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目黒製作所

めぐろせいさくしょ

かつて日本に存在したオートバイメーカー。現在の川崎重工におけるバイクの血筋のひとつでもある。本稿では2020年代にペットネームを復活させた車輛についても述べる。
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目黒製作所とは、かつて日本に存在したオートバイメーカーである。1924年創業、1939年法人化(諸説あるため参考程度に)。

自社製モデルには”メグロ”のペットネームが冠された。コーポレートマークはMとWが上下に重なる「メグロワークス」と呼ばれるものだった。


概要編集

ホンダヤマハスズキカワサキ(メイハツ)といった戦後小型車からスタートしたメーカと異なり、戦前から英国式の大型車を手掛けてきた名門メーカーである。


戦前から戦後に掛けて文字通り日本のオートバイ業界の頂点に君臨していた陸王と比較すると、技術革新や排気量のバリエーションの展開に積極的であった。

来歴編集

オートバイを製造する以前は、自動車オート三輪などの修理の傍らトライアンフの部品製造を手掛けていたらしく、これが後に英国車を範にとったモデルを製造する切掛となったのかも知れない。

処女作は1937年に作られたZ97型。陸王が最初に生産したモデル(1933年)は1208cc V型2気筒で弁機構はサイドバルブ式、これに対して4年遅れのメグロZ97は500cc 単気筒だが弁機構は当時としては先進的なOHVで11馬力を発揮。しかしながら、陸王の師匠ハーレーがこの時期にOHVエンジン”ナックルヘッド”を導入したにもかかわらず、陸王はその後もサイドバルブ式に固執したため、完全に取り残されることとなる。


同時期の陸王と比べると高速性能に優れており、太平洋戦争勃発前の1939年にZ97を改良したZ98型が少数、戦後は1955年登場のZ6(500cc 単気筒 20馬力~)から警察へ多数の白バイを納入していた実績を持つ。

一方で、軍へは専らハーレー型の陸王が充てがわれ、制式化された車両としては採用されていない。

凋落編集

とはいえ、戦後直ぐのメグロのラインナップの下限が1950年に登場した250cc車、それ以前が500cc車というのは如何にも不味く、業績が傾く引き金となった。

というのも、戦争が終わって爾臣民にオートバイを買う機会が出来つつある頃の免許制度は、

  • 1947年~
    • 小型三種:二輪車は排気量無制限
    • 小型四種:4st:~150cc/2st:~100cc

  • 1949年~
    • 自動二輪:小型三種とほぼ同じ
    • 軽二輪:小型四種とほぼ同じ

  • 1952年~
    • 自動二輪
    • 軽免許:軽四輪車(〜360cc) 二輪(4st:〜250cc/2st〜150cc)
    • 原付許可:4st:〜90cc/2st〜60cc 申請のみで取得可

  • 1955年~
    • 自動二輪
    • 軽免許:軽四輪車(〜360cc) 二輪(〜250cc)
    • 原付二種:〜125cc
    • 原付一種:〜50cc

といった具合に比較的簡単な免許で乗れる小型車のラインナップが1952年の軽免許設立まで存在せず(1950年には250cc車があったのだが一寸早過ぎた)、戦後の爆発的なバイクブームの牽引役であった小型車が洪水のように押し寄せたのに対して対抗策を迫られた。

1955年には、原付二種免許で乗れる125cc車『レジナ』を投入した… が、額面上は50ccのスーパーカブよりやや速い程度だったという。

  • とはいえ小型車に注力していたメーカーも枕を高くして寝られた訳でもなく、1960年代には原付市場はホンダのスーパーカブに粗方刈り取られ、2ストローク小型車も仁義なき戦いの末スズキとヤマハが生き残った。

終焉編集

ブランド力は随一で、浅間火山レースなどモータースポーツにも積極的に参戦、ワークスレーサーにはDOHCエンジンを投入し、国内レースの大型車部門では1等を含めた上位を占めるなど技術力が無いわけでもなかった。

戦後に雨後の筍の如く乱立したメーカーと違って、戦前から名が通ったメーカーらしく販売店も全国に存在した。

しかしながら、「メグロは壊れないが高い」と評されたように総じて高目の価格帯で、戦後になってもメグロの主な購買層は昔からのお得意様か、筋金入りの愛好家らであった。

彼らが、主に「どっしりとした」乗り味のOHVエンジン車を好んだためか、度々投入された先進的なSOHC車の売れ行きは鈍く、結局終焉までOHV車が主力で将来性あるとは言えなかった。

  • メグロ最後の新型車は1964年に登場した250cc車の『メグロSG』。これもOHVエンジンの単気筒で最高出力18馬力だった。これに対し同時期のホンダの250cc車は『ドリームCB72』、こちらはSOHC 並列2気筒で24馬力を発揮。メグロSGの登場と同年にホンダは世界選手権向けにDOHC 並列4気筒で48馬力を発揮するマシン『RC164』を製造している。客層やニーズが違うと言われればそれまでだが、将来性がある顧客を掴めなかった点ではメグロは不運であった。

結局、1960年に川崎航空機と提携し、同社に大型車を供給する関係となるも1964年に経営破綻、吸収された。


以後、オートバイの製造は川崎航空機に受け継がれ(のちに川崎車輌と共に川崎重工に吸収)、目黒製作所はニューメグロ製作所と名前を変えてオートレース用エンジンの専業メーカーとなった。


伝統の継承、そして復活編集

川崎航空機に吸収された後もメグロブランドとして500ccのK2(スタミナK1の改良型)と250㏄のSG(ルーツはジュニアS2)が発売されたが、1969年のSGの販売終了をもってメグロブランドは一時的に途絶える。ちなみにK2はタンクのエンブレムがMWロゴから川崎重工のリバーマーク(2021年に川崎重工から分社化した二輪部門の新会社であるカワサキモータース株式会社のコーポレートロゴとなっていた)に替わり、クランクケースがKAWASAKIロゴになるなど次第にメグロ色が薄れていった。


その後、メグロの血脈を受け継ぐオートバイとして650-W1に代表される第1世代のカワサキ・Wシリーズを1966~74年に発売、90年代に入って250SGを彷彿とさせるエストレヤの発売(1992~2017年、カワサキの車種では最も長期間販売された)を経て、1999年に第2世代のWシリーズ(当時の車両の復刻ではなく完全新規車種)を発売、昨今厳しくなる環境対応への改良を重ねながら現在に至り、2020年11月にWシリーズの新たなバリエーションの一つとして、そのものズバリとも言えるメグロK3を発表しメグロのブランドが復活、2021年2月に販売を開始した。


新たに登場したメグロK3は、片仮名のメグロロゴをサイドカバーやメーターパネルに配し、タンクにはK2ではリバーマークとなっていた往年のMWロゴのエンブレムを復活させている。


メグロK3の発表から若干遡る2019年の東京モーターショーのカワサキブースでは、再登場の新型モデルとして発表されたW800と共に500メグロK2と650-W1が展示され、その2台の扱いの大きさにメグロブランドが復活するのではないかという噂もあったほどだった。


メグロブランド復活にあたり、カワサキではメグロの文言やロゴなどの商標登録をしていなかったことから2019年頃より商標の登録に動き出し、改めてメグロ関連の登録及び他企業が保持しているメグロ関連の商標のうち「二輪自動車等の指定商品登録」についての取り消しを出願するが、(カタカナロゴについては)特許庁から「ありふれた名前」など拒絶査定を下されて難航、膨大な資料を用意して審判請求を提出した末にメグロのカタカナロゴ(第6241075号)及び「メグロワークス」(第6418709号)については商標の登録が、「MEGURO」(第4678826号の2)についても保持企業からの分割の運びとなったことで商標問題に一応の決着がついたことから発表にこぎつけたものと思われる。


更に、2023年のジャパンモビリティショー(以下JMS、旧・東京モーターショー)のカワサキブースで復活メグロ第2弾の、普通二輪免許でも乗れる230㏄モデル「メグロS1」を参考出品、目黒製作所創業100周年、メグロSG生産終了から55年でもある2024年11月に、コンポーネンツを共有するW230と共に同月末の発売を発表した。K3同様随所に配された片仮名のメグロロゴやMWロゴエンブレムは健在で、メーカー側も本車輛を「メグロSGの正当な後継車」と述べ、エストレヤの生産終了で空白となっていたポジションを埋める形となる。

ちなみに、JMS出展時にはメグロSGと共に展示されていた。


余談編集

目黒製作所及びカワサキとは全くの関係はないが、東京都目黒区の企業であるスタイリスト事務所「ニューメグロ衣裳」のロゴタイプはメグロのロゴをモチーフにしている(リンク先はロゴを製作したデザイン会社のもの)。


関連動画編集

1953年 メグロ350ccレックス號Y型CM


メグロK3 プロモーションビデオ


メグロS1 プロモーションビデオ


関連タグ編集

カワサキ Kawasaki


この記事のカテゴリ編集

バイク オートバイ ブランド 企業


外部リンク編集

メグロK3公式サイト

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