Phenom
概要
AMDが開発したCPUで、K10マイクロアーキテクチャを採用している(前世代のAthlon 64はK8を採用しており、K9は計画こそあったが中止された)。IntelのCore2に対抗するために2007年から投入された。
ソケットは前世代と同じSocket AM2+を採用しており、Athlon 64シリーズと互換性がある。
コードネームはAgena(4コア)/Toliman(3コア)
開発
Core2Quadに対抗するために開発されたため、AMD初の4コア製品となった。製造プロセスは65nm。
この世代からAMDは自社工場を切り離し、GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ、略称:GF)という半導体製造企業になった。このPhenomシリーズもGFによる製造となっている。
Core2Quadがデュアルコアの2ダイによる「なんちゃってクアッドコア」(インテル日本法人担当談)であるのに対し、Phenomは4つのコアを1ダイに収めた「真のクアッドコア」「ネイティブクアッドコア」である点を強調。「Are you "ネイティブ"?」のキャッチコピーで対抗した。
発表当初はクアッドコア製品が「Phenom X4」、デュアルコア製品が「Phenom X2」と名付けられていた。しかし、出荷直前の2007年9月に急遽トリプルコア製品をラインナップに加え、入れ替わる形でデュアルコア製品は開発中止となった。これは、コア数の増加による歩留まりの悪化を防ぐためであり、4コア中1コアが動かなかった製品をトリプルコア製品として販売することで不良品の破棄をなるべく減らしたのである。
クアッドコア製品は「Phenom 9000」、トリプルコア製品は「Phenom 8000」となったが、後に「Phenom X4 9000」・「Phenom X3 8000」に改称された。
なお、K10を採用したデュアルコア製品は「Athlon X2 7x50」(コードネーム"Kuma")として発売された。
発売後
Core2Quadの対抗馬として大きく注目され、発売後は各種メディアでベンチマーク比較が数多く行われたが、その結果 Core2Quadを超えるものではないとする評価が多勢を占めた。その要因として、シングル性能の不足と消費電力の高さなどが挙げられている。
性能判明後は価格が暴落してしまい、TLBのエラッタ問題等も合わさってスタートダッシュに大失敗してしまった。
Phenom II
概要
先代のPhenomを45nmにシュリンクし、回路の最適化による性能向上と機能の追加をしたK10マイクロアーキテクチャの製品群である。
2009年から順次展開され、既存の4・3コア製品に加えて2コア製品が誕生した。さらに、2010年からはAMD初の6コアとなるPhenom II X6が誕生した。
ソケットはSocket AM3に変更され、DDR3メモリに初めて対応した(ピンの位置がSocket AM2/AM2+と互換性が保たれた配置となっているため、BIOS等の対応次第で旧マザーボードでも動作可能)。
コードネームはThuban(6コア)/Deneb・Zosma(4コア)/Heka(3コア)/Callisto(2コア)
発売後
プロセスの微細化に伴い高性能・低消費電力を実現しており、自作PC界隈の人達からは好評であった。
しかし、ライバルのIntelは当時最大8スレッドのCoreiシリーズを展開しており、32nmプロセス・6コア12スレッドの新製品を発表していたため、話題を奪われてしまった。
Intelの新製品に対抗すべく次世代製品としてAMDFXを投入したが、これが黒歴史として語り継がれることになるのはまた別の話。
FXシリーズ誕生後はPhenomはクローズされ、2022年現在Phenomを名乗る新製品は発売されていない。