概要
「舞台の公開録画」スタイルを取ったヒーローショー形式の特撮番組で、「ヒューマンに変身する主人公がピンチになると会場に来ている子供達、テレビを見ている視聴者が変身するために必要なヒューマン・コール(声援)を送り、観客がヒューマンサインを回すことで会場の後方から飛び人形が飛んできてヒューマンが現れる」といった結構面倒な変身プロセスをしている。
当時絶大な人気を誇っていた仮面ライダーに対抗するために制作された作品で、キャラクターデザインに成田亨、ナレーターに山田康雄、主演に後に宇宙鉄人キョーダインとなる夏夕介、出演陣に田中好子や八代駿などかなり気合の入った作りとなっていたが、特殊効果のない舞台演出がヒーローものに慣れ親しんだ視聴者に受け入れられず、主人公の体操教師という設定が上手くいかせずに1クールで打ち切りになった。
小学二年生で連載されていた漫画版は最終回が2ページしかないというリアルソードマスターヤマト状態であった。
さらに番組がVTR収録のため、ビデオテープ再利用のため再放送された時にマスターテープが別の番組に上書きされてしまい、ソフト化の目途も立っておらず長い間幻の作品と呼ばれていた。
そのため児童誌および特集を組んだ『宇宙船』誌のバックナンバーか、成田亨の著書以外は画像などの記録が残っていなかった。(写真も成田亨蔵)
だが2009年、番組の放送終了後にデパートの屋上で行われたヒーローショーをアマチュアカメラマンが撮影しており、その映像を収録したDVDが発売された。
あらすじ
大学の体操コーチ岩城淳一郎は、子供たちの体を鍛えるために全国の小学校を回る旅に出る。
彼の正体はヒューマン星からやってきた異星人で、地球を狙う侵略者フラッシャー軍団の脅威を察知し地球に潜伏していたのだ。
そしてついにフラッシャー軍団の侵略が開始。淳一郎はヒューマンに変身し、新聞記者の星山ルミ子、カメラマンの平井安兵衛、そして淳一郎の弟でヒューマン2号の淳二郎と共にフラッシャー軍団に立ち向かう。
余談
- 企画はウルトラマンやウルトラセブンなどで美術を担当した彫刻家、画家の成田亨自身の設立したモ・ブル。舞台で光り輝くヒーローを表現するためステンレスでマスクを作成したり、軽くて巨大な怪獣を登場させるために風船を使用するなどの工夫をおこなった。
- 舞台劇という性質もあったのかもしれないが、登場怪獣のデザインはウルトラ怪獣よりもシュールでグロテスクなものが多かった。ほとんどの怪獣は改修され『行け!グリーンマン』にも登場している。
- ヒューマン役のオーディションには松田優作も参加していた。もし続いていたら武闘派のヒューマン3号が出ていたかもしれない!?
- アニメ『ケロロ軍曹』の中でも屈指のバカ回、166話「突撃!ウエットルキングであります」では、このサインを回す話のパロディが登場する。その他このエピソードはちびっ子どころかお父さん世代でも匙を投げるような特撮のパロディがギュウギュウに押し込められている。
- 漫画『しあわせのかたち』の、ナムコの舞台劇がモチーフのアクションゲーム『ワンダーモモ』のパロディ回「ワンダーオオ」では、作者の桜玉吉が直撃世代であったため、変身のために”ヒューマンサイン”ならぬ”ワンダーサイン”が回されるという描写があった。なお、このシリーズ連載中桜の元には大量の「ヒューマン」関連資料が読者から贈られたようであり、「ヒューマン博士になった」とのコメントも見られる。
- 漫画家唐沢なをきは劇団四季の『ライオンキング』を観た際、当時このノウハウがあったら…と想いを巡らせた。
- 2014年から2015年にかけて富山、福岡、青森の3都市の美術館で開催された『成田亨 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点』展では、デザイン画と登場怪獣ブランカーの像が制作され展示された。このとき発刊された『成田亨画集』でも見ることができる。