概要
『ソードアート・オンライン』通称SAOは開発者茅場晶彦の手によってログアウト不能、ゲームオーバー=現実の死というデスゲームと化していた。
最終的に四千人もの犠牲者を出した末に、ゲームはクリアされた。そして、生き残った六千人は無事に現実世界へ帰還した。
帰還後の生還者達
無事に帰還した六千人はSAO生還者(サバイバー)と呼ばれ、各々の暮らしを取り戻しつつあった。
中にはゲーム内で出会った生還者同士の男女で入籍に至る、もしくはその縁で友情を得た者もいる。
帰還した少年少女達
その中で、SAO生還者の中には学生も多かったために、彼らの学業の遅れを取り戻すべく政府主導で高校生以下の生還者が通う学校へ通うように手配し、大学受験も便宜を図っていた。
デスゲームをクリアした黒の剣士を始めとした少年達の多くはこの学校に通っているが、中にはここへ通わずに普通の予備校へ通った者もいる。
しかし、そうした社会復帰もある一方で過酷なデスゲームに二年間も身を投じていた彼らが精神にどのような変調を来しており、ゲームと現実の境界が崩れて犯罪に身を染めてしまうリスクも孕んでいたため、一括りに監視してしまおうという意図も含まれている。つまり、実質彼ら全てが政府にとっては監視対象の犯罪者予備軍扱いされているのである。
実際に月に一度のカウンセリングを受け、不快な質問をされる者や嫌な薬を飲まないといけない等、収容所同然である面は実際に存在している。とはいえ、務めている教師達は彼らを真摯に案じている者が圧倒的に多く、生徒達も充実した学生生活を取り戻しているのもまた事実であることを忘れてはいけない。
生還者達及びVRMMOプレイヤーへの偏見
SAO生還者に限らず、世間ではVRプレイヤーは心ない偏見で見られており、社会に寄与しないお荷物、税金も年金も払わない現実逃避者、挙げ句の果てには徴兵制を復活させて強制的に社会貢献させる等という人権そのものを無視した考えまであがっている。
特に最後のは、どうせ、ゲームに浸って死生観が薄くなっているから兵役に投じても困らないという余りにも倫理観を逸脱した考えでしかない。
SAO生還者だけに限って言えば、他のVRプレイヤー達からも英雄気取りなどという偏見で見られるという実態もあるので、社会的に見ればSAO生還者そのものが異端扱いされている。
SAOひいては仮想世界にかけるもの
しかし、SAOでの経験は彼らにとって決して地獄だけではなかった。SAOで愛する人を得て自分らしく振る舞えるようになり、友人と出会えた自分達にとってもう一つの現実、仮想世界を通じて大切な人との関係を修復できた、自分自身のトラウマを払拭して前へ進めるようになった、現実に居場所がなく、仮想世界を通じて仲間を得て生きた証を遺した、全く新しい仮想世界とそこに生まれた新しい可能性と命の誕生。
決して、VRMMOは只の現実逃避ではなく紛れもないもう一つの現実なのである。それを否定することは、彼らのこれまでの人生そのものを全て否定することであり、それによる可能性も否定することになる。
彼が遺した種は、そうして今も芽吹き続けている。