概要
遠野物語とは、柳田國男の編纂による著作。日本の民俗学研究に関わる書の中でも、特に多くの読者を得た。
岩手県遠野出身の民話研究家佐々木喜善が蒐集した郷里の伝説を、柳田國男が小説のような文体でまとめた。
この前にも柳田は民俗学の書物を記しているが、内容が堅苦しかったため人気が出なかった。
こちらは、民俗学の書物というよりも「怪異集」や「童話集」のような扱いを受け、印刷費用を容易に回収できたという。
この書物に対する書評は、泉鏡花や田山花袋が積極的に記し、近代の幻想文学にも影響を与えた。
内容
よくある昔話のような「昔々あるところに」という形式と違い、具体的な場所や人名が出ているのが特徴である。この書物によって有名になった妖怪や怪異として代表的なものは、座敷童子やマヨヒガなど。
原文は簡潔な文語体で、今から手にとろうと思うならば、まずは口語訳から読むといいだろう。
古めかしい文章に抵抗がないなら原文で読んでもよいが、遠野の古老の語り口そのままではなく、柳田による手が入っていることに留意が必要。
場所が北上山地の山中であるため、山中の人々の文化を知りたい人にもいい書物と思われる。
ただし、海に関わる伝承や妖怪はからっきし登場しないので、そういうものはまた別に調べる必要があるだろう。
マタギやサンカなどの記述もちらほら見られる。話は比較的近代のものも含まれており、著作時点(明治43年)の前年、という話すら収録されている。
取り扱っている内容
経立(ふったち)