「いつかね。大きな場所で沢山の人の前で歌えたら良いなって……」
「それが、今の私の夢かな」
「歌います。でもそれは私の夢のためでも、あなたのためでもありません」
「私の歌を純粋に楽しみにしてくれている、みんなのためです」
「あの人達のために私は歌います。あなたが何を考えていようと、それを上回る奇蹟の歌を」
概要
声:三澤紗千香(歌のボーカルも担当)
劇場版『エンデュミオンの奇蹟』のキーキャラクターであり、ヒロインに位置する無能力者の少女。
「歌でみんなを幸せにしたい」という夢を持ち、「ARISA」という活動名で路上ライブやネットでの楽曲配信をしながらデビューを目指していた。
上条当麻とインデックスと出会ったある日、オーディションを受けた宇宙エレベーター・エンデュミオンの開通キャンペーンのイメージソングに見事大抜擢され、やがて『奇蹟の歌姫』という時の人となる。
それが、科学と魔術を巻き込んだ大きな事件の始まりだとも知らずに。
人物
明るく前向きな性格で、夢のためならどこまでも頑張れる努力家。不幸な上条とは違い『幸運』にも恵まれている。
後に『歌姫』と称されるくらい、その歌声とダンスは見事なもので、(魔術方面の意味で)歌にうるさいインデックスが「素敵な旋律」と評するほど。
日頃から路上ライブのために必要な機材を持ち歩いているため、可憐な見た目からは想像できない腕力と体力を備えている。アリサの代わりに上条が機材を運んでいるシーンがあるのだが、男の上条が軽く息を切らすほどに重い様子。
長らく『禁書目録』どころかシリーズ全体でもいなかった、正統派ヒロインのように描かれている。
実際『とある』の登場人物は良くも悪くも癖のある人間ばかりのため、ますますそれが彼女の純真な可愛さを引き立てた。
特に上条への呼び方がとても印象的で、なんと「当麻君」と名前呼び。
作中では基本的に名字かフルネームで呼ばれる事がほとんどの上条を、インデックスと両親の刀夜と詩菜を除いて、君付けの名前で呼び掛けるため殊更に印象深くなる。
一方の上条も、彼女の事を「アリサ」と珍しく名前で呼んでたりする(彼は日本人に対してはいつも名字で呼ぶ)
実は記憶喪失で、3年より前の記憶を失っている。身寄りもない故に施設で育ち、名前もそこで付けられたもの。
高校一年生ではあるが通っている学校は不明。ある条件に発現する能力の『身体検査』のため、姫神秋沙も在籍していた霧ヶ丘女学院で定期的に能力検査を受けている。
能力
無能力者ではあるのだが、歌っている時にだけ起きる不可思議な現象が確認されている。
上条の『幻想殺し』と同じく『身体検査』では判定できない特殊な能力で、彼女の『幸運』もこれが関係しているものと思われる。
便宜上『奇蹟の力』とされ、彼女の歌声を聴いた者の中には良い事があったと語る者がおり、実際アリサ本人や観客達が危機に陥った時も、誰も死ぬ事なく難を逃れている。偶然と呼ぶには明らかに出来すぎている現象に、周囲は奇蹟だともてはやす中、アリサは一人不安を感じていた。
この力は学園都市だけでなくイギリス清教も目をつけており、アリサの『聖人判定』のために神裂火織が密かに監視していた。
正体
※この先、劇場版のネタバレが含まれます |
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とある『人間』曰く、鳴護アリサの正体は「願い」。
3年前のオリオン号の不時着事件。本来88人しかいないはずの機内に突如現れて、『奇蹟』を生んだ89人目の少女、それが鳴護アリサである。
3年より前の記憶が無いのも当然。何故なら、この時に彼女は生まれたのだから。
能力者は『自分だけの現実』を観測する事で実際の現実を歪めて、火や電気などの様々な超常現象を引き起こす。
しかし能力者ではなくとも、元来人の願いというのは主観を歪めるほどの力を持っている。
それが一つではなく複数も存在し、それらが同一の指向を与えられれば(同じ願いになるように仕組めば)因果律にすら干渉し得る力となる。
本来バラバラの願いに同一の指向を与えたのは、歌。
まだ幼かったシャットアウラか、それとも機内にいた他の誰かのものか。その「歌」は呪術的な力を帯びた。
さらにオリオン号には、実はレディリーが仕掛けた自殺用の術式が施されていた。
この三つの要素が揃った事で、多くの人間の運命を変える『奇蹟』───すなわち鳴護アリサが誕生したのである。
今まで起きていた『幸運』や『奇蹟』も、願いの集積体であるアリサ本人が無意識にそれを発現させたもの。
作中では「シャットアウラから分かれる形で生まれた」とされているが、結局どういう行程なのかは明かされてない。
描写を見る限り、あの時に歌ったのがシャットアウラだから、という風に受け取れるが断言されている訳ではないため、答えは不明のままである。
奇蹟の結末
地上へ落下するエンデュミオンから人々を救うため、アリサはシャットアウラの手を取り、共に「奇蹟の歌」を歌う。
それはかつての「88の奇蹟」と同じ、因果律にすら干渉する歪曲。
結果エンデュミオンの地上落下は回避されたが、歌い切った時にはアリサの姿はどこにも無くなっていた。残されたのは一緒に歌っていたシャットアウラ一人のみ。
しかし、微笑みを浮かべる『少女』を見た上条は、笑ってこう言ったのだ。
「きっと世界に届いたぜ。お前の歌……」
そしてエンデュミオンの事件が解決した翌日、上条当麻とインデックスは彼女と出会った場所に来ていた。
まるで最初からいなかったかのように消えた友達を思い浮かべて、二人は彼女の事を話す。
「ねえ、とうま。やっぱりアリサって……」
「……、いや。だって俺が触れたんだぜ? この右手で」
確かに。
鳴護アリサは世界から消えてしまったのかもしれない。
もう二度と、あの少女と会えないのかもしれない。
だけど。
「だからあいつは、幻想なんかじゃない。歌が好きで、歌でみんなを喜ばせるのが好きで。……それだけの、普通の女の子なのさ」
「……うん、そうだね」
そうして歩き出した時。
どこからか、彼らの耳に声が届いて……
「───とうまにも聴こえた?」
「……、ああ!」
だからきっと。
あの奇蹟は、幻想なんかじゃない。
余談
実はインデックスに負けず劣らずの健啖家なのだが、劇中では描く機会が無かったのか、それとも単純にボツになったのか。とにかくその様子は劇中には存在せず、漫画版のオマケ四コマで回収された。
漫画版では割とロックというか、とあるシリーズのキャラらしい一面を見せており、中指を立てて汚い意味の英語の歌をファミレスで歌ったり、一人だけ美味しそうに食べるインデックスに我慢ならずアイアンクローを喰らわせたりしていた(直後に正気に戻って謝罪した)
関連イラスト
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幻想殺し&理想送り…上条当麻の十八番である右手の能力と、それと対極を成す上里翔流の右手の能力。これらは「願いの集積によって産まれた力」であり、彼女の存在も非常に良く似ている。