かってる? 七瀬ちゃんも堀北先輩も、それから龍園先輩も、皆が皆あんたを血眼になって探してるみたいだよ。そのまま放っておいていいの?」
「これでいいんだよ。面白いように計画が進んでいるよ」
「ならその計画ってヤツの詳細をあたしにも教えてよ──拓也」
拓也と呼ばれた、1年Bクラスに在籍する八神拓也は静かにベッドから立ち上がった。
憎悪のホワイトルーム生の正体は、1年Bクラスに所属している八神拓也だった。
同じホワイトルーム生の天沢一夏とは同期生同士で、付き合いの長さもあってお互いに下の名前で呼び合っている。
よう実の全キャラクターの中でも、トップクラスの危険人物で4期生の綾小路と同様に自分から前に出ようとしていない場面が多く目立つ。
最たる例は、やはり月城理事長代理の命令に背き続け暴走しているところにある。
4月の特別試験の時点で、綾小路を退学させるのがホワイトルーム側の考えであり命令であったにもかかわらず無視している。
本人曰く、「綾小路先輩に気付かれることなく色々と試すのが僕のブーム」らしい。
まず入学前に、月城から綾小路及び2年生156名の詳細なデータを伝えられており、櫛田桔梗のようなかつて問題児だった生徒の過去なども知っている。
加えて天沢にもその情報を共有しているらしく、基本的に綾小路を含めた2年生の全ての生徒の情報を知り尽くしている。
更に無人島サバイバルでは、綾小路に気付かれたいのか気付かれたくないのかよく分からない行動を取り続けており、俗に言うかまってちゃんな性格をしている。
しかし、その行動はあまりに暴力的かつ危険な手段を好んで行なっている。
綾小路に近い人物なら、誰であっても手を出す危険性があり、その被害を最も受けたのは紛れもなく櫛田であろう。
同じ生徒会メンバーの堀北に対して不審な手紙を送ったり、龍園のクラスメイトを怪我させ、その疑いの矛先を宇都宮に向けたりと、その手段は非常に悪辣かつ狡猾。
自分の邪魔をするなら、たとえ同期の天沢であっても容赦せず、良くも悪くも自己中心的な一面が目立っている。
天沢が綾小路に『崇拝』に近い恋慕を抱いているにもかかわらず彼への接触が意外に少ないのは、八神に対するある程度の情を持ち合わせている事と、そもそも綾小路と必要以上に接触したら八神と敵対してしまうので、余計な衝突を避けているからである。
2年生編5巻の満場一致特別試験では、試験前に櫛田を煽ることで、プライドを傷つけられた櫛田が試験中に綾小路と堀北のどちらかを退学させるべく強硬手段に出るが、その櫛田は綾小路の前に屈した。
それ自体は八神にとって予想された範囲内であったが、綾小路が関与しない1年生内の特別試験では裏で好き放題やっていたらしく、予想外だったのは、ホワイトルームの事情を知る1年Aクラスのリーダーである石上京が八神の存在を疎ましく感じ始めていた。
そこで石上は、1年生で最初の退学者となった1年Cクラスの波田野という生徒を罠に嵌めて退学に追い込んだのが八神だという事実を同じCクラスの椿桜子と宇都宮陸に明かして、協力を持ち掛ける。八神からの命令という体で綾小路のクラスメイトである佐藤麻耶を脅して、八神がホワイトルームの刺客であることを綾小路に間接的に伝えた。
2年生編7巻の文化祭前に綾小路は八神排除の一計を案じ、八神が所属する生徒会の会長の南雲雅と、無人島サバイバルでクラスメイトに大怪我させた犯人を追っていた龍園のそれぞれに協力を持ち掛ける。綾小路は、自分が書いた南雲宛てのラブレターを軽井沢恵ら数人を介して生徒会所属の堀北に託し、その手紙は最終的に堀北から八神に託される。八神はその手紙がホワイトルームの習字のカリキュラムで習う筆跡であったことから、ラブレターを装った綾小路からの秘密の手紙であると直感、中身を確認していくつかのアナグラムを発見する。
文化祭終盤、綾小路と南雲が自分への対応を話し合うために密会することをアナグラムから突き止めた八神は、密会場所とされる生徒会室に意気揚々と現れるが、その生徒会室には現れたのは南雲と、龍園であった。
綾小路から生徒会室に現れた人間が無人島の事件の犯人である可能性が高いと事前に聞かされていた龍園は、被害者の小宮叶吾らに犯人は八神と嘘の証言をさせることで八神を追い詰めていき、南雲からも問い詰められる。龍園が連れてきた真嶋智也、坂上数馬ら教員からもGPS情報によって、八神が確かに事件現場近くにいた事実が明らかにされ、八神が犯人である可能性が濃厚になる。
綾小路が現れて、ついにホワイトルーム生として対面の時と思い込んでいた八神は、綾小路どころか龍園に追い詰められている状況に次第に冷静さを失い始め、
「僕は、僕はまだ彼と戦っても…いや、それ以前の状態なのに?こんなところで、終わる?終わるなんて、そんなバカな…!」
「直接相手にするまでもない…ということか?は、はは…は…はっ…!ふざけるな、ふざけるなあ!」
激昂した八神は、ついにホワイトルーム生としての本性を現し、自分に向かってきた伊吹澪を一撃で倒し、制止しようとした真嶋すら殴り飛ばして、道連れにすべく綾小路の元へ向かう。
しかし、一部始終は南雲の携帯から綾小路に実況されており、綾小路を連れ戻すべく、ホワイトルームの関係者が文化祭に紛れ込んでいたことから、綾小路から連絡を受けたホワイトルーム関係者がその場に現れたことで、八神は戦意喪失してホワイトルーム関係者に連行される形で学校を去る。後日、教師への暴力行為などから退学処分となった。
綾小路と七瀬から八神の「気付かれたいのか気付かれたくないのかよく分からない行動」の真意について聞かれた天沢は、自身の推測として八神は口では強気なことを言っていたが、深層心理では綾小路と直接対決することを恐怖していた故、遠回りし続けていたと語った。