初代エアロスター
1984年、三菱自動車工業製のMPシリーズをフルモデルチェンジ、先にデビューしていたエアロバスに次いで車種ネームが与えられた。名称は市街地路線用バス(シティバス)の「星」になることを願ったものとみられる。ボディスタイルはそれまでのある意味古めかしいモノコックボディから近代的なスケルトンボディに一新された。(新呉羽製は先にスケルトンに変更)
また、フロントマスクは左右非対称の、乗降口側にセーフティウィンドウを設けたスタイルとなった。
トランスミッションは、フィンガーコントロールミッションの5速マニュアル (FCT) で、オプションで機械式オートマチックトランスミッション (MMAT) が設定されていた。また、自家用向けのタイプ以外は、機関直結式冷房装置が標準装備となった。
車体
メーカー純正の車体は三菱名自(大江工場)製のエアロスターMと呉羽自動車工業製(現三菱ふそうバス製造)のエアロスターKの2種類が存在する。両者は前面・後面や屋根カーブの形状が異なり、K型は丸みを帯びた嫌味のないスタイル、M型はK型に比べて直線的で近代的なスタイルとなっていた。
1993年には、両社の車体設計がM型に統一され、後に大江、呉羽の2箇所製造体制から三菱自動車バス製造(旧呉羽)に一本化された。
三菱以外のコーチビルダーでの架装は西日本車体工業が西日本を中心に、富士重工業が東日本を中心に見られた。ただし富士重工車体は導入した事業者が限られている。
そのほとんどは路線バス用として導入されたものだが京都交通ではトイレ付き高速バスにこの初代エアロスターを用いていた。現在は親会社の日本交通から導入した車両によって置き換えられ全廃となった。
型式一覧
P-MP218/618系
1984年、それまでのK-(及びP-)MP118/518系を全面モデルチェンジして誕生。MP218系がリーフサス、MP618系がエアサスである。
エンジン型式こそ6D22で変わらなかったが、標準出力車で225馬力に出力が上がり、エンジン音もMP118/518系と異なったものになっている。更にターボエンジン搭載車も、改造扱いで途中から追加設定された。
1988年にはマイナーチェンジが行われ、内装がエアロバス同様茶色系から灰色系に変更された。運転席周りではシフトレバーのインジゲータもデジタル表示に変更され、タコメータの下部に配置された。
U-MP218/618系
1990年の平成元年排出ガス規制適合で、U-MP218/618系に変更されたが、フロントバンパーのフォグランプが丸形から角形になったこと、ターボエンジン搭載車の出力がわずかに増力された以外大きな変更点はない。
KC-MP217/617系
1995年の平成6年規制適合で、KC-MP217(リーフサス)/617(エアサス)系となった。エンジンが出力240馬力の6D24に変更されている。
フルモデルチェンジを計画していたため1996年9月に製造を終了したが在庫59両を名古屋市営バスが購入している。西工ボディ及び富士ボディを架装するものは、シャーシ供給という形で1997年まで製造が続けられた。西工ボディの大半は58MCでの架装になるが、ごくわずかだが96MCを架装した車両が存在する。
U-MP628系、KC-MP627系
都営バスなどが導入した車いす用リフト付きのバス。全車呉羽・MBM製で1993年以降もエアロスターKデザインだった。
都バス導入車は後継のノンステップ車などに置き換えられ退役した。地方での活躍も2005年以降の都バスの方針転換により絶望視されている。
都市型超低床バス
1991年東京都交通局は東京都庁が現在の庁舎に移転したのを機に、新宿駅西口と都庁周辺を循環するシャトルバスを運行開始。この時床面高さを550mmに下げたワンステップ車を4両導入した。試作扱いのため型式はMP6Xだった。
京急型ワンステップバス
1989年、前年に日野自動車と京浜急行電鉄が共同開発した京急型ワンステップバス普及のため新呉羽自工が生産に応じたのが最初である。
京急型ワンステップ車とは前扉から中扉までの床面高を650mmに抑えて各扉のステップ数を1段にし、中扉から後ろを1段嵩上げすることで、後車軸や駆動系などをツーステップ車と共通化し、安価なワンステップ車製造を目的とした車両である。
当時の京浜急行は神奈川県内の営業所に日野製一般路線車を集中配備しており、都内営業所にワンステップ車を入れる場合は他メーカーの対応が絶対必須だったためである。
MBECS 畜圧式ハイブリッドバス
地上設備不要の蓄圧式ハイブリッド機構を搭載した低公害車として1993年に発表。1995年にアイドリングストップ機構と酸化触媒マフラーを装着してKC-MP237/637系となり、1997年には2代目エアロスターにも設定された。運転席の計器パネル上部にエネルギーゲージが設置されているのが運転席周りのディーゼル車との違い。
同様の畜圧式ハイブリッド車はいすゞ・キュービックのCHASSEと日産ディーゼルUAシリーズのERIPが存在するが、期待されたほどの省エネ効果を発揮できなかったこと、ハイブリッド機構の小型・軽量化や移設が難しく低床化に向かないこと、中期安全ブレーキ規制への適合も難しいなどの理由で開発が中止された。その後ハイブリッド機構を停止、撤去した事業者が多い。
2代目エアロスター
1996年9月販売開始。当初は先代のエアロスターと区別するためにニューエアロスターの呼称が用いられたが、初代の老朽廃車が進むに連れてこちらがエアロスターと呼ばれるようになった。
ラインナップにはワンステップバスと、自家用及び高速バス向けのツーステップバスのほか、1997年には国産初の本格的なノンステップバスの発売が開始された。
2014年には18年ぶりにフロントデザインを一新した後期QKG-MP35/38系が販売を開始した。
型式一覧
KC-MP系
1996年9月にエアロスターMP217/617系シリーズをモデルチェンジする形で登場した。それまで三菱大型路線バスは、三菱自動車名古屋製作所(大江工場)と三菱自動車バス製造(呉羽)の双方で製造されていたが、今回から三菱自動車バス製造での製造に一本化された。
発売当初の型式はワンステップ・ツーステップのみの設定であり、エアサスがMP717系、リーフサスがMP317系となった。
運転席まわりの計器類は長距離バスであるエアロバスと共通になったが、エアロバスに先駆けて衝撃吸収型ステアリングホイールや警告表示部分にLED式表示灯を採用したり、エアロバスには標準装備のバッテリー電流計が省略されるなどの細かな違いがある。
1997年には国産初の本格的ノンステップバスが追加設定された。エアサス車のみの設定で、高出力ターボは選択できなかった。ホイールベースはK尺とM尺が設定された。なお三菱ではノンステップバスのことを「ノーステップバス」と呼称する。エアロスターのノンステップバスは他社の同様のバスと比較して中扉より後側の通路も高さが抑えられている。これはエンジンからデファレンシャルギアに至るまで
の動力系を車体右側に寄せて、ギアボックスを斜めに寝かせることで実現している。故に足回りの構造が比較的単純なツーステップ車やエルガをメインに扱ってきた整備士が見ると「なんじゃこりゃ?!」と驚くことに...
型式は以下の通り。WBはホイールベースの略である。
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
エアサスワンステ・ツーステ | KC-MP717K | KC-MP717M | KC-MP717P |
リーフサスワンステ・ツーステ | KC-MP317K | KC-MP317M | KC-MP317P |
ノーステップ車 | KC-MP747K | KC-MP747M | 未設定 |
KL-MP系
2000年5月に新たな排ガス規制適合のためにエンジン周りが改良された。このため見た目に大きな変化はないが、コモンレール燃料噴射方式やクールドEGRの採用が行われたほか、アリソン製のボタン式ATが新規に設定された。
エンジンは6M70系で、アイドリングストップシステムが標準装備された。このほか、ステアリングホイールも同年にマイナーチェンジしたエアロバスKL-MS8系と同等のものに変更され、駐車ブレーキもホイールパーク式に変更されている。
外観から区別することは困難に近いが、車内のドア下部に設置されている製造銘板の製造年月、ならびに駐車ブレーキで判別出来る。なお名古屋ガイドウェイバス向けにリフト付ツーステップ車が納車されている。2002年には平成17年東京都ディーゼル規制に対応した低圧ターボ付エンジン車が追加された。
型式は以下の通り。
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
エアサスノンステップ | KL-MP37JK | KL-MP37JM | |
エアサスワンステ・ツーステ | KL-MP35JK | KL-MP35JM | KL-MP35JP |
リーフサスワンステ・ツーステ | KL-MP33JK | KL-MP33JM | KL-MP33JP |
PJ-MP系
2004年3月から新短期規制適合車であるPJ-MP系が発売された。KL代規制で採用された環境技術に加えて「ブローバイガス吸気還元システム」や「連続再生式DPF」が採用された。
エンジンはKL-MP系と同じ6M70系であるが、全モデルがターボ化された。
このモデルからリーフサスの設定が無くなった。型式は以下の通り
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
ノンステップ | PJ-MP37JK | PJ-MP37JM | |
ワンステ・ツーステ | PJ-MP35JK | PJ-MP35JM | PJ-MP35JP |
KL-MP系と外観は酷似しているがバックランプがリアバンパーからボディに移設されているので判別できる。
PKG-MP系
2007年9月に発売された平成17年排出ガス規制及び平成27年重量車燃費基準適合車。
このモデルから日産ディーゼルと三菱ふそうが路線バスの製造において業務提携を開始したことによりラインナップが両者で共通化され、ディーゼルノンステップ車は日デのスペースランナーRA及び、そのOEM供給車である「エアロスター-S」に統一され、ディーゼルノンステップ車は三菱側で製造されなくなったが、後述のエコハイブリッドに関しては製造が続けられていた。
そのため当初はワンステップバスとツーステップバスのみの製造だったが、従来のMP系ノンステップとの共通性を望むユーザーからの要望、及びエアロスター-Sの製造数増加に伴う納期遅滞解消のため三菱側はワンステップ車をベースにしたノンステップ車を2009年4月にP尺を除いてラインナップに追加した。このノンステップ車はワンステップ車とノンステップ車の折衷型ではなく、完全なワンステップ車ベースである。その外見からバスファンからはゲテノンと呼ばれている。
※こちらのイラストはLKG代規制のゲテノンである。
なおPKG-MP系は日デ側にもスペースランナーAとして供給されており、外見上ではほとんど区別がつかない。
型式は以下の通り
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
ノンステップ | PKG-MP35UK改 | PKG-MP35UM改 | |
ワンステップ | PKG-MP35UK | PKG-MP35UM | PKG-MP35UP |
自家用ツーステ | PKG-MP35UM | PKG-MP35UP |
LKG-MP系
2010年5月に発表された、平成21年排出ガス規制及び重量車燃費基準適合車。
本型式までUDトラックスにスペースランナーAとして供給されていたが、2011年4月初旬に供給を終了した。
エンジンがエアロミディに搭載されていた6M60型に変更されたことで排気量が小さくなっている。出力は270馬力。また、再生制御式DPFと尿素SCRシステムを組み合わせたBlueTecテクノロジーを採用することにより、NOx、PMを大幅に低減している。見た目はPKG-MP系とほぼ同じ。
全車種にアリソン製の6速ATとABS、パワータードブレーキが標準装備され、5速MT車が廃止された。
ノンステップ車は引き続きゲテノンだが、ワンステップの改造扱いだったPKG代と異なり、正式に型式認定されMP37形式が復活した。
型式は以下の通り
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
ノンステップ | LKG-MP37FK | LKG-MP37FM | |
ワンステップ | LKG-MP35FK | LKG-MP35FM | LKG-MP35FP |
自家用ツーステ | LKG(LDG)-MP35FM | LKG(LDG)-MP35FP |
QKG-/QDG-MP35/37系(前期)
2012年7月発売。LKG-車同様に平成21年排出ガス規制に適合しており、さらに自家用ツーステップ仕様の一部を除き、重量車燃費基準適合車となっている。
LKG代規制からの主な変更点は以下の通り。
- 2012年7月に施行される安全規制に対応して乗員の安全性を向上
- クラス初のブレーキオーバーライドシステム(※)を標準装備して、誤操作を防止
- 運転席に3点多重感知式ELRシートベルトを採用。オプション扱いで2点式シートベルトも設定
- ツーステップバスの客席に、安全性が高い多重感知式ELR2点式シートベルトを採用。ただし最前列のみELR3点式となる
- 停車補助装置を搭載して乗降時の安全性を向上
- フォグランプを従来車の黄色からSKG規制以降のエアロミディと同様の透明色に変更
- 尿素水タンクの容量を40Lまで増加
エンジンや排出ガス後処理装置、ミッションはLKG代規制と同様である。
型式は以下の通り
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
ノンステップ | QKG-MP37FK | QKG-MP37FM | |
ワンステップ | QKG-MP35FK | QKG-MP35FM | QKG-MP35FP |
自家用ツーステ | QKG(QDG)-MP35FM | QKG(QDG)-MP35FP |
QKG-/QDG-MP35/38系(後期)
2014年6月にマイナーチェンジが発表され受注が開始された。
変更点は以下の通り。
- 18年ぶりにフロントデザインを一新
- 路線バスとして初めて規格型ヘッドランプを廃止しディスチャージヘッドランプを搭載
- 反転式スロープ板の採用
- 都市型座席配置で前向き優先席の設置
- 上記の前向き優先座席の為に追いやられた燃料タンクはフロント左タイヤハウス上に設置
後者2点はノンステップ車のみの変更点である。
なおフロントマスクがフルモデルチェンジされても、ノンステップ車がゲテノンであることに変わりはない。
型式は以下の通り。後期QKG系からノンステップ車とワンステップ車、自家用ツーステップ車でホイールベースが異なる。
WB4.995m | WB5.550m | ||
ノンステップ | QKG-MP38FK | QKG-MP38FM | |
WB4.8m | WB5.3m | WB6.0m | |
ワンステップ | QKG-MP35FK | QKG-MP35FM | QKG-MP35FP |
自家用ツーステ | QKG-MP35FM | QKG-MP35FP |
オーストラリア向け輸出仕様車
オーストラリア向けの路線バスとして、2013年7月にエアロスターノンステップをMP300の名称で輸出することが発表。現地の安全規制などに適合するよう仕様変更が行われ、シャーシは国内向け同様、K尺(MP37FK)、M尺(MP37FM)がラインナップされる。
国内仕様からの変更点は以下の通り
- 車椅子スペースへの車いす固定用ベルトの省略
- 車いす通過のためタイヤハウス間の幅を40mm拡大
- 前部の行き先表示機脇にマーカーランプとウィンカーを追加設置
- 後部にウィンカーとブレーキランプを追加。逆に側面のウィンカーを省略
- 通常の非常口に加え、脱出用ハンマー、天井非常脱出口を追加
- その他各種表記を英語に変更
2014年に国内向けQKG-MP系はリニューアルがされたがオーストラリア向けは今のところ従来仕様のまま輸出が続いているようである。
エアロスターエコハイブリッド
2007年9月に販売を開始したシリーズ式ハイブリッド機構を搭載するハイブリッドバス。発電用エンジンにマイクロバスのローザが積んでいるものと同じものを採用し、回生ブレーキを装備する。仕組みとしては発電エンジンで生み出された電力でモーターを駆動し、減速時には回生ブレーキでバッテリーを充電する。このため走行音は電車に近い。
バッテリーは日立製作所、モータとVVVFインバータはシーメンス、モータ減速機はFLENDERが製造したものを装備している。
2010年に製造が中止された。
導入した事業者でも構造が複雑で故障が多いこと、詰め込みが効かないことなどが嫌われ、特に名鉄バスでは基幹バス用として2008年から31台を導入する計画だったのが24台に縮小され、基幹バスを担当する営業所から津島、岡崎などの名古屋から離れた営業所へと転属させられ、最終的に全車両が廃車となった。
エアロスターMM・ニューエアロスターMM
1993年から2004年8月まで製造・販売していた9m大型路線バス。9m大型車は車体幅を大型車並の2.5mに拡大しながらもシャーシの長さを中型車並の9mとした折衷型。
元々9m大型車というカテゴリ自体、需要の少ないニッチ層向けの市場で、更にこの9m大型車というジャンルではいすゞ自動車が最大のシェアを持っており、路線向けで導入した事業者は北海道中央バス、川崎鶴見臨港バス、豊橋鉄道、松江市交通局などに限られる。
更にバリアフリー仕様のノンステップモデル、ワンステップモデルが設定されなかったために2002年に路線モデルの設定が消され、残った自家用モデルも2004年にラインナップから姿を消した。