異世界黙示録マイノグーラ
いせかいもくしろくまいのぐーら
灰を思わせるくすんだ白髪に、少女の体躯を包み込む漆黒のローブ。
誂えられた金属製の装飾は既存の法則を無視したかのような捻れを有しており、だがその全てが見事に調和している。
そして何より、人では持ち得ないその深く吸い込まれそうな深淵の瞳こそが、彼が知る彼女の証明にほかならない。
拓斗は彼女を知っていた。
否、彼女だけは死んでも忘れないだろう。
彼が病床でずっとプレイしていたゲーム。
ダークファンタジー世界を舞台にした国家運営シミュレーションゲーム、『Eternal Nationsエターナル・ネイションズ』に登場する英雄ユニット。
「もしかして……『アトゥ』?」
「はい。――我が王よ」
その少女は、彼が生涯において最も愛したゲームの、最も愛したキャラクターだった。
「異世界黙示録マイノグーラ」とは、「小説家になろう」にて鹿角フェフ氏より投稿されているウェブ小説作品。GCノベルズより書籍化、電撃コミックスNEXTよりコミカライズされている。
イラストはじゅん氏、漫画は緑華野菜子氏が担当。
正式なタイトルは「異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~」。
魔法が存在する中世ヨーロッパ風の世界へと転生した主人公が、ヒロインらと共に国を興し世界征服を目指すダークファンタジー。
第一章までは国家運営ストラテジー(シミュレーション)ゲームのシステムを使った国家運営と他文明との外交が話の主軸になっているが、第二章からは一変し、異世界にやってきた様々な世界の異邦人らと交流しあるいは敵対していく、「ゲームの総力戦」がテーマとなっている。
2024年6月28日にはGCノベルスの公式が、テレビアニメ化決定のポストをX上に投稿した。時期などは後日発表と思われる。
生まれてから一度も病院から出ること無く18年という人生を終えた青年、伊良 拓斗(いら たくと)。彼は死後、不思議な世界で目覚める。
困惑する彼に語りかける少女は、驚いたことに彼が生前一番好きだったシミュレーションゲーム『Eternal Nations』に出てくるキャラクター――「壊れ性能」でおなじみの英雄ユニット『汚泥のアトゥ』だった。
破滅を司る文明『マイノグーラ』の支配者となったイラ=タクトと、現実世界を知る配下アトゥ。彼らはその邪悪な力を持って――ひたすら内政する為に引きこもろうと企んでいた!
- イラ=タクト
本作の主人公。本名は伊良 拓斗(いら たくと)。18歳で死亡し異世界へやってきた転生者。親しい者からは「タクト」と呼ばれる。
生前は病気で病院に籠りきりであり、ずっとゲームをして過ごしていた。
中でもシミュレーションゲーム『Eternal Nations』が得意で、世界ランキング1位をキープし続けるほどの腕前を持つ。
転生後、異世界で『Eternal Nations』のゲームシステムに沿った行動が可能であることを知り、このゲームに登場する国家に倣い「マイノグーラ」を建国する。
当初は平和に過ごすことを望んでいたが、ある事件をきっかけに世界征服へ乗り出す決心を固めた。
普段は優しくお人好しかつ少々お調子者で困った人に無償の援助を行ったり、作戦や国家運営において油断や慢心をしたり、少々の遊びを加えたりするなど短慮な一面もあるのだが、敵と認定した者には容赦がなく、相手が二度と立ち直れなくなるまで徹底的かつ苛烈な攻撃を加える凶暴性を持ち、敵対者が「自分と同じ転生者」であった場合でも「殺すことを躊躇う理由がない」と即座に決断できるなど、18歳の日本人としては異様な精神を持っている。
また彼の姿は周囲には「人の形をした黒く塗りつぶされた子供の書いた落書きのような何か」としか見えず、それらも相まって「破滅の王」と呼ばれる。
「汚泥のアトゥ」は非常に愛着を持っているキャラクターであり、彼女のことを全面的に信用しているのだが、一方で彼女のキャラクターの設定などを、何故か一切思い出せなくなっている。
- 汚泥のアトゥ
本作のヒロイン。タクトの忠実な従者にして英雄の一人。
自身が『Eternal Nations』というゲームのキャラクターであり、タクトがトッププレイヤーの一人で、自分に愛着を持ち何度もゲームをプレイしていたことを理解している他、タクトの前世の日本の知識も持っている。
タクト至上主義者であり、彼に尽くすことが自身の全てだと考えているため、タクト以外の者への興味は薄い。本性は邪悪そのものであり、相手を絶望させ心も誇りも踏みにじった上で殺すことを好む。それにより「汚泥の魔女アトゥ」と呼ばれ忌み嫌われる。
触手を召喚する能力を持ち、あらゆる場所から多角的に敵を攻撃することが可能で、その戦闘力は単騎でも軍隊に匹敵する。
タクトのことを全面的に信頼しているが、一方で彼の姿が「子供の落書き」のようにしか見えないこと、またその精神性があまりに「普通の日本人の青年」からはかけ離れた異質なものであることに不安を覚えている。
ゲームでは大器晩成型の英雄ユニットで、当初は初期の戦闘ユニットである戦士に毛が生えた程度の戦闘力しか持たないが撃破した敵ユニットの能力をコピーする固有能力を持ち、ゲーム後半になるほど強力になる。
- 『Eternal Nations』
ファンタジー世界を舞台にした国家運営ストラテジー(シミュレーション)ゲーム。
剣と魔法の世界でエルフやドワーフといった多様な種族からなる国家を運営し、戦争や外交など様々な手段を用いて勝利条件を目指すゲームである。
各国家には「英雄」と呼ばれるユニットが設定されており、通常の軍事ユニットよりも強力かつ固有能力を保有している。
- 『マイノグーラ』
『Eternal Nations』に登場する国家。属性は邪悪であり、異なる星系からやってきた異形の神の率いる文明とされている。
英雄ユニットは『名も無き邪神』『汚泥のアトゥ』『全ての蟲の女王イスラ』。
昆虫や人間を模した異形の存在を主軸に据えた国家であり、邪悪な思想を周囲に浸透させることが得意なのだが、序盤の立ち上がりが非常に遅く、プレイ難易度が高い。
基本的には敵に目を付けられないよう立ち回りつつ防衛に徹する、内政特化型の国家となっている。
Civilization:国家運営ストラテジー(シミュレーション)ゲームの金字塔。ただし、ファンタジー世界が主軸となっているため、このゲームより「Age of Wonders」というゲームに近い。
クトゥルフ神話:用語や設定など随所に関係がある。
マイノグーラ:前述のクトゥルフ神話に登場する神性の一柱。