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概要編集

当時サントリー社員だった作家の山口瞳が書いた小説。第48回直木賞受賞作。

東西電気宣伝部に所属する大正15年生まれの平凡なサラリーマン・江分利満(えぶり まん)の日常を描く。

婦人画報」1961年10月号から1962年2月号まで連載され、1963年2月に文藝春秋から単行本が発行された。


映画版編集

1963年には東宝の製作・配給で映画化。

当初は川島雄三が監督を務める予定で、主演には小沢昭一が内定していた。

川島は作中で主人公が一切社宅から出ずワンカットで撮影するという構想で、脚本も完成して(岡本監督は「一行もできていなかった」と語っている)あとは撮影に入るだけという段階だったが、川島の急死に伴い岡本喜八に企画が回ってきた。岡本監督も川島による構想で見たかったと語っている。


設定は大幅に変更され、主人公の江分利満が所属する会社はサントリー、ひょんなことから直木賞を受賞してしまうなど作者である山口瞳の分身のように描かれている。また小林桂樹が演じた江分利の風貌も山口に似せている。

山口の妹の夫であるジェリー伊藤も出演している。


プロデューサーの藤本真澄は主演の小林も含め社長シリーズの出演者で固め、同シリーズのような喜劇映画を意図したが、岡本は江分利の「戦中派」要素を前面に押し出し、軽妙なテンポに重いテーマを据えた作品に仕上げた。

アンクルトリスをデザインした柳原良平によるアニメーションや合成技術、ストップモーション・スローモーションの多用など斬新な手法が見られ、岡本監督も自作の中の好きな作品のひとつとして挙げている。

しかし直木賞を受賞した江分利が酔っ払った勢いで後輩社員に長々と自分語りをする終盤のシーンは岡本監督作品としても異質であり、小林信彦は観客を戸惑わせて監督の不遇を招いたと指摘している。

この後岡本監督は小松左京原作『日本アパッチ族』の監督に起用され撮影直前まで至ったが、本作と『ああ爆弾』で岡本監督が上層部の不興を買ったことと原作者の小松が当時の東宝に不信感を抱いていたことから製作は中止となってしまった。


同時上映は成瀬巳喜男監督作品『女の歴史』。


スタッフ編集

製作:藤本真澄金子正且

監督:岡本喜八

原作:山口瞳

脚本:井手俊郎

音楽:佐藤勝

アニメーション:柳原良平


キャスト編集

江分利満:小林桂樹

夏子:新珠三千代

明治:東野英治郎

みよ:英百合子

辺根:江原達怡

ミチ子:田村奈巳

柳原:天本英世

佐久間正一:中丸忠雄

矢口純子:横山道代

ピート:ジェリー伊藤

江分利の兄:平田昭彦

江分利の弟:太刀川寛

江分利の弟の妻:芝木優子

ヨシ江:北あけみ

泉俊子:桜井浩子

田代:二瓶正也

庄助:矢内茂

赤羽常務:松村達雄

坂本和子:南弘子

柴田ルミ子:八代美紀

小宮:小川安三

川村:西条康彦

マスター:草川直也

トンちゃん:河美智子

トシコ:森今日子

寛子:柳川慶子

川田野医師:堤康久

松本上等兵:長谷川弘

ナポリの女:塩沢とき

香具師:砂塚秀夫

会葬者:沢村いき雄

看護婦:紅美恵子

バーの客:山口瞳小島功梶山季之岡部冬彦伊丹一三

コーラスの指揮者:佐藤勝


ドラマ版編集

1975年3月17日から3月28にかけてNHK総合「銀河テレビ小説」でテレビドラマ化された。全10話。

時代設定は1960年代後半。平和な時代になじめない戦中派サラリーマンの悲哀を描いた。


キャスト編集

江分利満:杉浦直樹

妻・夏子:樫山文枝

庄助:佐藤宏之

父・盛助:佐野浅夫

田沢:渥美国春

川村:遠藤剛

辺根弘子:松崎ヤスコ

中条静夫

坂本昭子:水原英子

柳原:名古屋章

加藤武

ナレーター:小沢昭一


スタッフ編集

脚本:山田太一

タイトル画:柳原良平

演出:宮沢俊樹

主題歌:『風と落ち葉と旅人と』(歌:チューインガム)


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