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ハビタブルゾーン

はびたぶるぞーん

ハビタブルゾーン(habitable zone)は、天文学用語のひとつで、ある恒星系において、惑星に生命が発生し、かつ十分に発達することが可能な環境を保証する範囲のこと。
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概要編集

地球の生命はの中で発生したと考えられるので、ハビタブルゾーンは第一義的には、惑星の表面においてが液体の状態を維持できる範囲となる。すなわち、「1気圧の大気を持つ惑星が、その恒星から受け取る熱エネルギーによって平均的な気温が水の沸点(100℃)を超えるほどには近くなく、融点(0℃)を下回るほどには遠くない範囲」ということになる。ただしこれは、惑星自体の環境、また生命発生の条件をどう考えるかによって変わってくる(後述)。

その他、恒星の発する放射線やプラズマ粒子(太陽系で言う太陽風)、恒星大気の爆発現象(同じく太陽フレア)などの影響が少ないといった条件も考えられる。

太陽系のハビタブルゾーン編集

太陽系におけるハビタブルゾーンは、実在する惑星で言えば金星から地球を経て火星の軌道付近と考えられる。


ただしこのハビタブルゾーンにあることと、実際にその天体が水を維持し、生命を育む環境にあるかどうかは別問題である(これは太陽系以外の恒星系でも同様)。端的な例が地球の衛星であるで、地球と同一のハビタブルゾーンにありながら、重力が小さいため大気がなく(現在では地球の大気の1分の1【1分の1のさらに1億分の1】ほどの大気が観測されているが、要は無きに等しい)、水を液体の状態で維持することもできず、周知のとおり死の世界である(月のクレーターの影など太陽光が永久に届かない場所には、水がの形で存在する可能性が指摘されている)。


火星には大気があるものの、気圧が地球大気の100分の1以下のため、水(通常氷の状態)は気温が常温(0℃以上)になっても液化せず、直接気化昇華)する。火星には地球のに酷似した地形があることなどから、かつてはを形成するほど豊富な水がありかつ循環していた(つまりは地球に匹敵する濃度の大気があったことを意味する)と考えられているが、重力が小さいことや地磁気が弱まったことなどにより大気が希薄になり、それらの水は気化して宇宙空間に飛び去るか、大気の温室効果が弱まって寒冷化したため氷となったものと思われる。


金星は火星とは逆に、大気は90気圧を超えかつその大半を占める二酸化炭素(CO²)の温室効果により地表温度は400℃を超えるため、水はことごとく水蒸気となっている。地球の大気も、太古にはこの金星とCO²の割合の高い灼熱の大気であったと考えられるが、地球では海が形成されて多くのCO²を吸収し、さらに生物の登場によって石灰岩に、また光合成によって酸素に変えられたと見られる。一方金星では海が形成されなかったか、形成されたものの早い時期に消失したためCO²が吸収されず、高温化へのスパイラルも促進されたとみられる。


以上のように、金星と火星には、条件次第で地球同様液体の水が地表面に存在した可能性があり、太陽系のハビタブルゾーンの両端をこの両惑星の軌道に想定するゆえんである。ちなみに、金星を木星の軌道付近に移動させると適温になるというシミュレーションもあり(下の動画)、ハビタブルゾーンも惑星大気の濃度次第で外側に広がりうる可能性を示唆している。


また土星の衛星タイタンは、衛星でありながら地球よりも濃い1.5気圧の大気を持ち、気温がその沸点を下回っているメタンが液体の状態で地表に存在し、となって循環している。この、タイタンに広がるメタンのあるいはの中で、地球とは異なる形で生命が発生しているという説もあり、このことが実証されれば、ハビタブルゾーンの概念も大きく変わる可能性がある。

太陽系外のハビタブルゾーン編集

太陽系以外の恒星系にも、各々の惑星(系外惑星)に生命誕生の条件を保証するハビタブルゾーンが存在すると考えられている。一般に、恒星の放射エネルギーが大きい(表面温度が高い)ほど恒星から遠い位置に、エネルギーが小さく(温度が低く)なるほど恒星に近い位置に想定される。(恒星の見た目の色でいうと青>白>黄色>オレンジ>赤)

恒星のうち、太陽も属する主系列星の、表面温度の低いグループを赤色矮星と呼ぶが、この赤色矮星は銀河系中に最も一般的に(多数)存在する恒星であり、寿命も長いため、その惑星に生命の存在が期待されている。ただ、温度が低いためそのハビタブルゾーンは太陽系よりもずっと恒星に近い位置に想定される。そのため、太陽風・太陽フレアにあたる恒星の活動にさらされやすく(下に関連動画)、また恒星の重力の影響で惑星は潮汐固定(または潮汐ロック)されている可能性が高いなど悪条件もある。

「潮汐固定」とは、公転する天体(恒星に対する惑星、惑星に対する衛星)の自転周期と公転周期が同期する現象で、その結果、公転する天体は主星に常に同じ面を向けづつける。身近な天体では月もその例である(ゆえに地上からは月の裏側を見ることができない)。惑星がこの状態の場合、恒星の光と熱は片方の半球にしか届かず、一方は永久に昼の灼熱世界、反対側は永久に夜の酷寒の世界で、両者の境目付近にかろうじて適温の地帯が存在することになる。こうした環境では生命の発達は厳しいか、あるいは地球とは全く異なる独自の発達をとげている可能性がある。

関連タグ編集

太陽系 恒星 惑星 生命

地球外生命 系外惑星

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