プロフィール
概要
本作の主人公にして最凶の悪党。第2巻以降、狂言回しの役割を担う。
沖縄の賭け野球「ワンナウト」にて、499戦無敗という記録を持っていたが、ルールの裏を掻かれ児島に敗退。 児島の頼みによってリカオンズに「ワンナウツ契約」を秘密裏に引っ下げ入団する。
入団後
当初は何の実績も無い渡久地をタダ同然で買い叩く予定だったリカオンズオーナー彩川恒雄に対して、ワンナウツ契約を持ち掛ける。
オーナー側に圧倒的有利な契約(前年度最優秀防御率の投手に当てはめた場合でも支払額±0、当然それ未満なら逆に彩川に金を払わなければならない)に気付いた彩川はそれを受諾したが、予想を遙かに上回る結果を出して高額な年俸を勝ち取っている。
彩川からあらゆる妨害を仕掛けられるが、それらを全て看破、粉砕している。
一時期は新・ワンナウツ契約で赤字になるまで年俸を減らすが、倉井・ムルワカの才能が再び覚醒した事と菅平の野球への執念により黒字を奪還している。
オープン戦終了時点の暫定年俸は2億7000万円になり、最終的に約330億円もの大金を稼いで彩川に圧勝する。
選手として
球種はMAX130km/h台である速球のみ。だが、木野崎に「世界一」と評される程の非常に精密な制球力、ボールの球速と回転数を自在に変えられる技術を持つ。しかもその変化は相手を観察してリリースの瞬間からでも球筋を変える事が出来る。
リカオンズの正捕手である出口智志は後に渡久地の実力をこう述べている。
「球種は全て直球、緩急を付けてコーナーを攻めてくるが、時折恐ろしい程の鈍らなボールをド真ン中に投げてくる」
なのに打たれない、この状況を間近に受けていた出口は試合後でも足の震えが止まらない程だった。
このカラクリはピッチャーが経験則から会得している「速球は基本直球、それ未満なら変化球」という見切りと、それによる「低速ならバットを下げる」という癖を逆用した「低速低回転(素人の様なナマクラザコボール)」「高速高回転(よくノビる通常のストレート)」に「高速低回転(フォークの様な落ちるストレート)」と「低速高回転(遅いのにノビてなかなか落ちないストレート)」を組み合わせている故の錯覚(低速高回転を「落ちる球」と誤認して下を振ってしまう、逆に高速低回転を「ノビる球」と判断して上を振ってしまう)を意図的に引き起こす投球術
特に低速高回転ボールはメジャー含め渡久地しか投げない未知の球であるため、経験則では絶対に打てない
にもかかわらず相手の打ち気から投げる球や低回転の度合いや高回転の度合いを弄り「低速高回転なのにさっきより落ちる」「高速低回転なのに思ったほど落ちない」などの撹乱を行うため経験に頼る限り渡久地の手玉に取られ続ける。
またスタミナもあり中一日で三試合連続完投、中四日で「休養十分」と豪語し、実際に一安打完封できる程。
オープン戦を含む試合で二度完全試合を達成した記録を持つ。
試合の合間にも喫煙するヘビースモーカー。
賭け試合で投げ込んだ経験からピッチングでは抜群の持久力を発揮するが、野手経験は薄く守備に走らされると激しく消耗する脆さを持つ。
打撃は不得意だが、狙い球を絞って打点を挙げた事もある。守備も無難にこなせるが、わざとエラーし対戦相手を罠に嵌めた事もあった。(まさに策士……!)
また、普段ストレートしか投げない事で投球練習をしないのだが、疲れ切っているのに登板しなければならない事態が起きた時、変化球が投げられると錯覚させ相手を撹乱するためだけに珍しく投球練習を行い、ボールに釘を打ち込んで偏芯させたボールを投げるという割とヤバい手を使っている(実際試合で使用していなければコルクバットを家に持っていようが、練習で偏芯球を投げようが何も問題はないが、試合中、公衆の面前で堂々とやるのはとんでもない胆力である。曰く「「投球練習に異常な球を使ってはいけない」とはルールブックのどこにも書いていない」)
プロ野球選手として1年に満たないにもかかわらず、勝利数・防御率・奪三振数の投手部門を全て1位を獲得し三冠を手にしている。
その後
作品後期にはワンナウツ契約で勝ち続けた年俸でリカオンズ球団の経営権を獲得。選手兼オーナーとなり、選手たちの考え方や精神面への改革を含めて、経営に大幅なテコ入れを行ったが、
リカオンズ優勝の瞬間を見届ける事なく最終戦で姿を消し、日本シリーズにも出場する事はなかった。
その真意はリカオンズに対して居心地の良さを感じていることに気付いた為であり、「勝負師は孤独な鉄火場で生きるもの」という自らの信念を児島に告げチームを去った。
余談
悪魔的な洞察力、相手の精神を掻き乱す心理操作術、窮地に追い込まれてもその状況を楽しむ余裕がある程の精神力、山場を敏感に察知する勝負勘、従来の常識を覆す発想力、情報やルールを綿密に調べておく周到さを持ち、これまでのギャンブルで最強の王者として君臨。
勝負師としての才覚は無敵である。
実際彼の策を破ったものは1人としておらず、最終的には「リリースギリギリまでこっちを観察して球筋を変えるのなら、渡久地でもどうしようもないリリース後に球筋を見切って打出るほどに判断力と動体視力を鍛える」という駆け引きガン無視の超絶ゴリ押し(それも日本球界最高峰のプレイヤーだけを無理矢理金で集めた対リカオンズのためだけのドリームチームの中でも更に上澄の者だけができる戦法)で攻略されている。(一時期はそれが出来ない者を「エリートだけ集めて同じ練習してるんじゃなかったか?だとしたらなんだ、この差は?才能か?はっはーそれはキツいな、打てないやつはミソッカスって事か」とこれまで挫折知らずだった事による精神的脆さを突く煽りでチーム自体を機能不全にしている。曰く「どんなエリートでも1箇所に集まれば絶対に一位と最下位が出る。これまでチームのトップ層だった自分が一転最下位、このギャップと衝撃はそうそう埋まらない」)
一方で渡久地本人は「自分の投球は初見殺しに過ぎず、野球のプロが本気で自分の投球を研究してカラクリに気付けば打ち込まれるであろう」とシーズンの最後までは抑えられないと分析していた。
その後のドリームチームとの最終5連戦の初戦、「自分の投球は既に攻略されている」事を逆手に取り、僅か1試合のボロ負けと引き換えに、「執拗にインハイアウトローに投げ込み打たれる」ことで『「自分達を散々苦しめた渡久地をボコボコにしている」という偽りの成功体験(バッティングフォームは基本毎年変わっていくものだが、「難しい場面でホームランにした」などの成功体験や、頭部への高速デッドボールなどの「恐怖体験」はフォームに大きな影響を与え、劇的に変化することが多い。)を植え付け、バッティングフォームを滅茶苦茶にする』という後の選手生命にすら関わる策(※)で敵に超絶デバフを掛けた結果、「残り4戦全勝すればリカオンズの逆転優勝」のさなかドリームチームメンバーを全員大スランプの陥れた事でリカオンズは3連勝した挙句、「敵の最も面倒なエースピッチャーを自分の自責点36で防御率一位に押し上げ、タイトルを確定させるためにローテーションから外させるであろうことを読み切り、最終戦に出させない、出てきても万全の状態にはさせない」という二つの策を仕掛けるエゲツない往生際の悪さを見せている。(その後そのエースがタイトルを放り捨てリカオンズと最後まで戦うことを選び、最終的に敗北したことで再度渡久地が一位に戻り、三冠を達成している)
作者は渡久地があまりにも強すぎた故に、後のギャンブル作品の登場人物の設定を
「駆け引きの天才だが人間らしい弱みを付け加えた」
とコメントを残している。
※作中、「一流打者とは"ど真ん中を撃つ理想のフォーム"がガッチリと出来上がっており、それを起点に幅広く打てるバッターの事」と定義されている。一流打者はど真ん中を打つ、という基本がしっかり出来ており、それゆえにアウトハイインローは角度を変えるだけで対応出来、非常に安定した打率を誇る。
しかしインハイは最もフォームが縮こまり、逆にアウトローは最も腕を伸ばす位置、この二箇所は打つ際理想のフォームのアレンジが特に必要な位置であり即ち、一番フォームが崩れる位置である。その一番フォームが崩れる位置で、あの渡久地からHRや特大ヒットを打ったという成功体験をさせることで「それが一番理想のフォームである」と無意識下で錯覚(無意識下だけでなく実際に「思ったより縮こまってしまって打ち損じたと思ったら大ヒットだった、なので思っているより窮屈目に振った方がいいかもしれない」と言語化して広めてしまった者がおり、理屈の上でも錯覚してフォームの崩壊を加速させてしまっていた)させ、それを延々続けることで、取り返しのつかないほどに定着、結果として何十年も掛けて積み上げてきた理想が捻じ曲げられ、何年もインハイアウトローを打つ練習ばかりをしてきたような"中途半端で歪なフォーム"にさせられてしまい、インパクトの際肩が下がりすぎ力が逃げてしまったり、踏み込みが小さくなりすぎ力が貯められなかったりとマトモに打てなくなってしまう
当然本来ならそう簡単に打撃フォームは変わらないので、その影響とフォームの修正は(恐らく)数年単位で後を引く事が予想でき、場合によっては引退モノである。