概要
惑星、準惑星、衛星などの天体は、自ら一定周期で自転しつつ、主星(衛星にとっての惑星・準惑星、惑星・準惑星にとっての恒星)の周囲を公転する。
自転周期と公転周期は本来別個で、たとえば地球はそれぞれ約24時間(1日)・約365日(1年)だが、主星の及ぼす重力の影響(潮汐力)が強いと両者が一致して、主星に同じ面を常に向け続けて公転するようになる(たとえて言えばひものついたボールを回しているような状態)。これを潮汐固定、または自転同期、潮汐ロックなどという。
惑星の潮汐固定
太陽系内には、太陽によって潮汐固定されている惑星はない。太陽に最も近い軌道を公転する水星は、1965年に精密な測定が行われる以前はその候補であったが、現在では、水星は58日周期で自転しつつ、太陽の周囲を約88日周期で公転していることが知られている。*2006年まで太陽系最遠の第9惑星とされていた冥王星(現在は準惑星)については後述。
一方、太陽系以外の恒星系には、惑星が潮汐固定されている例があり得るとされている。中でもハビタブルゾーンにありながら主星によって潮汐固定されている地球型惑星では、水が液体の状態を保てるのは永久に昼の面の一定範囲に限られると見られ、この部分を黒目に見立てて「アイボール・アース(眼球惑星)」とよばれる。
衛星の潮汐固定
太陽系内の衛星は、最大級のガニメデ、タイタンを含め、そのほとんどが主星(惑星・準惑星)によって潮汐固定されている。
地球と月
地球の衛星であり、地球にとって最も近い天体である月は、潮汐固定の現象についても最も身近な存在である。つまり月は地球に常に同じ面(いわゆる「月の表側」)を向ける。その地形は、地上からは動かない模様のように見え、古来世界各国で様々な姿に見立てられてきた(日本の餅つきウサギ他)。一方月面から見た地球は24時間で1回転しながら空の一点に固定された状態で見え続けるが、月面には地球が一切見えない半球が存在する。いわゆる「月の裏側」であり、これは地球の地上からも見ることができず、1959年、ソ連(当時)の探査機によって初めて撮影された。
月は約27日で地球を公転するが、自転周期もこれに同期しているので、月面から見た太陽は、同じ周期で日の出、日没を経て次の日の出を迎える。これを地球から見ると、見える月面が一定なので、太陽光の当たっている昼の面のほうが、月の自転=公転周期に地球自身の公転を加えた29日余り(太陰暦の「ひと月」)を周期として移動している(月そのものが形を変えている)ように見える。これが新月~上弦の月~満月~下弦の月を経て次の新月に至る「月の満ち欠け」である。
冥王星とカロン
冥王星の最大の衛星カロンは、他の衛星同様主星の冥王星により潮汐固定され、カロンの地表からは、冥王星は空の1点に固定されている。しかもカロンは質量が冥王星の約7分の1と相対的にかなり大きいため、カロンもまた冥王星に潮汐力を及ぼし、冥王星の自転周期もカロンの自転=公転周期と一致している。いわば相互に潮汐固定している関係であり、このため冥王星の地表からもカロンは空の一点に固定されて見え、しかも互いの片方の面しか見えず、互いを見ることが出来ない半球が存在する。
関連項目