スレッタ「あぁ……」(あ然)
放送直前、視聴者は
10/2午後5時、いわゆる“「日5」”にスタートすることが決定したガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム水星の魔女』。
シリーズ初の女性主人公、YOASOBI担当の主題歌、憶測飛び交うミステリアスな主役機、極めて高クオリティの『PROLOGUE』など、公開される情報の数々からガンダムファンの期待は日に日に高まっていた。
一方で主要キャラとして女性コンビがプッシュされていたにもかかわらず、百合を好む向きからは注目された作品ではなかった。何しろ天下のガンダムかつ日5枠ということで、人を選ぶような尖った展開はなく、せいぜいが親友程度であろうと考えられていたためである。リコリス・リコイルの終幕により落差大きめの百合ロスに苦しむ難民たちは、次のキャンプ地を探し求めて彷徨い歩き、もしくは過去の作品を見返すことによって喪失を埋める日々であった。
よろしくね花婿さん
そんな中で放送された『水星の魔女』の第1話「魔女と花嫁」にて、
主人公スレッタとヒロインであるミオリネが婚約してしまったのである。
信じられないかもしれないがマジである。
ガンダム史上初、2人とも女性であるのにもかかわらず花嫁と花婿関係になったのである。
しかも花嫁側であるミオリネはなんとあっさり受け入れている。水星から来たスレッタ(とこれを見せられている我々視聴者)にとってはただただ衝撃であった。
そして予想外の方向から発生した供給により、百合ファン達は熱狂した。「百合ガンダム」がツイッター上でトレンド入りすると同時に、「実質リコリコ14話」などと錯乱気味のリコリコ難民も殺到した。
この熱狂は界隈外にも派生し、「百合ガンダムってマジ?」「水星の魔女が百合ガンダムでトレンド入りしていてワロタ」など、あっという間に3万件以上の百合ガンダムツイートが呟かれる。『水星の魔女』の名は、ガンダムという巨大IPの名を背負いながら、大胆にも百合に踏み出したタイトルとして世間に強烈に印象付けられる事となった。ガンダム及びロボットアニメファン以外にとっても「百合ガンダムって何だ?」と興味をそそられるトピックとなり、各方面からの注目を大いに集めたのである。
こうして、「ガンダムシリーズ最新作」にして『神無月の巫女』や『グランベルム』のような「百合ロボットアニメ」の系譜にも名を連ねた『水星の魔女』は衝撃の幕開けを迎えた……。
余談
- 現実世界でも同性婚を取り巻く様々な歴史・背景があるが、ミオリネは水星側は同性婚に対する認識が遅れているという旨の発言をしている。少なくともアド・ステラ世界における地球圏のスペーシアン社会では、女性同士の結婚が常識的なものと見なされているようだ(男性同性婚については作中では言及がない)。
- なおその発言をしたミオリネの立場からすれば「暴君のように振る舞うグエルよりは、コミュ障の編入生の方が相対的に遥かにマシ」という背景があり、「本当に結婚するつもりはない」とも断っていたため、少なくともこの時点ではスレッタに本気で惚れていた訳ではなかった可能性もある。
- ちなみに前作に当たる『鉄血のオルフェンズ』のPD世界でも同性間の婚姻は認められているという裏設定がある。最終話でアトラとクーデリアが女性同士の婚姻関係であることが示唆されている。
- ガンダム世界で同性愛を印象づけた最初の事例は、∀ガンダムのグエン卿であろう。ただし彼の場合は一般的な同性愛者というよりは少年愛者である。作中でも関係を強要した祖父によって性癖を歪められたかのように描写されていた。
- この百合ップルを見届け、守る立ち位置となった本作の主役機エアリアルだが、小説『ゆりかごの星』での一人称は「僕」である。彼(?)の存在が2人の関係性にこれからどう影響していくかにも注目だろう。