高速有鉛とは
- 日本の自動車に貼られていた、使用するガソリンの種類を示すステッカー。
- かつて、いわゆる「旧車」を専門とするショップで配布されていたパンフレット。1に由来。
- 旧車をメインに扱う自動車専門誌。→『高速有鉛デラックス』
ステッカー
レシプロエンジンは圧縮比を上げることで性能の向上が可能である。
ところが、ガソリンの場合はある程度以上圧縮比を上げると点火する前に発火してしまう(ノッキング)ので、圧縮比を上げれば燃料の耐ノック性(オクタン価)も向上させる必要がある。(このあたりは『ハイオク』の項が詳しい)
1920年代にアメリカで開発された手法はガソリンに鉛を含む有機化合物(アルキル鉛)を混ぜるというもので、ガソリンエンジンの性能を大きく引き上げることに成功したが、その反面で環境や健康上の懸念は黙殺された。
日本では、1970年に東京都新宿区牛込柳町のある交差点近くの住民に深刻な健康問題が見られ、血中から高濃度の鉛が検出されたと報じられた。牛込柳町鉛中毒事件と呼ばれた一種の公害事件である。
この一件は後の調査で鉛との関連性に疑問符がつくこととなったが、鉛そのものに毒性があることは変わりなく、加えてガソリンに混ぜられたアルキル鉛はガソリンの製造過程で死亡事故を引き起こしている毒性の強いものだったため、使用量制限→使用停止と段階的に規制が進められた。
日本では1975年にレギュラーガソリンで、技術的課題が大きかったハイオクガソリンは1987年にそれぞれ無鉛化を達成した。
一方で、自動車のエンジンはメーカーやモデルによって無鉛ガソリンに対応したもの、対応していないもの、基本的に無鉛ガソリンが使えるが有鉛ガソリンが必要なものなど、様々なものが混在していた。
このため、1970年代から90年頃にかけて、ガソリンを使用する自動車などには次の4種類のステッカーのいずれかが貼られた。
- 有鉛(赤)
- 混合1/3(緑)
- 高速有鉛(橙)
- 無鉛(青)
有鉛ガソリンは、バルブシートに鉛の微粒子が付着することで摩耗をある程度軽減されると考えられたため、激しい摩耗が懸念される機種の無鉛化ではこれを対策品に切り替えることで対応したが、時期的な問題などでこれに漏れた車種には有鉛指定のステッカーが貼られた。
一方で、ハイオクガソリンの無鉛化は遅れたため、高性能車を中心にエンジンそのものは無鉛ガソリンに対応していても「ハイオク指定」という意味で有鉛を指定する車も存在した。
前置きが長くなったが『高速有鉛』とは高速道路など高い負荷がかかる運転条件では(ノッキング防止のため)ハイオクを入れる車両である。
したがって、この区分の車は普段使いでは無鉛ガソリンでも問題はおこらないと考えられる。
現在、有鉛ガソリンを指定している車を使用する場合、先に述べた理由から車種によって必要な対策が異なる。
自動車誌『高速有鉛デラックス』
内外出版社が2007年から隔月で発売している旧車専門誌。
国産セダンや商用車など、どちらかといえば地味な車種にスポットを当てている。