アイテム番号:SCP-444
メタタイトル:世界調和言語
オブジェクトクラス:Euclid
憎悪や怒りが消えた世界は、どこまでも健全かつ不健全だろう。
SCP-444とは、シェアード・ワールドSCP_Foundationに登場するオブジェクト(異常な特性を持つ研究・監視対象)の一つである。
概要の前に
このオブジェクトを説明する前に、本オブジェクトの特別収容プロトコル、その最初の文に目を通して頂きたい。
確認された財団の管理下にないSCP-444は隔離するか、多大な力によって破壊されるべきです。
本来ならば、世界の安全保障上の脅威となる異常な物品や存在を人類から隔離し、Secure(確保)、Contain(収容)、Protect(保護)する事を活動理念とする「財団」の中でも、本オブジェクトは、あの忌々しいクソトカゲと同様、破壊することを認可されているSCPなのである。
概要
SCP-444は、未知の言葉を介すことで感染するミームウィルス、いわばミーム系オブジェクトであるのだが、一応収容することには成功している。
このオブジェクトの異常性とは、その一貫性のない未知の言語に曝された人間は、即座にその言葉を理解・使用する能力を身に付け、それ以外の言語を学ぶ能力を永遠に失うというもの。ただし、既に習得している言語を理解・使用する能力は残されており、財団は後者の異常性によって感染者とのコミュニケーションをとると共に、この未知の言語を解析する作業を日夜進行している。また、このオブジェクトを研究する施設はSCP-444の感染者のいる施設からさらに隔離された場所で研究される。
このSCP-444、文章ならば長時間の接触でようやく影響するのだが、発声による接触ならばごく短い文でも瞬時に影響を受けることが判明している。よってSCP-444に関わる職員、特に翻訳作業を行う翻訳家は、12時間以上の接触を避けるよう指示されている。
また、脳検査及び感染した脳を解剖した結果、SCP-444は脳のとある器官の科学的な分断が成されるという改変を起こすことが判明。これは言葉の減少ではなく、感染者の精神的な変化によるものであると思われる。
ちなみに、上記の調査の調査の際に、SCP-444には下記の幾つかの概念を表現する方法がない事も分かった。
・反抗
・憎悪
・怒り
・[編集済]
さらに、この4つの概要を理解出来なくなったことによって、感染者の性格は非常に穏やか克つ従順になり、特に出産・児童保護といったことに関心を寄せるようになったという。
実験ログ444-7
このオブジェクトによる実験で、SCP-444に感染していないDクラス職員からなるコントロール集団と、感染したDクラスから構成されるテスト集団を50人ずつ、十分生活していける環境にそれぞれ配置させた。
コントロール集団は監視の目がないため、荒れまくった結果、1年も経たないうちに全滅。
たいしてテスト集団は、初めの2週間は数人が争ったと思われるものの、数ヶ月経つうちに幾人かのリーダー的存在から構成される安定した集団を形成、さらに数ヶ月してリーダーたちはその座を降り、理想的な無政府主義社会を形成し、1年後には新しく生まれた子どもたちも含め52人までその数を増やした。最終的にこの集団は解散され、新しい子どもたちが収容された施設でもまたSCP-444の影響下にあったことが判明した為、これも解散させられたのだった。
........このオブジェクト、危険な要素なくない? むしろ世界平和出来るんじゃね? とお考えのそこの貴方、こんな美味しい話が本当にあると思いますか?
そもそも、SCP-444という言葉を目にした貴方、もしかしたら最初に想像したのは、知ったらアウトな緋色の鳥や、知らせなければアウトな連続殺人を思い浮かべた人がほとんどだと思うが、表面上の危険性を比べたならば、たしかにこのオブジェクトはまだ穏やかなようにも思える。事実、凶悪な死刑囚等から構成されるDクラス職員たちの役にたち、兵器としての価値有りと実験で記されている。
しかしよく考えてみてほしい。このオブジェクトによって、誰もが平等かつ安定した、まさに理想の社会が形成されたとしよう。ましてや、それが全世界に拡散したとしよう。誰もが自分の意思を正しく伝えることが可能で、さらに誰もが対等になるこのミームが、現代社会にばら蒔かれたとしたら................。
何よりもこのオブジェクト、終わりに近い文章の中で、明確に敵対的侵略兵器であると記されている。
どうやら1900年代に、どっかの誰かが、或いはどっかの組織が広めたという見解がなされており、特に貧しい低所得者や移民労働者といった下層階級の人々の間で大ブームになったらしい。
確かにこのオブジェクトは、人と人を繋ぐ異常性があるのだろう。正しく使用すれば、まさに人類が夢見た理想郷を産み出すことが出来るのかもしれない。
だが今一度このオブジェクトによって人の機能や能力、感情にどのような変化があったか思い出して頂きたい。生物としての機能を改変しているこのオブジェクトを、人としての感情の一つたる怒りや憎悪、反抗といった行動を強制的に改変し、無かったものとするこのオブジェクトが、果たして健全なものだと誰が言えるだろうか。それこそ、財団が恐れるK-クラスシナリオ(今回ならば未定義に分類されるEK-クラスシナリオ)に繋がる訳がないと誰が言えるのか。
そしてその健全は、財団が肯定するものではない。財団は、世界の脅威となる異常な物品や存在を人類から隔離し、Secure(確保)、Contain(収容)、Protect(保護)する事によって、人類の未来を守ることを使命とする。
故に財団はこのオブジェクトを収容する。例えどれだけ益があったとしても、人類の社会に致命的な影響を及ぼす危険性が存在しているのならば、それを収容し人々から遠ざけねばならない。
世界平和を実現させ、人類の理想を求めることよりも、財団は今在る人類社会を守る為にSCP-444を収容している。
財団は冷酷だが残酷ではない。だが人類の未来を守る為ならば、使命を全うする為ならば、如何なる手段をとることも躊躇わないのだ