概要
原作:猪原賽、原案:板垣恵介、漫画:陸井栄史による日本の漫画作品。
本編の主要人物の一人である烈海王を主人公に据えた『刃牙』シリーズのスピンオフ作品。
ただし、スポットが当てられた人物の過去や外伝を描いた同シリーズの数あるスピオンオフの中では唯一板垣恵介氏の公認ではない上、『本編では既に死亡した者が剣と魔法のファンタジー異世界に転生する』というトンデモ展開を最大の特徴とする、異色中の異色作。
烈の死についてクローン技術や紅葉の手術で生き返れるのではないか?という読者の声に作者の板垣恵介は「それをやっちゃうと板垣恵介という作家に対して読者がビビらなくなる」「これで烈が生きていたら、もう俺は何を描いても信用されないだろう」「読者の心の中で生きてもらおう」と回答しており、明確に烈の復活が無い事を明言している。
一方で、烈の死後ネット上では「烈海王が流行りの異世界転生をする」というネットミームが流行り、コラ画像や同人誌を作成するものまで現れた。その後、チャンピオンの公式作家である陸井英史が自身の漫画で取り上げた事がきっかけで、月刊少年チャンピオン創刊50周年記念として、スピンオフ作品として本作が月刊少年チャンピオンで連載される事になった。
原作者・板垣恵介非公認のまま企画がスタートした為、克巳の守護霊となっている本編と食い違うものになってしまったが、陸井はこれに関して「あくまでこちらは外伝であって、本編で右腕だけ残っていても異世界の烈とは関係ない。もし今作を読んで『こんなの烈じゃねぇ』と思ったら、別個体として捉えていただければ。」と語っている。
なおストーリーに関しては「モンスターを倒す・村を再興する・現地の女の子と仲良くなる・現代の料理を披露する」などといった異世界転生ものの黄金律から外れ、何故か同じく現代から転生してきた歴史上の偉人達と戦うシナリオを展開しており、賛否両論の流れとなっていたが、制作サイドもそれを察したのか、ヒュドラとの戦いを経て烈が今までの舞台だった城下町から離れ、旅に出るという路線変更が行われ、そのすぐ後の話から今までの鬱憤を晴らすかのようなゴブリンを倒し異種族の女性と出会い狩ったイノシシを料理し振る舞うなど上記の黄金律に則ったストーリーが展開された。
現在では「異世界でも中国拳法最強を証明する」という目的のもと、元の世界には存在しなかった未知の強敵(モンスター達)に挑んでいくというものになっている。
有り体に言えば「中国武術なめんなファンタジー」的な展開である。
要所要所で原作のシーン等を意識した演出が入るのも特徴の一つ。
主な登場人物
本編で宮本武蔵に敗れて死亡後、突如として異世界に転生してしまった主人公。その摩訶不思議な状況にさしもの烈も一度は戸惑うも、その本質がブレることは些かもなかった。最初に目覚めたブラキルカ王国王都にて、異世界人やモンスター、他の転生者たちとの邂逅・戦いを経て、「自身の常識や価値観が全く通用しない異世界においても中国武術が最強であることを証明する」ことこそに異世界転生を遂げた真の意義があると悟り、途中で仲間にしたゴブリンを供に、まだ見ぬ強者を求め戦いと武者修行への旅に出発することとなる。魔法などの未知かつ超常の力を有する強敵たちを相手に、中国武術の武技と身体能力、そして元の世界での強敵たちとの戦いの経験が活かされた大胆かつ柔軟な適応力と発想力を武器に、渡り合い勝利していく。
烈を襲って返り討ちにされた獰猛なゴブリン集団の生き残り。狡賢く計算高い腹黒な卑劣漢だが、戦士の部族でもあるゴブリンとしての誇り高さや仲間想いな一面を持ち合わせており、根っからの悪人ではない。最初は烈に取り入って利用しようとしていたが、旅を共にする内に仲間として認めて「ダンナ」と呼んで本心から慕うようになり、烈からも信頼されるようになった。ただし、調子の良い性格のため、損な役回りを担うことも少なくない。また、情報を大事にする信条から異世界の知識が豊富で、旅先の解説役としても活躍することが多い。
- ロバート=ホゥワード
電撃を発する大剣、カラドボルグを揮うブールフォレア王国の騎士。デュラハンに攫われたジョアンナ姫救出のため烈達とデュラハンに戦いを挑む。
- ナカムラシンジ
烈よりも半年前に死亡・転生した元神心会門下生。地下トーナメントでの烈の力に憧れ、ドイルを運ぼうと川を走っていた烈を助けようとした際にトラックに撥ねられ異世界転生してしまった。王国を飛び出した烈に置いて行かれ、名前の字すら知ってもらえないうちに(烈はナカムラ=中村と思っていたが本当は仲村と書く)別れることとなる。
敵対したモンスター
リンキン領を襲う人食いの魔物。食物連鎖の頂点に位置する人型魔物とされる。その体躯は烈の倍以上、人間を軽々と解体する怪力、下顎6連撃を受けてもびくともしないタフネスなど烈に嘗てのピクル戦を思い起こさせる野生の戦闘能力を持っている。
普段は必要以上の狩りは行わず、人の集落に来て虐殺までするような生き物ではないとのことだが…。
- 師父(スケルトン)
スケルトンの群れの中で唯一知性を持ち、武術を習得していた個体で、烈を「我が子、永周」と問い掛けた。
その正体は本編のスモーキングジョー戦の回想で少年の頃の烈を指導していた老齢の師匠。
烈が海王の資格を得て、自分を越えた事で武者修行に出る決意をしたが、道半ばで裏格闘技の試合で命を落として転生した。
転生した世界での緊張感を楽しんでいたが、デュラハンに敗北後に配下となり、知性を持ったままアンデッドとなる。結果、肉の重みを捨て骨のみとなり、軽量化と関節の可動域を広げた武術を用いるが、消力とマッハ突きで対抗した烈に敗北。
人のまま4001年目を刻もうとする弟子の実力と信念を認め、介錯を望むが、その遺体は主人のデュラハンに踏み躙られた。
師父をスケルトンに変え、ジョアンナ姫を攫った首無し騎士。相手を眷属に変える血の洗礼、魔力によって動く肉体から繰り出される実践的レスリング、時間を停止させる魔法、など強力な技能を持ち一度は烈をも手玉に取った。
姫から奪った魔力を用いて世界の時を止め、永遠の夜となった世界に冥王として君臨するのがその目的である。
関連用語
- あがく者
転移者・転生者の中でも、勝利への飽くなき渇望や意欲を持ちながら道半ばに死した者たちの通称。そのような性質から、「あがく者」の中には烈と対決した天草四郎時貞のように戦乱に関わった歴史人物も居るようで、ほとんどの者たちが元の世界への強い未練を残しているという。また、「追加能力(ちいとすきる)」という強力な特殊能力を有しており、総じて異世界の一般的な強者とは一線を画した実力者が揃っている。烈も天草から「あがく者」に該当すると指摘されたが、異世界転生をむしろ喜んでいる烈はこれを否定しており、リンキン領の領主息子ラウリーからは「烈はあがく者でなく自分たち一族に伝わる伝説の転移者ではないか」と推察をされている。
- スマホウ
烈よりも半年前に死亡・転生した元神心会門下生ナカムラシンジが開発した魔法道具。知識の記録・蓄積が可能な魔法の鉱石に、元の世界にあった「スマホ」の概念を転写することで完成した。実際のスマホに近い運用が可能で、これの普及が進んだブラキルカ王国はその文明度に見合わない高度な情報化社会の形成に成功し、経済大国へと発展を遂げることに成功した。