人智統合真国SIN
じんちとうごうしんこくしん
永久に平穏を享受する。
そこは安寧と調和が続く泰平の大地、幸福への隷属を賭して叛逆の暁星は均霑に輝く。
全ては過ぎし日の夢――求め続けた、たった一つの祈り。
概要
ロストベルトNo. | Lostbelt No.3 |
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分岐基点時代 | B.C.0210? |
異聞深度 | E |
場所 | 秦・咸陽およびその郊外南部 |
キーキャラクター | 紅の月下美人 |
クリプター | 芥ヒナコ |
章クリア報酬 | 概念礼装「不死鳥は大地に」 |
シナリオ担当 | 虚淵玄 |
第2部『Fate/Grand Order - Cosmos in the Lostbelt -』第三シナリオ。副題は「紅の月下美人」。
3章プロローグ実装後はタイトル名が「人智統合真国シン」となっている。理由・詳細は不明。
ストーリー
突如として目の前に広がった嵐の海で、沈みゆくシャドウ・ボーダーを救ったのは彷徨海より発せられた通信。
招かれた先で待っていたのはシオンと名乗る独りの錬金術師だった———。
その協力で新たな基地を手にしたカルデアを襲った暗殺者の毒牙。
命の危機に瀕した2人を救うべく、解毒薬作成の手がかりを求め一行は第3の異聞帯へと向かう。
そこは国家間の争いを終了させ、永世の平和を獲得した天下泰平の世だった。
過酷さはなく、悲壮さもなく、また脆弱さもない理想の統治。
穏やかな時間が流れ、人々は何一つ不自由のない生活を送っていた。
だが———
第三異聞帯
異聞帯の王でもある中国のとある帝が不老不死を獲得し、統治の果てに世界統一を成し遂げた世界。
民たちは己の居住区を決めるような自由こそないが、平和に農作業に従事し、それこそ戦という概念を完全に忘れている。すなわち、世界平定が完全に成し遂げられた世界なのである。
だからといって、ロシアのような過酷なディストピアでもなければ、北欧のような人間牧場ほどの過剰な管理社会ではない。
むしろ、自然環境も破格のレベルで安定しているし、科学・農業・医学も飛躍的に発展し、満ち足りた民にとっては貨幣経済になどもはや頼る必要が無く、病や飢餓からも完全に解放されており、生きるうえでの苦しみが存在しない意味ではユートピアと言って良いだろう。
また、万が一に備え、帝は過去に偉業を為した人物をすべて冷凍保存しており、必要に応じて蘇るように管理しているなど、全く抜かりのない、ある意味では真に平定された世界と言える。
だが平定されすぎた世界ゆえ、なんの波風も立たず、これが歴史の行き止まり=剪定事象となった原因のようだ。
2部における剪定事象では初の「上手く行き過ぎたパターン」である。
この異聞帯を基準にすれば、汎人類史こそが過酷な歴史。
ただし、病を根絶し肉体をも強化する万能薬こと「下賜」の薬は、確かに風邪一つ引かなくなる薬効があることには間違いないのだが、ホルモンの分泌が一定値を割り込む=加齢による老化が進むと眠るように死ぬよう出来ている。
民を老化による苦しみから救うという意味では理想的ではありつつも、老化による苦しみを承知の上で生きるという選択はない。
考えようによっては北欧よりも遥かに完全な管理がなされていると言えよう。民は人間としての「個」を一切尊重されておらず、画面上でもモブの表情に個性がほぼ見られないという表現がされている。
したがって、ある観点でなら理想的とも言えうる世界を滅ぼすことになる主人公の気持ちの整理において、「帝から押し付けられた幸福をどう捉えるか」が影響すると思われる。
また、民は生きるうえで苦しみが一切存在しないため、何かを祈る必要が無い。祈るまでもなく満ち足りているからだ。
それがどんな影響をもたらすかというと、「サーヴァントの召喚がある種の祈りによって行われる」以上、祈る概念自体ないこのエリアでは、霊脈に霊基グラフが反応しない。何より、本物の英雄が冷凍保存されて全員生きているため、英霊などという概念がない。
世界全土を治め不老不死の力を得た帝の観点は大局的。カルデアとクリプターの争いを「自分の土地を勝手に借りていざこざを起こしているだけである」とその本質を見抜いており、カルデアとクリプターのどちらが味方になるかを中立の視点で慎重に探っている。つまり章最初の時点では、クリプターこと芥ヒナコは全く信用されておらず、コヤンスカヤへの対処も掌の上。
さらには、異聞帯を取り囲む嵐の壁についても、その外側が存在することを知っており、根本的に対処しようと異聞帯外部への接触を試みている。したがって、帝の視点で見た異聞帯の状況としては「世界全土を平定して支配していたはずが、かつての中国地域を取り囲むように嵐の壁が出現し、他の地域に支配が及ばなくなったという認識」。
自分の世界の大半が奪われたという意味では、汎人類史の視点に非常に近いとも言える。
異聞帯を攻略する側からしてみれば、やりにくいことこの上ないエリアとなろう。なぜならこの異聞帯には内患というものが存在しない。付け込むべき大きな隙が、ざっと見ただけでは見当たらないのだ。
しかし、異聞帯の王の本質からすれば、民を文盲の状態で支配していることがキーポイントになる。つまりテクノロジーが市井に伝わることは絶対にない。
民間の機械文明は中世以下であり、技術はすべて異聞帯の王が独占している。
独占し過ぎているため、必要な分しか発展しておらず、例えばシャドウボーダーの技術についてもその一側面に興味を持つのが精一杯という状況のうえ、テクノロジーを市井に普及させていない時点で小型化させる発想が全く無いことから、仮にシャドウボーダーを再現しようとした場合はよほど研究しないと弩級戦艦クラスの大きさでしか再現できないとのこと。
以上のように、世界としては極めて安定している。一方、「支配欲の権化であるはずの異聞帯の王が統治している」にもかかわらず「異聞帯としては拡張の気配がまったく無い」というちぐはぐなエリアであり、嵐の壁の外にまで目を向けようとする異聞帯の王も空想樹の存在を認識していないなど、不可解な点を持つ。
ゲームにおいて
OPで万里の長城らしき場所でサーチライトの使用されるシーンが多くのプレイヤーの疑問を招いたが、No.1開始により異聞帯の定義が明らかになり、その時代に直接ダイブする特異点とは違うものであることが判明したことで氷解した。
異聞深度はすべての異聞帯の中で最も低いが、ヒナコはある理由からこの異聞帯の王は相当に危険だと報告していた。
配信前におけるユーザー間の有力視された予想は以下の通りである。
- 異聞帯の王として始皇帝が挙がっており、英霊伝承・荊軻編によると、背部に巨大な肉塊が接続されてまともな人間の姿ではなかったらしく、荊軻の特攻で微量のヒュドラ毒を刻まれた結果、不死性を失ったという。異聞帯となったのは、この点が覆されたと予想されていた。
- 異聞帯の性質としては、特定の時代を境にから汎人類史と激しく乖離して、現在まで続いた歴史であるため、年代から伺えるのは秦の始皇帝の没年であることから、本来の始皇帝の没年がターニングポイントだと早い段階から予想されていた。
- 中国における神代の神秘として、始皇帝の晩年の悲願…すなわち神仙達が用いる不老不死の錬丹術が筆頭に来ると思われていた。また、「SIN」とは英語で「罪」を示す単語であり、何らかのダブルミーニングを考えたユーザーもいた。
上記のストーリーにもあるようにマスターが毒を受けており、その影響でマスタースキルが一時的に使用出来ない状態となっている。戦闘毎に設定された最初の数ターンが対象。
更にこの制限は最初こそ1ターンだが、シナリオの進行と共に増加し、最大で5ターンまで伸びる。
厄介な特性を持ったボスが揃っているだけにこの制限はかなり厳しいもので、本章の難易度上昇に一役買っている。
登場人物
その他
シナリオ担当は虚淵玄氏。
第2部発表当時のPVのシナリオライター陣に名前がなかったこともあり、この発表がなされたネットでの生放送では、出演者のみならず視聴者さえ開いた口が塞がらないという場面を生み出した。
番組出演者の間では「絶対に幸せにならないと思います!」(悠木碧・酒呑童子やティアマトを担当し、あちらでも主人公を担当)、「私も知ってます!」(川澄綾子・えらい目にあわされたアルトリアを担当)と言いたい放題の経験談が語られた。
更に島﨑信長に「ゴルドルフは助かるんですか?」と聞かれた悠木は「ヒロインは概念になります」と発言し、放送後このような「概念になったゴルドルフ」が描かれるというド級の珍事が発生した。
尚、生放送で発表された新規サーヴァントは蘭陵王、秦良玉、項羽の三体ほどだったが、蓋を開けてみればUMAに始皇帝(Fate)、アサシン、そして後の正月イベントで実装された李書文(アサシン)の合計7体が登場する事となった。(UMAに関してはCMに登場しているので4体発表された事になるが。)
尚、ストーリーの登場のみに終わった韓信や陳宮を含めても、現時点での2部新規登場サーヴァントの数はこの章がダントツ一位である。そこは人口一位の中国、数では負けていなかったという事なのだろうか。