邪竜ソンブル
じゃりゅうそんぶる
本作のラスボス。
本編開始より千年前に突如として現れ、エレオス大陸を襲った存在。
長きにわたる戦いの末、神竜王ルミエルと紋章士の指輪の力によって封印された。この時、彼が治めていたグラドロンの大地も聖地リトス周辺の海底に沈んでいる。
しかし、月日が経過するうちに封印の力が弱まり、千年経った頃には復活の兆候が見られ、それと同時期に主人公リュールも永き眠りから目覚めることになる。
一人称は「我」、二人称は「貴様」「お前」。尊大で残虐な性格。
紋章士を顕現する力を持つ。ただ、ソンブルに顕現された紋章士とは意思疎通ができない。
邪竜信仰のイルシオン王国で崇拝されている。
部下の「四狗」やイルシオン王ハイアシンス、そして謎の黒衣の人物が主体となってソンブルの復活を目論み、指輪を集めている。
異形兵という生ける屍も、彼らが動き始めたと同時に各地に出現している。
10章にて、邪竜復活の儀式が行われたデスタン大教会にその姿を見せる。
当初は立つこともままならぬ状態で、完全な復活には贄として王の生き血が必要だった。モリオンもそのために拉致され、また、ソンブルは自分を崇拝するハイアシンスをも喰った。
その後、リュールが集めた紋章士の指輪を全て奪い、邪竜の力で顕現し直した。
名前の由来は、フランス語で「暗い」を意味する「Sombre」と思われる。
- 人間態
額に第三の目を持つ長身の男性。肌は紫色で、ギザ歯。耳は長く尖り、足には鋭い爪が生えている。
上半身はほとんど露出しており、筋肉質であることが分かる。腰の周りに浮いている剣のようなものは、赤紫色の髪に同化している。
- 竜の姿
上半身がコブラ、下半身が竜のようで、人間よりも遥かに大きい。こちらにも額に第三の目がある。体は黒く、舌は蛇のように二股に分かれている。長い尾の先には爪のようなものが四本生えており、それで何かを掴むこともできる。
正式名称は間違いなく「邪竜」だが、その姿からは同じ「じゃりゅう」でも「蛇竜」を想像するかもしれない。
なお、人間と竜どちらの姿も存在するというのは歴代作品の種族マムクートを思わせるが、ソンブル含む本作の竜族がそれに該当するかは不明。
ヴェイル、そして主人公リュールの父親。
ソンブルは千年前、多数の子をもうけていた。
しかし、ソンブルにとっては子供は「自身が親というだけで従う便利な駒」でしかなく、愛情は皆無に等しい。
彼らを戦に動員し指輪を集めさせていたが、不出来な子供は「欠陥品」だとして処分していた。過去のリュールの発言から、リュールの兄を溺れさせたり、姉を焼いたり、妹や弟を異形兵に殺させたりしていたそうだ。
幼く戦う力を持たない末妹ヴェイル以外の子供は、千年前の戦で全員死んでしまった。……リュールを除いては。
リュールはきょうだいの中でも優秀だったが、ある時、神竜ルミエルに出会う。初めて優しくしてくれたルミエルをリュールは攻撃できず、二人は次第に心を交わし、母と子のような関係になっていった。
そして、リュールはソンブルに反旗を翻す。リュールに斬られて瀕死に陥ったソンブルは、最後の力で不意を突き、リュールの胸に風穴を開けた。
倒れたリュールはルミエルに保護され、力尽きたソンブルは封印されたのである。
このような経緯があったため、リュールはソンブルとルミエルの子という訳ではない。
元は赤一色だったリュールの髪と瞳の色は、ルミエルの神竜の力を注がれたことで青が混じるようになった。リュールの赤色は、赤紫色の髪をしているソンブルから遺伝したのかもしれない。
千年の封印から目覚めた後にヴェイルと再会するが、優しい心を持ち役に立たない彼女を厭うソンブルは、自分に従順な邪竜らしい人格をセピアに作らせた。
物語終盤にて、諦めず反抗する本当の人格のヴェイルをついに始末しようとするソンブルだが、リュールが彼女を庇い、結果的に二度目のリュール殺害となる(訳あってリュールは後に復活するが)。
ヴェイルが紋章士を顕現する力を持たないことから、ソンブルの能力の全てが子に遺伝する訳ではない様子。
ソンブルは異形兵をヴェイルほど精巧に作れない。しかし、十二の指輪の力を得た後はそれさえも完璧にできるようになり、埋葬されていたルミエルを異形兵にして邪竜紋の守護に当たらせた。
ちなみに、ヴェイルの母親である魔竜族の女性からは本当に愛されていたようだ。また、ソンブルはリュールの名付け親でもあるらしい。
千年以上前からセピアはソンブルに献身し、彼女が家族を欲しがる切っ掛けになったのもソンブルによるもの。
恐怖で支配していたとはいえ、自身の子供からも尽くされていたソンブルは意外にも周りの人物に恵まれているのだが、彼がそれを受け入れることはなかったのである。
以降、最終章のネタバレ注意。
ソンブルはエレオス大陸に生まれた訳ではなく、異界からエレオスに流刑された者だった。
遥か昔、ソンブルの故郷の世界では紋章士の指輪を巡った争いが続けられており、その戦いで敗けたソンブルの一族は処刑されてしまった。しかし、当時幼かったソンブルに哀れみを持った敵勢力は、争いのないエレオス大陸に彼を追放するに留めたのだ。
その際、彼は零番目の紋章士である「礎の紋章士」の指輪を隠し持っていた。ソンブルの力では意思疎通を図れなかったが、孤独だった彼は「ただ一人で闘い、ただ一人で野望を成し遂げた」という礎の紋章士の逸話に惹かれた。彼にとっては心の支えで、唯一の友だった。
しかし、幾年の後にソンブルがエレオスの人間に見つかり、世話をされ始めた頃、指輪だけを残して礎の紋章士は消えてしまった。
ソンブルは異界の者と交流したことで礎の紋章士が自分を見限ったのだと思い込み、酷く絶望した。そこで、元いた異界への復讐と、礎の紋章士との邂逅を果たすことを決心し、自分に優しくしてくれた村を焼いた。
礎の紋章士のように独りで野望を成し遂げると誓い、異界へ行くために領土や駒を増やし、戦を仕掛け破壊の限りを尽くしていたのだ。
最終章たる26章では、ついにソンブルが異界の扉へたどり着く。エレオスへの執着は全く持ち合わせておらず、惜しみなく異界へ侵攻を始めようとするソンブルだが、それを許すはずもないリュール達が止めに来た。
真の目的が礎の紋章士との邂逅であることを語るソンブルは、リュール達に「ソンブルがエレオスの者と交流を持てたことで安心して消えていったのではないか」「礎の紋章士の元になった英雄には会えるかもしれないが、その紋章士自身には二度と会えない」などと看破されると激高し、今度こそリュール達を殺すため戦うことになる。ソンブルは異界の扉を閉じることで十二紋章士を消滅させようとするが、リュールが再び彼らを顕現することで阻まれた。
敗北後、ソンブルは正直な心情を吐露する。最期までエレオスの誰とも絆を結ぼうとしないソンブルに、リュールは礎の紋章士の呪文をもう一度唱えることを提案。当然何も現れなかったが、ソンブルには何かが見えていたようで、再会した喜びに満足して消えていった。
ちなみに、撃破された後から一人称が「私」に変わっている。
礎の紋章士についての詳細は不明。顕現する呪文が「焦我(こが)せ、礎の紋章士」であることと、異界に渡っても姿を保っていたことから、他の紋章士よりも強力であったことは窺える。
ネット上では、正体はアンリだとする説が主流。
物語開始時点で故人。
こちらの世界では太古から神竜と邪竜が共存していたが、邪竜族は内なる破壊衝動から蹂躙を始めるようになった。神竜族と人間は紋章士の力を借り、大陸に平穏を取り戻す。
しかし1000年前にソンブルは再び戦を仕掛け、ルミエルに封印された。その後復活するも、神竜王となったリュールと相討ちになる。
こちらの世界の邪竜の子は必ず双子で生まれるようで、エルとイルもその内の一対。当然、数え切れない程の御子がいた様子。
非道な性格は変わっておらず、きょうだい同士で殺し合うことを咎めないどころか奨励していたり、魔竜族のセレスティアの故郷を焼き払ったりしている。
しかしあくまでも邪竜族の受けた雪辱を果たすことを目的としており、後継を考えているなど、全て独りよがりだった本編の彼とは大きな違いがある。
以上のことから、本編よりもマシな父親だと言われている。