SCP-3999
えすしーぴーさんきゅうきゅうきゅう
では行こう、きみとぼくと 十一日帝国が空を喰らうとき 朝食のテーブルの上の蛤のように熔けるヒューマノイドのように。
SCP-3999とは何か。
それは、我々が一番よく知っている。
いいや、我々一人一人が知らなければむしろ、おかしい存在である。
このSCPは一概に説明するのは難しいとされているが、その最たる理由としてこのSCPには一人称や登場人物という概念が通用しない。
小説、映画、ドラマ、漫画、アニメなどの創作物はもちろんのこと、現実世界においてさえも存在する自他の境がこのSCPには無い。
ゆえに、「怪物が人を襲うSCP」
「おかしな物質のSCP」
「何かわからないけど、ヤバいことが起こるSCP」
などといった、基本的な説明がそもそも出来ない。
主語と登場人物の一切が当てはまらないとは、そういうレベルでの理解不能だ。
――いいや、厳密に言えば一人だけ登場人物が居る。
ジェームズ・マーティン・タローラン博士。何を隠そうこのSCPの担当研究員である。
しかしながら、世界的な手遅れとまで言われるApollyonクラスのオブジェクトに、担当研究員が一人というのはいかがなものだろうか? そうしなければいけない理由があるのだろうか?
いいや、その実、タローラン博士には秘密があるのかもしれない……。
そんなSCP記事としての前提さえも、実のところはわかっていないのである。
いやいやそんなこと、あっていいはずがない。
なんなら次元を越えよう。
他のSCPとクロステストもしよう。
タローランの人権を踏みにじっても見よう。
なんらかのドラマだって、悲劇からなら生まれるかもしれない。
だってこれは3999。
シリーズⅣのトリをかざる特別なSCPで、なんてったってApollyonなんだから。何も起こさない訳にはいかない。
そうだろう?
なんなら詰まらないジョークだって混ぜて場を茶化してみせるし、何か思わせぶりなリストを混ぜればない想像を沸き立ててくれるかもしれない。迷走しすぎか。いや、考えを放棄するよりはましだ。
いやはや。
そんなこんなをしているうちに、文量がこんもりと溜まってしまったよ。
これを添削して、纏め、読みやすい説明概要にするんだな。うん。
めんどくさくなってきたな。正直に言うと。
ああもう、白状しようか。もったいつけずに。
この記事をそうだと知らずに開く諸兄、紳士淑女の皆々様よ。
私はもう疲れた。
タローラン博士に売れ行きの怪しい芸人もあわやとばかりの拷問を強いるのも、異常存在だなんていう言葉遊びをこねくりまわすのにも、正直興味が無くなってきた。
はっきり言うべきなんだ。
SCP-3999とは、頭の中にあるいまいち冴えないSCPアイディアのあぶくだ。
そしてそれをこねくり回す脳みそと、みみっちい承認欲求、焦燥感、強迫観念諸々だ。
つまりは私であり貴方自身なのだ。
そりゃあ一人称も登場人物もクソもない。すべては妄想の中の仮想キャラにすぎず、その定員も定かじゃないんだから。
ああ、タローラン、タローラン。タローラン!
奴だけしか思いつかない。奴の設定だけは固まっていくんだ。それ以外はからっきしだ。
SCP-3999を生み出しきれない私自身が、SCP-3999とは何かという自己矛盾に陥っている。
「私は私に起きること全ての中心にいる」つまりそういうことだ。
財団世界をつくり出し、ないはずの異常存在の完成したレポートを生み出し、あとから時間軸を整えて、ホラーだったりジョークだったりに辻褄を合わせていく。
神であり、ただの人でもある。そんな私自身でしかないんだよ。
妄想。その一言で片付いてしまえばいいのに。ああ。
無駄にデキのいいタローラン博士が、独立した仮想人格として正論を俺に説いてくる。
「お前の考えてることはつまらない」
「ここまでやって、何も考えてないとか頭おかしいんじゃないのか」
「お前がやってきたこと、無かったことにしてきたこと、忘れてないからな」
ああ、全くうるさいなあ。
お前の考えてるような、こう、アカシックコードとか世界の神秘とか超常現象だとか、そういうのはこの記事(世界線)にはないんだよ。悪かったな!!
でもああ、あれだ。造るのは好きなんだよ個人的に。
そこだけは恵まれてるよな、お前の世界線は。
創造神であるこっちは苦しいが、ここまで思考錯誤されてる世界は幸せもんだな。
俺なんて駄目さ。薄給だし、さっきも子供にタップダンス教えたりしてた。
運命もあったもんじゃなく人生流されっぱなしさ。神なんていねえよ。
だからかな、神めいた事をして、世界をつくってみたくなった。
創作ってのはさ、やっぱ楽しいよな。
上手く行ったら万々歳だけど、上手くいかなくても次に生かせるし、悔しいけどそれも自分が好きなことの裏返しだしな。
疲れた時に考える妄想はそのまんま「想像の翼」って感じに羽ばたけるんだ。
物語を考えるときの解放感が、俺は大好きなんだ。
うん。そろそろ決着を付けよう。また物語が書きたくなるまで、長い休憩が必要だ。
俺を収容しようと苦闘していたタローラン博士との争いに一区切りを付けねばならない。
思えばたったそれだけのことを説明するのに、時間をかけすぎてしまったな。
あれだ。死んでることにしよう。俺と相討ちだ。
でもそれだと、投げっぱなしになっちまうから、やっぱこの気持ちに気づかせてくれたタローラン博士に、俺がトドメを刺されたって事にしようか。
だったら、クラスは――Neutralizedだな。俺は無力化された、元異常存在だ。
ぐちゃぐちゃの記事だったけども、その説明をするときにさえも踊らされてしまったようだ。
ああそういえば、
これ纏め記事だったっけ?
それともSCP-3999そのものだっけ?
まあどっちでもいいか。
キミも、本記事で、思考を駆け巡らせてみろよ。きっと創作活動は楽しいから。
タローラン博士は泣くけどもさ。俺たちも同じだけ苦しくて泣くから。
そういうのをたのしめばいい。
まあ、そういうことで。
それで私が書いたやつはこれで終わり。
読者「お前は何を言っているんだ」
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