概要
元々は体内に溜まった膿や鬱血した血液を切開して取り除くというところから派生し、「体内に溜まった悪い血液を抜けば症状が改善するのではないか?」という発想から生まれた治療法。
中世にはこの治療法はヨーロッパに広く伝わり、一時期は発熱、下痢、風邪といったほんのちょっとした症状に対しても瀉血を行うほどに一般的な治療法として瀉血が広まったという。
で、効果はあったの?
結論から言えば、大抵の場合はあまり効果がない。なにしろただ血を抜いているだけなので多くの場合はただ単に患者の体力を浪費するだけの効果しかないのである。しかも衛生の概念が未発達であった時代には、瀉血のため身体を切ったことで逆に破傷風のような感染症の原因となってしまうという本末転倒な事態も多発したという。
結局、18世紀頃には臨床試験によって瀉血の危険性が判明したことでより確実かつ効果的な治療法へとシフトする形で瀉血は大幅に廃れていった。
ただし、C型肝炎のように体内に鉄分が異常に溜まる症状を引き起こす場合のある病気や、そもそも体内の赤血球があまりにも多すぎるために体調を崩す「多血症」という病気の場合は瀉血により体内の血球や鉄分を抜くのが有効という場合もあるため、対処療法的に瀉血が行われる場合もある。なお、現代の瀉血は献血と同様の方法で行われている。
人間以外における瀉血
人間以外においても瀉血が行われる場合があり、例えば日本では競走馬に対して「馬針」「笹針」などと呼ばれる細い小刀状の針を用いて鬱血の解消を試みる「乱刺手術」という治療法がある。シンボリルドルフのように乱刺手術によって跛行(病気や怪我によりまともに歩けなくなる症状)から回復した例もあるものの、やはり人間同様体力を相当に消耗する治療法である事から現在では他の治療法が行われる事も多い。また2022年4月には中央競馬における乱刺手術が禁止されている。
なお、某ゲームのあの人の影響から笹針を鍼治療と結び付けて考える人もいるかもしれないが、実際に鍼治療の世界でも「刺絡」と呼ばれる血液を体内から抜き取る治療法はない訳でもない。まあもっとも彼女の場合は東洋的刺絡ではなく西洋的瀉血に近いやり方なのだろうが。
その他
元々瀉血は修道士が行っていたが、1162年にローマ法王によって修道士による瀉血が禁じられたため、代わりに普段から刃物を用いて人に対して仕事を行う理容師が瀉血を行うようになったという。なお、理髪店の店頭に置かれているサインポールがこの理髪店での瀉血の名残という説もあるが、これについては諸説あるため何とも言えない。
外部リンク
- 「血を抜けゃどんな病も治る?迷信治療の末路【ゆっくり解説】」 ゆっくりオカルト研究所 【闇の雑学 ゆっくり解説】(YouTubeチャンネル)、2024年4月24日投稿。