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臼砲

きゅうほう

大砲の一種。かつては投石器の一種であり、大砲の分類の中では最も古いもののひとつ。
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名前の由来編集

英語ではMortar(モルタル)と呼ばれている、本来の意味は乳鉢の意味だが、極端に肉厚で短い砲身である見た目が臼に似ることから同種の砲がMortarと呼ばれ、訳されて臼砲となった。


歴史編集

中世時代、中国から火薬が伝わると、これを発射に利用する新型の投石器として射石砲が発明された。

この頃の大砲は、名前通り石を砲弾として使用し、後に鉄球を発射するよう進化しても、基本的には重たい塊を叩きつけて要塞や城壁を破壊するための攻城兵器で、動かない巨大な目標を撃つため、戦場に素材を持ち込んでその場で鋳造する一品物のような存在。

もちろん砲のまま自由に動き回るような機動性も無く、連射も利かない重い一発の弾は動き回る歩兵を撃つような物ではないため、野戦ではそもそも需要が無い兵器であった。


やがて炸裂機能を持つ榴弾が発明されると、一発の弾で広範囲を攻撃できるようになり、大砲はあらゆる戦場で花形となった。臼砲も例外ではなく、ヨーロッパ各国でもてはやされた。

当時臼砲は戦場で使用される火砲の中で最も大口径の、強力な兵器であった。短砲身ゆえ命中精度や射程に難はあるが、砲身が短いと言う事は大口径でも重量が削減できると言う事であり、運搬手段が馬か人間以外なかった当時としては重要な点であった。寧ろ当時は鉄砲の射程も大して長くなかったので、相対的に欠点になりづらかった。


この頃の臼砲は鋳造製だったため、金属を融かし、それを型に流し込む技術と設備があれば比較的簡単に量産できたのも利点だった。

同時期の高性能なカノン砲旋盤による正確な切削加工が必要で、材料にも上質な鋼鉄を使うため高額であり、十分な数を揃えることが出来なかった。

臼砲はこうした高性能砲を数で補う低性能砲という形で運用されてきた。


近代以降編集

近代に入ってからも臼砲の扱いは基本的には変わらなかったが、一部の新興国、特に明治期の日本では重要な戦力となった。当時の日本の冶金技術ではカノン砲に求められる上質な鉄を生産することができず、製造ラインが確立されても材料は輸入に頼っていた。そのため低質な鉄や、ともすれば青銅でも生産できる臼砲は重要な戦力として重宝された。


第一次世界大戦が勃発するとより軽量で利便性の高いグレネードランチャー迫撃砲が戦闘の主体となり、臼砲の役目は分厚いコンクリートで防御された要塞や防御陣地を打ち砕く、かつてのような攻城に先祖返りすることとなる。

曲射砲の中でも大仰角、概ね45°で発射する臼砲の弾道は、撃たれた側から見るとほぼ真上から落下してくることになり、防壁を飛び越して天井などの弱い部分を攻撃できた。


しかし、近代になって冶金技術が発展すると、射程が長く軽量な榴弾砲カノン砲の価格や製造難度が下がってくる。

同レベルの技術を導入すれば臼砲も榴弾砲などと製造法に差が無くなり、汎用性の低さや射程不足を補うため長砲身化した結果、見た目にも違いがなくなっていく。

第二次世界大戦以降は陸・海・空でミサイルが主流となり、臼砲の最後の存在意義であるコンクリート要塞の破壊も、より攻撃回数が多く、精度や射程(航続距離)、運用の柔軟性に勝る爆撃機で代替できるようになってしまった。

兵器全般の機動性が増し、地上に剥き出しで建造される固定式の巨大要塞も主流ではなくなり、こうして価値を失った臼砲は400年余りの長い歴史に幕を下ろした。


世界最大の大砲編集

臼砲の特徴は大口径・短砲身であり、普通の大砲ではまず見ないような大口径砲が多数ある。有名どころでは、第二次大戦でドイツが製造した60㎝カール自走臼砲であるが、実はこれよりも大口径の大砲がある。

クリミア戦争のセヴァストポリ要塞の戦いの為に製造された英国製マレット臼砲がそれである。口径は何と36インチ(約914㎜)。口径だけで言えば80cm列車砲さえ上回り、現在もこの記録は破られていない。いまさら破る意味は無いのだろうが…

因みに、同じく36インチの砲口径を持つ火砲としては米軍の迫撃砲リトル・デーヴィッドがある。超重戦車マウスと言い、欧米人のネーミングセンスを疑いたくなる。


臼砲艦編集

臼砲は海戦でも活躍した。ケッチと呼ばれる小型の帆船に臼砲を1~2門程度載せ、その大威力で艦砲射撃を行うための艦である。

その威力からボム・ケッチ、爆弾ケッチなどとも呼ばれ、艦名は伝統的に火山や爆発を示唆する単語が用いられた。

また、臼砲の発射に耐える為に頑丈な船体構造を持っており、それを利用して極地探検に用いられたモノも有る。


関連タグ編集

大砲

迫撃砲(英語名が同じMortarである。)

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