作詞・作曲・編曲桑田佳祐(弦・管編曲は斎藤ネコ)で、2007年12月にリリースされた桑田のシングル「ダーリン」のカップリングとして収録された楽曲。
人身売買や臓器移植を主題として取り扱った映画「闇の子供たち」(2008年公開)の主題歌でもある。
シングルCDのカップリング曲であり、かつライブで披露される頻度もそれほど高くはない反面、桑田ソロ活動の節目となる時期にリリースされたベストアルバム2つにはどちらにも収録されている(25周年記念の『I LOVE YOU -now & forever-』、35周年記念の『いつも何処かで』)。
付け加えれば2022年下半期に行われた桑田ソロの『LIVE TOUR 2022 お互い元気に頑張りましょう!!』(通称『5倍返しツアー』)のセットリストにおいて、桑田自身はこの曲を「ライブの”ヘソ”」と重要視している。
それまでのライブでも、曲順では「山場」となるところにこの曲が配置され、かつ印象に残る演出を施すことにより、会場の雰囲気を一変させてきた。
桑田の著書『やっぱり、ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』(新潮社、2012年)では、「現代東京奇譚」について触れた項目があり、そこでは彼のルーツは様々な洋楽と併せて歌謡曲にあることが改めて自覚されたこと、歌謡曲に影響を受けた世界観がこの曲などに顕れているとして、「ザ・ピーナッツや欧陽菲菲など、僕が影響を受けてきた人達へのオマージュがいっぱい詰まっていると言っても過言ではない」と結ばれている。
彼のこうした姿勢はソロ活動を開始する以前からはっきりとしており、『ロックの子』(講談社、1985年)では中学生時代は「歌謡曲少年」だったと述べており、好きな歌手として前川清、美空ひばり、ちあきなおみらの名前を挙げている。
桑田にとってライフワークの1つだったAct Against AIDS の企画『昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦』(2008年)では、紅組山口百恵「いい日旅立ち」との並びで「現代東京奇譚」が披露され、モニターにはAIDSに関する日本人の知識がいかに薄いかを危惧する映像が流れていた。
2012年の『I LOVE YOU –now & forever-』ツアーでは20分を超える大作「声に出して歌いたい日本文学<Medley>」から続く曲順について斎藤誠は「この繋ぎが絶妙」「ロックと歌謡曲の二軸を持った桑田さんの魅力が前面に出た曲」と、2022年の『5倍返しツアー』では最新曲「なぎさホテル」~「平和の街」の流れからの曲順について原由子は「「平和の街」が光だとすると、「現代東京奇譚」は影の部分、都会に片隅にうごめく哀しみを表現している曲」と、それぞれが述べている。
『THE ROOTS ~偉大なる歌謡曲に感謝~』(2016年のデビュー記念日にWOWOWで放送され、のちに市販された)で東京にちなんだ数々の流行歌を歌いこなす桑田にとって、「東京」(2002年リリースのシングル)や、「東京VICTORY」(2014年にサザンオールスターズとしてリリースしたシングル)同様に、傑作と言って差し支えない一曲である。