概要
初期正式名称「英雄伝説IV 朱紅い雫」。後に「ガガーブトリロジー」シリーズとして再編されるに当たり、「英雄伝説 朱紅い雫」と改題された。PC-9801向けとして発表されたRPG。続編である「海の檻歌」はWindowsで発売となったため、PC-9801シリーズ用「英雄伝説」シリーズとしては最後の作品になる。
物語全体に温和な雰囲気が漂っていた前作「白き魔女」と異なり、序盤から人死にの多く出る重い物語が展開される。特に物語中盤のあるイベントは、その衝撃の強さ、あまりにも救いのなさすぎる展開から話題を呼んだ。
また本編のシナリオとは関係ないオープンシナリオ(いわゆるクエスト依頼)が100以上存在して、本編をクリアするためにオープンシナリオをクリアする必要はなかったが、あるオープンシナリオをクリアすると連動した別のオープンシナリオが登場したりして、それぞれにストーリーがあったりするなど、ゲームをより楽しめる仕様になっていた。
後にガガーブトリロジーに組み込まれる形でWindowsに移植されたが、この際に大規模なリメイクが行われており、物語の大筋こそ変化ないものの、ゲームとしてはほぼ別物と言っていいレベルで変化している。家庭用移植作は、プレイステーション版がPC-9801版準拠、プレイステーション・ポータブル版がWindows版(ガガーブトリロジー)準拠。
あらすじ
エル・フィルディンの地はバルドゥス神とオクトゥム神、及びこの二柱を信奉する信徒たちの抗争により混乱に陥っていた。孤児としてバルドゥス教会で育てられたアヴィンとアイメルの兄妹は、ある日のオクトゥム信徒の襲撃により生き別れとなってしまう。慈悲の賢者レミュラスのもとに流れ着き、そこで17歳の青年に成長したアヴィンは、レミュラスを看取った後、友人マイルと共にアイメルを探す旅に出るが…
主な登場人物
以下、声の出演は原則としてCDドラマ版である。
メインキャラクター
アヴィン
CV:緑川光
主人公。17歳。バルドゥス教会でアイメルと共に育てられた孤児。バルドゥス教会陥落後は賢者レミュラスの元に流れ、彼が亡くなるまで育てられた。黒魔法(Windows版)と剣の使い手。バルドゥスの神宝・カベッサを持つ。作中通してシリアスな運命に翻弄される彼であるが、二次創作界隈ではシスコンにされるかBLな関係にされるかのどちらかが圧倒的に多い。
PC-9801版では、ゲーム開始後の幼少時代の回想シーンにおける性格診断でキャラメイクが行われ、能力や習得する魔法系統(白、黒、精霊)が変化する。
アイメル
CV:小西寛子
15歳。アヴィンの妹。バルドゥス教会でアヴィンと共に育てられた孤児。Windows版では「ドゥルガーの娘」としてオクトゥム信徒に付け狙われており、このため半ば隠棲に近い生活を送っている。NPCでパーティーには加入しない。バルドゥスの神宝・クエルポを持つ。
マイル
CV:石田彰
18歳。アヴィンの親友であるウルト村の青年。友達思いでおっとりした性格。作中でも貴重な白魔法とブーメランを使いこなす。アヴィンを心配して旅に同行する。
ルティス
CV:平松晶子
16歳。その生い立ちからバルドゥス神を憎むようになったオクトゥム信徒の娘であり、アヴィン達の抹殺を狙って作中何度か襲いかかってくるが、ある事件を切っ掛けにアヴィン達と行動を共にするようになる。投げナイフと黒魔法、「ガガーブトリロジー」版ではそれに加えて白魔法も使う万能キャラ。
ガウェイン
CV:小室正幸
61歳。「力の賢者」と呼ばれる三賢者の一人であり、オクトゥム信徒の襲撃からアヴィン達兄妹を守った本人でもある。海の英雄という異名も持つ英傑。後半からプレイヤーキャラクターとなり、武器はメイス、魔法は白魔法を使用する。
ミューズ
CV:折笠愛
本名ミルディーヌ・ウリエル・シルヴィアナ・エスメラス(頭文字を取ってM・U・S・E)。18歳。エル・フィルディンの第一王女。二大宗教の確執に無関心を装っている王家の対応を歯がゆく思い、真相を究明しようとしている。わがままな性格であるが、民を思う気持ちは強い。武装はムチと火の精霊魔法。
マーティ
24歳。生活費を捻出するために冒険者として日銭を稼いでいる青年。博識な反面、知識はあっても世間の常識には疎い面もある。いまいち頼りない印象がつきまとうが、黒魔法の腕は確か。CDドラマには登場しない。
ダグラス
CV:森川智之
28歳。「迅雷」の異名を持つ凄腕の剣士。豪放磊落で明朗快活な性格。騎士道を追求して修行の旅を続けている。パーティーメンバーに加わるキャラの中では、唯一魔法が使用できない。
アルチェム
CV:川菜翠
15歳。PC-9801版ではニューボルンの街角で会える冒険者。Windows版では木霊の森に住む少女。清楚で慈愛に満ちた性格をしている。メイスと白魔法の使い手であり、特に白魔法の使い手が他にマイルとガウェイン(ただし後半でないと加入させられない)しかいなかったPC-9801版では(パーティーメンバーをある程度自由に選択できるにもかかわらず)、回復要員として半ば必須キャラ扱いされていた。
エレノア
ギアにいる温和で淑やかな女性。水の精霊魔法と鈍器を使う。PC-9801版では20歳だが、Windows版では26歳(!?)にされるなど、女性としてあまりにも酷い扱いを受けている。また初期設定では、行方不明&記憶喪失となっていたミューズの姉でありもう一人の王女だった。CDドラマには登場しない。
ラエル
ギアに住む少年。斧と黒魔法を使う。魔法使いにしては体力もそこそこあり戦闘でも役に立つ。本人は成績優秀だから魔法学校を早く卒業したと思っているが、ラエルの悪戯がひどすぎるための厄介払いだった。生意気な性格だが、パーティーから離れるときは寂しがるなど、意外とかまってちゃん。CDドラマには登場しない。
ルキアス
CV:田中敦子
23歳。ダグラスと同門であり、サファイア・アイの異名を持つ凄腕の女剣士。風の精霊魔法も使いこなす。「白き魔女」に登場した小説「女剣士サフィー」の主人公サフィーのモデル。
コンロッド
28歳。旅をしている貴族の青年(階級は男爵)。土の精霊魔法と斧を扱う。気のいい性格だが、貴族育ちのためかやや世間ずれしている。Windows版ではバロアの領主になっている。CDドラマには登場しない。
ミッシェル
CV:松本保典
本名ミッシェル・ド・ラップ・ヘブン。28歳の魔導師。若年ながらもすぐれた能力の持ち主。実際にはガガーブの向こう、ティラスイールの出身であり、その優れた魔法能力でガガーブ越えを果たした。
トーマス
ガウェインの部下である船員。エル・フィルディン最高速を誇る高速船プラネトス号を任されている。「白き魔女」に登場した小説「キャプテン・トーマス」の主人公、キャプテン・トーマスその人。CDドラマには登場しない。
その他
ベリアス
オクトゥム信徒を率いる人物で『ベリアス卿』と呼ばれている。アヴィンと同じく真実の島で託宣を受けてから、オクトゥムを復活させることで世界を救おうと企む。Windows版ではルティスとの師弟関係がより強く描かれている。またWindows版ではオクトゥムの力で蘇らせたマイルを自分の代理人として操り、各地で数々の混乱を引き起こした。
マドラム
暗殺者。かつてはガウェインの弟子だった。PC-9801版では恋人ドミニクをボルゲイドの呪いから救うために暗殺者となり、アイメルを含めて正神殿の者を9人殺めた。カナピア島でアヴィンと戦い敗れるが、死に際にガウェインから「お前の魂は正神殿の者だ」と言われて、「俺で十人目。これでドミニクの呪いは解ける。サールの祠の扉も開かれるでしょう」と言い残して亡くなった。Windows版ではドゥルガーの娘に選ばれたドミニクを失ったことにより、宗教に疑問を持ち、暗殺者として行動する。
レミュラス
見晴らし小屋に住む賢者。カテドラール襲撃から逃れてきたアヴィンを引き取り育てた。Windows版では、マイルの魂を助けに冥府の穴に落ちたアヴィンに、マイルの魂を探す手がかりを与えた。
エスペリウス
バルドゥス教会の最高導師。ベリアス卿がカテドラール襲撃したときに死亡するが、その魂は生きていて、ボルゲイドからアヴィンを守った。PC-9801版では神剣エリュシオンの改名をしたのはアヴィンであり、アヴィンはエスペリウスの名前から『エスペランサー』と名付けた。
オレシア
バルドゥス教会の神官。アヴィンとアイメルの育ての親。カテドラール襲撃から逃れた後は、アイメルとベネキア修道院で暮らしていた。
ドミニク
マドラムの恋人。カナピア島がオクトゥム信徒によって襲撃されたときにボルゲイドから呪い(正神殿の者を10人殺さなければ解けない呪い)をかけられた。マドラムはドミニクを救うために暗殺者となり、アイメルを含めた正神殿の者を9人殺害した。実はザールの精霊の祠を守る巫女であり、復活したドミニクの祈りによってザールの祠の扉が開かれた。ちなみにWindows版では故人で、先代のドゥルガーの娘だった。
シャノン
CV:佐々木庸子
17歳。チブリ村の村娘。陶酔傾向が強く、思い込みの激しい性格で、相手の話をまったく聞かない困った人(典型的なストーカータイプ)。魔獣に襲われているところをアヴィンとマイルに助けられて以来、マイルに惚れ込んで彼を追い回すようになる。NPCでパーティーには加わらない。
ルカ
ギアに住む鉱夫の少年。ルティスの弟。
精霊
ドゥルガー
精霊神。バルドゥスとオクトゥムの相克の果てに姿を現した。光にも闇にも与せず、中立の立場をとり、世界に大地を創り出し、そこに様々な生命を育んだ。生命の母とも言える存在だが、同時に冥府を守り、死を司る神でもある。ドゥルガーの眷族として、ネフティス、スコティア、イドゥン、ザールの四精霊がいる。
PC-9801版では眷属である四精霊同様に、ベリアス卿の術で呪いを受けて操られ、アヴィンたちの前に立ちはだかる。アヴィンに倒されて元に戻った後は戦いを見守る立場をとり、「神剣エリュシオン」を持ち、四精霊の加護があるアヴィンにオクトゥムを倒すことができることを示唆して、バルドゥスが出現したときは「神とは力ある存在の核でしかない」と戦うしかないことを伝えた。
Windows版では女性を思わせる姿をしている。「ドゥルガーの娘」であるアイメルがオクトゥムに吸収されたときに守るなど、陰ながら尽力していた。
ネフティス
土の精霊。ドゥルガーの眷族の一人。神宝・イスプラを守っている。ベリアス卿の術により濁気に汚され呪われた。アヴィンに倒されたことで元に戻り、アヴィンに加護を与えた。
イドゥン
風の精霊。ドゥルガーの眷族の一人。神宝・デレブラを守っている。ベリアス卿の術により濁気に汚され呪われた。アヴィンに倒されたことで元に戻り、アヴィンに加護を与えた。
スコティア
水の精霊。ドゥルガーの眷族の一人。神宝・デレピエを守っている。ベリアス卿の術により濁気に汚され呪われた。アヴィンに倒されたことで元に戻り、アヴィンに加護を与えた。
ザール
火の精霊。ドゥルガーの眷族の一人。神宝・イスピエを守っている。ベリアス卿の術により濁気に汚され呪われた。アヴィンに倒されたことで元に戻り、アヴィンに加護を与えた。
神
オクトゥム
闇の神。かつてバルドゥスと戦い封じられた。エル・フィルディンでは少数のオクトゥム信徒によって信仰されている。PC-9801版では、ベリアス卿によって復活して、アヴィンたちと対峙。冥界に帰ってくれるように頼むアヴィンたちに、「我が一度この世に現れたら秩序亡なき破壊のみ」と冥界に帰ることはできないと答え、「神剣エリュシオンを手にしているからオクトゥムを滅ぼすこともできる」と訴えるアヴィンたちと戦う。アヴィンたちに敗れるが、待ちわびた人間たちの神からの巣立ちの時を喜びつつ「力の加護にすがった代償を受けなければならない」と言い残して消滅した。Windows版ではラスボスになっている。
バルドゥス
光の神。エル・フィルディンでは広く信仰されている。かつてエル・フィルディンで闇の神オクトゥムと戦い、オクトゥムを封じた。しかし対極の存在であるオクトゥムを封じたことにより、自身の躯も砕けちり、6つの神宝になった。
PC-9801版ではラスボス。アヴィンたちに敗れたオクトゥムが消滅したことで、「神剣エリュシオン」に宿っていたバルドゥスの力が暴走して出現し、「力の加護にすがった代償」としてアヴィンたちの前に最後の敵として立ちはだかる。
Windows版では神宝カベッサを通じてアヴィンの旅を見守っていて、マイルを失って嘆くアヴィンのために冥府門を開くことでマイルを救うチャンスを与える。オクトゥムが消滅したことで対極の存在であるバルドゥスもまた消滅した。