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概要

ハイビジョン(英:Hi-Vision)とはNHK日本放送協会)のNHK放送技術研究所が開発した高精細テレビ映像システムである。

既存のテレビ放送から解像度の向上や画面のワイド化を行い、より美しく迫力のあるテレビ放送を世界に先駆けて目指した。


数十年かけてアナログテレビ用に開発されていたが、一般向けの放送が始まったと同時にデジタルテレビの波が押し寄せ、イマイチな結果で終わってしまった。


しかし関連する研究や規格は後の標準規格の礎となり、無駄に終わったわけでは無かった。


この記事では主にアナログ時代のハイビジョンについて解説する。


規格詳細

有効走査線1,035本既存のテレビは430本程度でありほぼ二倍
アスペクト比16:9当初は5:3であったが、映画業界からの要請で変更した
フィールド周波数60.00Hzヨーロッパの規格との互換性を意識したが、逆に日本とアメリカで使っていた規格との互換性に難があった

沿革

このシステムの歴史は非常に古く、1964年の東京オリンピックが終わった直後に研究が始まった。オリンピックまでの当時のテレビでできる事をやり切ったNHKが「次のテレビ」になるモノとしてスタートした。


NHKはまず、人間の視覚と映像の関係などの研究を行い、

  • 視界の中に占める画面の割合を増やすと人間は好ましく感じる
  • 画面を横長にすると人間の感じる迫力は大きくなる

などの成果を得た。


この成果をもとに要求される技術が定められ、以下のようになった。

  • 視界上の画面の割合を増やすためには、視聴者と画面の距離を縮めるのが有効であり、これを実現するには高解像度の映像が必要 (この当時のテレビは解像度の低さから遠くから見るのが一般的だった イメージとしてはipadを1m先で見るようなもの)
  • 既存のテレビよりも横長の画面には、新しい画面とビデオカメラが必要

その後NHKは日本の家電メーカーなどと協力しながら研究開発を続け、80年代までにハードウェアの完成、そして80年代に入ってからは実際の撮影を行うようになった。


84年には映像と音声の情報を圧縮して送信する「MUSE」というシステムが完成し、89年に衛星放送を介して一般家庭向けの試験放送が始まった。


90年代になると「次世代テレビ(HDTV)」の実現の機運が高まり、国際標準を決めることになった。

NHKはハイビジョンを世界統一の標準として推したものの、諸外国の規格とすり合わせを行った末にハイビジョン技術の一部を採用という形で世界統一とはいかなかった。


90年代中ごろになると次世代テレビで巻き返しを図りたい欧米がテレビのデジタル化を急速に進める。

日本でもデジタルテレビの規格が作成され、これとハイビジョンが統合。「デジタルハイビジョン」として2000年から衛星放送で放送が開始された。


そして地上波もデジタル化することととなり、2003年に地上波でも「デジタルハイビジョン」による放送が始まった。


2020年代の現在では日本のテレビ居が放送しているテレビ放送はほぼ全て「デジタルハイビジョン」相当であるため、NHKも特段ハイビジョンという言葉を使うことも少なくなった。


ちなみにMUSE形式によるアナログハイビジョン放送は2007年に停止された。


規格争い

開発と並行してNHKはこのシステムを1974年に業界の規格として提出しており、80年代に完成したMUSEをHDTVの世界標準にすることを狙っていた。

当初は完全に日本の独走状態であり、次世代テレビの規格として本決まりしかけていた。

しかし、既存のテレビ規格との兼ね合いや、各国が開発した後発の高精細規格、そして政治的な摩擦により議論が続き、結局他国の規格とごちゃ混ぜになった「Rec. 709」という名前の規格が作られた。


種類

アナログハイビジョン

本来のハイビジョン。60年代から研究され89年に試験放送開始。2007年停波。


テレビも専用、受信機も専用、さらに衛星契約も必要で、放送開始当時は視聴するのに百万近いコストが必要であり、一般家庭はおろは一逸家庭ですら視聴は難しかった。


放送は衛星放送BS9チャンネルで行われ、試験放送→実験放送→実用化実験放送→BSデジタルのサイマル放送 と進化していった。

最初はNHKの番組だけであったが途中で民放も参加した。

MUSE

アナログハイビジョンの生の映像は情報量が大きく、そのままでは電波の帯域を大量に使用していしまい電波で放送するのが非現実的だった。

そこで、MUSEという技術で映像を圧縮して放送する方式がとられた。


圧縮された情報は各家庭で解凍を行う必要があり、このために「MUSEデコーダー」という専用の受信機が必要だった。


MUSEによる圧縮をかけると画質の劣化が発生するため、家庭での視聴では本来のハイビジョン映像より劣ったものになってしまった。


デジタルハイビジョン

映像をデジタル化したハイビジョン。名前は同じだが、映像の中身は上記のRec.709国際標準規格に改められている。

デジタル化した恩恵と、圧縮方式をMUSEからMPEG-2に変えたことで画質がさらに良くなっている。


チューナーだけなら当初から10万前後で販売され、受信して写すだけなら大幅に安くなった。

2020年代現在ではコモディティ化しておりテレビと言えばこの規格で見るのが一般化している。


主に1280×720をハイビジョンと1920×1080をフルハイビジョンともと呼ぶが、地上デジタル放送で使用される1440×1080などもハイビジョンとも呼ぶこともある。

詳細は


スーパーハイビジョン

世界標準をとれなかったNHKが再挑戦とばかりに始めた「次世代のハイビジョン」95年に研究開始

上記のデジタルハイビジョンの16倍の画素数(7680x4320)で撮影された映像であり、現代では8Kと呼ばれる部類。NKKはこれが人間の視覚能力の限界であるとしている。


実際に8Kテレビが一般向けに発売され、2016年には衛星で試験放送にまでこぎつけている。

が、あまりにも先に行き過ぎた規格であり、撮影、編集、再生にかかるコストが高すぎるあまりNHKの独壇場になっており、全く普及していない。


8Kと平行して3840x2160の4K放送も行われており、こちらはそれなりに環境も整備されている。


録画・映像ソフト

ハイビジョン映像に対応した記録メディアもいくつか開発され、録画に対応したり、映画などの販売に利用された。

ハイビジョンLD

上記のMUSE方式の圧縮映像を納めたレーザーディスク。主に映画やデモ映像の販売に使われた。再生にはMUSEデコーダーが必要。

W-VHS

アナログハイビジョンの録画用に作られたVHS

MUSEを解凍したあとの映像本体を録画する形式だった。

HDVS

ハイビジョンを放送するにあたって、放送局が録画編集をするために開発さた業務用ハイビジョン撮影&記録システム。

オープンリールのビデオテープやレーザーディスクで保存されている。

MUSEによる圧縮を行っていないため画質が劣化しておらず、これが本来のハイビジョンであると言える。

業務用品であるため生産数が少なく、オーパーツ的性能から一部のマニアに人気である。


遺産

アナログハイビジョンは登場当初は先進的ではあったが時代の波に飲み込まれてしまった。

しかし早期から規格を固めていたのが功を奏し、NHKなどには現在でも80年代、90年代の風景や番組をハイビジョンで高精細に記録した貴重なマスターテープが存在している。


これらは偶にNHKで素材として放送されることがあり、その生々しい臨場感で現代人の時代感をぶち壊してくれる。


また、現在デジタル機器で使われている16:9というアスペクト比は、ハイビジョン出身でもある。


名称

ハイビジョンは元々「高品位テレビ」という名称で呼ばれており、NHKの技術資料でもそのように表記されていた。

しかしこれを一般に普及させるにあたって「既存のテレビは低品位なのか!」というクレームが予想されたため、普及名称として「ハイビジョン(Hi-Vision)」が考案された。


しかしこれは和製英語の造語であり、そのままでは英語圏で使いづらいため、規格申請などには「High-definition television」(高精細度テレビジョン)という名称を使っていた。

海外ではこれが馴染み、HDTVと略され使用された。


参考動画

SONYが開発していたHDVSのデモ映像


放送前なのでMUSE圧縮が行われておらず、ハイビジョンが本来持っていた精細度をそのまま残している。1990年の映像でありながら恐ろしいほどの臨場感である。


動画の上部に常に黒帯が入っているのは1920x1035という解像度を採用したアナログハイビジョンならでは。



未圧縮HDVS(最初)とMUSEによる圧縮をかけた映像(二つ目)の比較

MUSEの画質劣化を実感することができる。


関連タグ

テレビ 技術 放送 映像 デジタル放送 地上デジタル放送 地上アナログ放送 衛星デジタル放送 衛星アナログ放送 ビジョン 和製英語 造語

1920×1080(1080p) 1280×720(720p) 7680×4320 8K 8K4K 4K 4K2K 2K

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