概要
かつて中国では漢字の発音を表現するため、頭子音(声母)とそれ以外(韻母)をそれぞれ別の漢字の組み合わせで間接的に表現した「反切」という方法を用いていた。注音符号はこの仕組みを更に簡単にしたものであり、東漢の時代に編纂された漢字字典『説文解字』から簡単な字体の文字を約40個選び出し、それらを特定の韻母や声母を表す文字として利用したものとなっている。
韻母については伝統的な反切では漢字1文字のみで表現していたが、注音符号では「韻頭(半母音・拗音)」「韻(母音単独、あるいは母音と末子音の組)」「声調(音高)」の3要素に分け、韻頭と韻を合わせて文字1~2字で、声調を記号でそれぞれ表現している。
注音符号は中華民国政府による国語(標準中国語)の発音表記として制定された経緯から国語の発音に特化した仕組みになっているが、民国政府の台湾移転後は同地域で伝統的に話されてきた台湾語や客家語などの発音も表現できるよう表記の拡張が行われている。
このように注音符号を用いた発音表現が積極的に行われてきた事から、台湾では発音表記のみならず口語やネットスラングなど漢字を使わない(あるいは漢字で書けない)表現などでも広く多用されている。
なお、中華民国に代わって中国大陸を統治する事となった中華人民共和国ではラテン文字で発音を表記する漢語拼音が公式表記として用いられている関係で、現在ではごく一部の辞書などで細々と用いられているに過ぎない状況となっている。