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旧記事「みつけたよ」についてはSCP-CN−994を参照。




僕は昔から——ほんの小さな子供の頃から、ずっと同じ夢を見続けてきた。


あの頃僕は故郷の小さな村で学校に通っていた。一条の小川が村の裏手を流れていた。 蘇(スー)ちゃんと僕は川べりに座って、川の水がやって来て過ぎ去るのを眺めていた。蘇は僕の幼馴染だ。彼女は言った。水はこの川をまっすぐ進んで、最後には街に入るのだと。


世界は不公平だと思う。川の水でさえ街に入るチャンスがあるのに、僕は小さな村の中で過ごすしかない。


あの頃の僕たちはまだほんの子供で、街と田舎の暮らしの違いは、それが原因だと思っていた。後になって、運命とかいうものの前では、みんな同じだと知った。


もしも、蘇ちゃんとまた会えたなら、彼女に教えよう。街も大したことはなくて、全部が非現実的で、まるで子供の頃の僕が何度も見た夢のようだと。


夢の内容はいつも違っていて、同じなのは、はっきりと聞き取れない歌が響いていることだった。夢が覚める時に、声が僕に話しかけた。


“あなたは忘れられた川の水滴。あなたは戻らねばならない。”




概要編集

SCP-CN-994は中国の███村で発生する異常現象の総称。この村の面積は1.7km²で、居住人口は約100人。

SCP-CN-994は強力な認識災害である。この村に侵入した人はSCP-CN-994に感染し、次第に重度の失認、解離性同一性障害、雪視症、譫妄、失語症等を発症する。つまり村民は既に全員SCP-CN-994に感染している

更に、SCP-CN-994の具体的な内容を含む所々が[認識災害削除][ロッキングプロトコル]等で閲覧できないようになっている。即ち、村に入らなくとも村に関する情報を見聞きしただけでも感染するというとてつもなくアブない物。記憶処理も有効な解決手段ではないと判断されている。

特別収容プロトコルも村の周辺3kmを閉鎖し、「川の氾濫で進入禁止」というカバーストーリーを流布、侵入した人は構わず終了させる、SCP-CN-944から得られる情報は信憑性の低いと見做す(███村に似た情報でも、███村に関する情報と認識されなければOKということか)、極めてガッチガチのセキュリティ。


内外トリガーを流出させるなという意向が垣間見える。



補遺編集

SCP-CN-994の担当であるKg^U0&ki研究員の録音レポートや日記、インタビューが記載されている。(名前が文字化けしている理由は不明)

因みに、上記の文章はインタビューの一部。


Kg^U0&kiはとある農村の出身だったようだ。

しかし近年、中国の近代化によって地方の人々は見知らぬ城市に流入し、それまでの記憶は砕けて消えていった。

彼も例外ではなかった。ただ、蘇という幼馴染がいたこと、皆が歌を歌っていたことは覚えている。その光景が夢の中で毎日のように目にしたかららしい。



歌の内容について、少しづつ思い出している。一部ではあるが「少年の身を濯(すす)ぎ沃(そ)ぐ。忘郷是れ何処か。一に水一に前塵(ぜんじん)」という歌詞だったらしい。

ただ、これが"本物"であるかは分からない。もしかしたら、彼の空想に過ぎないかもしれない。

思春期真っただ中の13歳、夢の背後のあるかも分からない真相を明らかにしたがっていた。まるで忘れてはいけない"何か"があったようだが、特に新しい手掛かりは貰えずに依然夢の中で「あなたは忘れられた川の水滴。あなたは戻らねばならない。」と話しかけられるだけだった。



彼は自分が分からなくなっていった。自分探しをするために、哲学的に考えていくようになった。

模索しているうちに、庭にある錆びた自転車を思い出した。家が恋しくなっていた。


即ち忘川の水たり。少年の身を濯ぎ沃ぐ。

忘郷是れ何処か。一に水一に前塵。

前塵思議し難し。無量思聞し難し。

我は一切の法を聞く。即ち諸世人を濯ぐ。


誰ぞ忘川の水なるか。我に流亡人を遺る。

大城は梵心の内。卿卿已に恩を承る。

須弥の下にて恩を承る。元功の滅存無し。

五蘊悉く事に従ふ。法筵終に焚るを示す。


我は忘川の水たり。十載一沾の布。

却灰ぞ飛びて積もる後。誰と悲欣を問はん。

亦た苦集滅無し。亦た如是聞無し。

一切の法を示現す。川に帰し一真に帰す。


―――ん?ちょっと待て、何故急に歌詞の全てを思い出している?



Kg^U0&kiは13歳の頃、親と共に都会に引っ越すことになった。夢はその村に置いてきてしまった。

平凡な学生生活を送ることになり、何かを追求したい欲求は消耗した。

25歳になってSCP財団に就職。何を失ったのかは分からないが、昇進、転勤して面白味の無い人生を歩んでいた。

しかし、とある夜に蘇がKg^U0&kiの元を訪ねてきた。彼女は幼いころの面影を残しており、あの後で、彼の全てが変わった。

そして彼女は、彼にこう語った。

「あなたは忘れられた川の水滴。あなたは戻らねばならない。」と。


―――あれ?その台詞、夢の中で、同じ人に言われていた言葉だったよね?


ここで、録画記録が掲載されている。内容はバラバラであるが、どれもSCPに関する映像である模様。

しかし最後の村落の映像記録にてアクシデントが発生。なんと[認識災害削除][ロッキングプロトコル]を突破され、SCP-CN-994が収容違反。具体的な内容が曝露されてしまった



気が付いた? あなたの今の生活は偽りだと気が付いた?


あなたが家を離れてからもうずいぶん経った。故郷の記憶はあなたの脳内に沈んで埋もれてしまった。彼らはあなたが放浪者、故郷を離れた迷子だと思い出して欲しくはない。


あなたはSCP-CN-994を覚えている?






そう、Kg^U0&ki研究員は既にSCP-CN-994に感染していた。






そして、下にスクロールしていくと、報告書の殆どが削除され、「あなたは忘れられた川の水滴。あなたは戻らねばならない。」の文字が残る。

そして補遺の最後には、新たに感染した閲覧者=あなたのインタビュー記録が追加されていた…(因みに、インタビュアーの名前はログインすると表示されるようになっている)


即ち忘川の水たり。少年の身を濯ぎ沃ぐ。

忘郷是れ何処か。一に水一に前塵。

前塵思議し難し。無量思聞し難し。

我は一切の法を聞く。即ち諸世人を濯ぐ。


誰ぞ忘川の水なるか。我に流亡人を遺る。

大城は梵心の内。卿卿已に恩を承る。

須弥の下にて恩を承る。元功の滅存無し。

五蘊悉く事に従ふ。法筵終に焚るを示す。


我は忘川の水たり。十載一沾の布。

却灰ぞ飛びて積もる後。誰と悲欣を問はん。

亦た苦集滅無し。亦た如是聞無し。

一切の法を示現す。川に帰し一真に帰す。



この事態に財団が見逃すはずもなく、財団情報安全管理システムからの通知は



な し 。



「SCP-CN-944からの情報は信頼できない」という対抗手段が仇となり、収容違反に気付いていないのだ。…財団よ、本当にこのプロトコルで大丈夫なのか…?


今日もどこかで、故郷を偲ぶ者がいる…


関連SCP編集

  • SCP-2316:とある湖に浮いている死体の集合。「みんなが君を待っている。湖に戻るんだ。」という認識災害を持った実体を派遣させ増殖していくオブジェクト。財団と接触した結果、報告書すら認識災害を持つようになってしまった
  • SCP-3519:「2019年3月5日に世界の終焉が迫るため、その日までに自殺しなければならない」という強迫観念を起こすミーム災害。感染経路は「その情報を見聞きする」だけという凄まじい緩さ。
  • SCP-444-JP:見ただけで餌食になってしまう認識の鳥。実は上記の映像記録でSCP-444-JPのものと思しき描写がある。


余談編集

最初にも記述してあるが、この記事は削除された「みつけたよ」に代わって記載された。その際、各所に旧記事のオマージュがある。



関連タグ編集

SCPオブジェクト 故郷

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