- とある魔術の禁書目録に登場する魔神。本稿で解説する
- サクソ・グラマティクス著「ゲスタ・ダノールム」(デンマーク人の事績)における北欧神話の神、オーディンの別名。 → 詳細はオーディンを参照
とある魔術の禁書目録のオティヌス
CV:瀬戸麻沙美(とある魔術の電脳戦機での配役)
魔術を極めて神となった魔術師『魔神』。魔術組織『グレムリン』の象徴。
その正体は、北欧神話の主神「オーディン」。
かつて片眼を抉ってミミルの泉に捧げ、世界樹「ユグドラシル」の枝で首を吊る事により叡智を手に入れた魔術の神である。
『魔神』に到達する為のシステム的な『贄』として片眼を失っているため、オーディンの伝承通り隻眼となっている。
初登場は新約4巻。名前だけなら旧約22巻、オッレルスがアレイスター=クロウリーとの戦闘で瀕死状態にあった右方のフィアンマに素性を明かすシーン。
現状のオティヌスは魔神として完璧であるが故に「無限の可能性」を内包する。しかし、魔神の力を制御する力を宿した「彼女を象徴する神槍」を過去に自ら放棄しており、現状あらゆる物事に対して成功する確率と失敗する確率を均等に抱えてしまっている。
これが子供同士のジャンケンとしてならまだ良かったのだろう。
新約4巻で登場した際に上条の右腕を潰し、更にアウレオルス=イザード戦やフィアンマ戦と同様に切断面から現出した「上条の内に潜む莫大な力」をも容易に握り潰した。しかし、格下である筈のフィアンマとオッレルを相手に撤退する事に。
どんな安全や保証も失くすギャンブル性が、彼女の無限大の力を制限していると言える。
歪んだ可能性を制御する為に、オティヌスは正と負のどちらかに、100%の確率を傾ける事を目的とする。正の100%に傾けるのであれば、あらゆる物事に対して絶対の成功を得る。負の100%に傾けるのであれば、常に選んだ道と逆を行く事で絶対の成功を得る。要するに、どう転んでもオティちゃん大勝利というわけである。
ちなみに戦闘では不完全とされるこの状態でさえ数の概念を無視し、時間の連続性すら歪める程の攻撃を繰り出す。
こんな化物と同種の攻撃で撃ち合うオッレルスも相当なものである…。
~新約8巻
オティヌスは、『グレムリン』とオッレルス達食い止める側の行動を利用していた。
マリアン=スリンゲナイヤーを軸とした『主神の槍(グングニル)』製造計画の情報を故意に漏洩させグレムリンへと周囲の視線を逸らした。グレムリンが起こした数々の事件…ハワイ諸島の騒乱、バゲージシティでの全体論の超能力、不死の存在フロイライン=クロイトゥーネの奪取。即ち、新約1~7巻までのグレムリンに纏わる全ては、オティヌスが用意していた囮であった。
オッレルス達はオティヌスが『主神の槍』を用いて、正に傾ける事を念頭に置いている。だが槍は数ある手段の一つに過ぎず、先述通り彼女にとっては、どちらかに傾きさえすれば良かった。
新約8巻、最後の最後で『妖精化』により、故意に負の100%へと傾けてしまった。オッレルスが放った光の杭は届かず、妖精化の要因となった光の杭を打ち込んだのは、彼がこの時の為に隠密行動を取らせていた右方のフィアンマだった。つまり、皮肉にも彼女を把握し切れなかったオッレルス達が、直接の引金を引く形となる。
こうしてオティヌスは『魔神』として完成。遂にオッレルスを撃破した彼女は、上条と対峙。恐怖する上条と、オティヌスは戦闘という行為に入る事すら煩わしく思っていた。
そして、面倒なので世界を破壊した。
無間地獄
物語は「躊躇無く終わってしまった世界」へと移る。
そこはオティヌスと(『魔神のなり損ない』としての立ち位置からの解釈として)『世界の基準点』としての力『幻想殺し』を持っていたがために無事だった上条当麻以外は何もない虚無の空間が広がる世界。
『幻想殺し』以外に思いの外鬱陶しい存在であった当麻を精神的に潰すための激しく、苛烈かつ陰湿な攻防戦が描かれた。
当初は『世界を歪める魔神』としての力を存分に使い、上条からの見方を変えた世界、分かりやすく言えばオティヌスと当麻の立場が変わった世界=当麻が今まで起きた事件の黒幕であり世界共通の絶対悪となった世界を創造した。
当麻にその世界を体験させたり、また別の世界を創って当麻の代役を配置して今まで彼がやって来た行いをその人物に行わせることにより、当麻本人を全く必要としない世界などを体験させることにより、常人だったら即座に自身の存在意義を見失ってアウトだろうという体験をさせた。
それからも幾千億の絶望の世界を当麻に体験させ続けた(なお数千億以上というのが後述する「手法」と併せての公式の数である)。
世界を構築して上条当麻の精神崩壊を企てるが、彼はそれでも折れなかった。
少しだけイラつきを覚えた彼女は、方向性を改めて「別の世界」を創った。
その世界とは、上条当麻が助けられなかった(彼が生まれる前や、全く知らない所で散っていった人物も含む)人達全てが救われることにより、あらゆる者が幸福に包まれた完全無欠な世界である。
この世界には何の害意も悪意もなく、悲劇も、いままで彼につきものであったはずの不幸という名のマイナス面さえも全く起こらず、上条当麻という人物が全く入り込むスキがない。
すなわち、当麻が居なくても全く以て何の問題もない。完璧に彼のアイデンティティーを否定する世界だった。
流石にこれにはあらゆる不幸に百戦錬磨の上条もお手上げ状態になり、さらに追い打ちを掛けるようにオティヌスの「お前が生きていると『幻想殺し』によってこの幸福に満ちた世界がいずれは崩壊する」という旨のセリフでついに彼に“自殺”を決意させることに成功する。
だが、オティヌスにとって想定外だったのは生と死の概念が曖昧な情報生命体としての側面を持つ“妹達の総意体”は彼女の世界の書き換えの影響が及ばず(実は書き換えが遅れていただけなのだが)、唯一上条当麻の行いや彼のことを覚えており、自殺しようとしていた彼を助け出したのだ。
何故自分を助けるのかという当麻の質問に彼女は問う「本当にそれでいいのか?」と…。
最初は渋っていた当麻だったが、彼女の叱咤激励や励ましを受けていくうちに、ついに4ページ以上に及ぶ本音を吐出する。「そんな訳がない」、「悔しい」と…。
そして当麻はミサカ総体に少しだけ背中を押される。
「自分の世界を取り戻す」という他人のためではなく、「初めて」自分の為に最強最悪の敵“魔神オティヌス”へ挑む。
上条当麻vsオティヌス
……しかし、その戦闘は「1つの世界」では終結しなかった。
実は一度目の戦闘で当麻はオティヌスに敗戦し、殺されていた。
そしてオティヌスによって復活させられ、そこでまた彼女と2人っきりでスタート地点の「躊躇無く終わってしまった黒一色の世界」に佇み、絶望の世界を繰り返した。
(単に「時間を巻き戻した」のか、それとも「記憶をリセットした」のかは明かされていないが、いずれにせよ魔神である彼女にとって造作もない)
絶望の世界を繰り返し、何度もオティヌスに殺された当麻。
体験した世界の数は数千億以上、直接対決だけで殺された数は1万回以上に及ぶ。
何度世界を繰り返しても、完璧な世界を見せ付けても当麻は折れなかった(正確に言えばミサカ総体と出会った世界すら、何度も繰り返している可能性がある)。
オティヌスは当初こそ圧倒的な力で当麻を軽くあしらっていたが、幾多の世界で不毛な戦いを続けていく内に精神的摩耗がスペックが全く違うはずの当麻よりも先に来てしまう。
(理由は当人や作者曰く、RPGでの低Lvクリアのための概念や鬼ゲーを繰り返しプレイしているうちに慣れて簡単にクリアできる例に例え、弱い内は試行錯誤して楽しめるが、Lvを極限状態まで上げてしまうと作業ゲーと化して退屈になってしまい、嫌気がさすから)
さらに天文学的数値もの敗北の末、遂にオティヌスの攻撃を見切った当麻に『主神の槍』を砕かれてしまう。
それでも『妖精化』の負の100%を利用した状態で『魔神』としての力を維持し、最後の切り札『弩』を発動、当麻を殺害することには成功するが…。
オティヌスの正体
先述通り、彼女の正体は北欧神話の主神オーディンそのものである。
詳細に触れる前に現状上条たちが生きている「世界という枠」について解説しておきたい。
とあるシリーズの世界は、まっさらな盤上に魔術サイドの異世界を幾重にも折り重ねることによって成立している。
この異世界は別位相に存在することで位相と呼ばれる。本作の魔術はこの位相(異世界)の法則を現世に適用する技術である。
位相はあらゆる宗教・神話の世界観のもとに構成され、「天国」「地獄」「ニライカナイ」「冥府」「浄土」「黄泉」「地底」「オリンポスの山」「妖精の島」など、様々な異世界が実体を持って存在する。
世界には宗教・神話の数だけこうした位相が挟まっているが、ただの人間ではその異世界を透過した世界しか認識することが出来ない。
しかし魔神は、位相を自在に作り変え、盤上の世界すら思うままに操る事が出来る。
魔神とは、カバラの「生命の樹」の上昇志向に於いて人間が上位次元に届き、遂にはこの世界の法則すら超越してしまった存在。
内一柱が魔神オティヌス、北欧神話に謳われる最高神オーディンである。
実は「オティヌスが世界を改変する度に残った記録がオーディン」として語られていた。
彼女が世界を改変する度に記録を残していた者がいたらしく、その編纂者が残した記録が後の世で神話となっていたようだ。
オティヌスの方も差分を跡形も残さず消し去る事は出来たのだが、自身に関係する記録という事でとりあえず残しておいたらしい。
つまり、彼女は少女オティヌスであり、北欧神話の全能神オーディンでもあった。
セルフコラボ小説での描写
鎌池和馬の公式コラボ小説『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』では、実際にアースガルドでオーディンとして君臨していた事が示唆されている。
別のコラボ小説では「ヴァルトラウテさん」がオティヌスを「ヒゲ」(オーディンのあだ名)と言うなど、オティヌス=オーディン設定を活かした絡みもある。
なお、“オティヌスが去った世界にその足跡としてオーディンという存在が生じる”事になっているが、オティヌスは平行世界の「オーディン」と存在こそリンクしているものの、オティヌスに絶対的な優位性があるわけではない。
上記コラボ『とある~婚活事情』の劇中で、「ヴァルトラウテさん世界」のオーディンの行動を邪魔するために“ヴァルトラウテさん世界のオーディンという存在”の座を一時的に自身の存在で上書きして乗っ取ってしまった事もある。
しかし、程なくしてオーディンに“ヴァルトラウテさん世界のオーディンという存在”の座を奪い返され、元の姿に戻られてしまっている。
真の目的
オティヌスは世界を作り替える事が出来る程の強大な力を持ってしまったために、世界から疎外され、自分の『良き理解者』が全くいないという孤独から、世界を作り替え続けた結果、いつの間にか迷宮に一人佇み解決の糸を探し続けていた。
何度も何度も世界を作り変え、作り替えた世界からまた本来あるべき世界の姿を取り戻そうとしたが、その能力のために世界の本質が見えないため、何度も繰り返し表層世界を改変し続けてきたという悲しき過去を持つ少女である。
何度世界を作り替えても、僅かな疎外感や違和感は拭い去ることは出来ず、元の世界に変えるために途方もない世界の再生と創造を繰り返してきたことや、彼女がある意味正真正銘の神だったことが新約9巻にて明かされた。
『魔神』の力を再び取り戻す計画もその「目的」のためであり、今までの行いは全て個人の些細な願いを叶える為の行動であった。『幻想殺し』を当麻から取り上げたり潰しに掛からなかったのも、自身が帰る元の世界の情報を失いたくないため。
当麻が今まで体験させられた世界の数々は、今まで彼女が世界を作り替える度に体験してきたことをモデルにして創造された世界ではないか、と当麻は推測している。
使用した魔術・能力
最高神オーディンは軍神、詐術の神としての性質も宿し、二羽のワタリガラスを使役したように「鳥」と相性が良い。
何よりもオーディン本人なので、神話に紡がれる彼女特有の魔術も扱える。
主神の槍(グングニル)
主神オーディンの代名詞とも言える、勝利を呼び込む必殺必中の神槍。
北欧神話において黒小人(ドヴェルグ)が製造した武具の一つで、穂先は黄金、柄は世界樹ユグドラシルと同じトネリコで構築され、オーディン自身がルーン文字を掘る事で絶大な威力を持つ神槍となった。
その槍は一度放たれたら最後、途中で撃ち落とされる事も破壊される事もなく、標的を破壊した後に所有者の手元へ戻るという。
槍の力を一言で表現すると「全能」。武器の神話とも称される北欧神話において、神の力は武器の力として表現される。つまり、全能神オーディンとしての彼女の力もグングニルに凝縮されているのである。
- 今ある世界を書き換え、破壊する
- 銀河と銀河を衝突させる
- 素粒子を乖離させて存在を霧散させる
- 時間を巻き戻し、ループさせる
- 未来へと繋がる運命のレールを一から敷き直し、望んだ結果を作り出す
伝説の魔剣(グラム)を叩き折って人間の権威の象徴を打ち砕いたこの槍は、人の身では決して抗えない程のパラメータが設定されている。
オティヌスが槍を投げると時間は停止し、空間は圧搾され、世界は粉々に吹き飛ばされてしまった。まさに「人は神に勝てない」という伝承を体現した武器と言える。
あまりにも規格外な武器だが、誰でも扱えるわけではなく主神オーディンつまりオティヌスが使用する事で初めて意味を持つ。
オティヌスを核に様々な意味が与えられる正真正銘、本家本元の「霊装」。
彼女の不完全な魔神としての力もグングニルによって整えられている。
『弩』
……世界が、彼女の『弩』だった
オーディンではなくオティヌスの弩。
正式名称は不明。破壊に纏わる部分だけが文献に残っている。
その正体は、宇宙全体をオティヌスの弩とする魔術。
使用時は世界に紋様が広がり、10本の「矢」が対象に向けて放たれる。
「矢」と称されているが、厳密には性質を言葉で表現するのは難しい。
宇宙の端々までガイドレールを設けて永遠に一直線に加速を続ける超長大レールガン。もしくは粒子に干渉し、世界の法則では説明できない大破壊を起こす特異点兵器とも。
- 一本一本の威力が惑星の一つや二つを削り取ることは容易い
- 衝撃の伝播すら許さない超高速
- 世界を席巻するかの如く巨大な谷を築き上げる
- 天蓋から降り注ぎ、地表から噴き上がる
- 複雑に軌道を変える
- 三次元上の制約を無視して空間に割り込む
- 数の概念を無視して「全天を覆う星の海」の如く無数に分かれる
言葉で表現される全てを重ね合わせても「矢」を撃ち落とす事は出来ず、そのため言葉で表現する事など「矢」の前では何の意味も持たない。
『骨船』
骨の姿をした魔術品。
これもオーディンではなくオティヌスとしての道具。
空間能力者が自ら指定した位置に移動するのに対し、こちらは惑星の方を移動させる。
個人ではなく世界の方に作用するため、幻想殺しの影響を受けない。無効化能力が原因でテレポート出来ない?逆に考えるんだ、惑星を移動させちゃえばいいんだ。…という究極の機知である。
死者の軍勢(エインヘルヤル)
北欧神話では死した者の魂をヴァリキリー(ワルキューレ)が選定し、ヴァルハラに集められ、ラグナロクでアースの神々と共に戦うと言われている。
オティヌスが槍の力を得た時と得てない時で効果が異なる。
グングニル無し「死体に黄金を組み込み、腐敗を防いで意のままに操る」。
グングニル有り「生物の生死を自在に操る」。
後者はミサカネットワーク総体のような「生と死の枠から外れた例外」なら書き換えが多少遅れてしまう様子。
無限螺旋の戦いの後
無限螺旋の戦いの末、上条当麻にギリギリ勝利した彼女だが、当麻も死んでしまう。
最後の最後でオティヌスが体験してきた経験をした事により、彼女の心の渇望を理解して『理解者』へと立場が変わっていた当麻の今際の言葉を聞く。
ついに自分の探し求めていた『理解者』を得た事を悟ったオティヌス。
残されたオティヌスは、幾千億の世界の果てにようやく得た『理解者』を手にかけてしまった事を悔んだ。
本当の願いである『理解者』の居る世界を得るため、上条当麻の世界を創造するため、『幻想殺し』を使用して当麻を元の世界へと帰した。
そして上条当麻の世界を創造した後、精根尽き果てる。
オッレルスが打込んだ『妖精化』の術式を利用して無理矢理負の100%へと傾け、『魔神』としての力を制御する、という無茶な方法では力の制御など上手くいく筈もなかった。
体に亀裂が入り、『魔神』の力を失い、後は世界のありとあらゆる“悪意や正義という名の悪意”により朽ちていくことを覚悟した。しかしそんな立場に陥った彼女の『理解者』となった上条当麻は放っておかなかった。
彼女を救って本当の意味で世界を取り戻すため、上条当麻は全世界を敵に回したのだった。
新約10巻
(※上記イラストはあくまでもイメージです。)
詳細はとっても長いので省略させていただくが(本編を実際に読んでみよう)、魔神から人の身に戻り、正しく罪を償わせるために上条当麻と北欧を旅していた。
あとがきの言葉に関しては本当にデレた感じである。
……そして世界を敵に回した当麻にとって「地獄のボスラッシュ」が始まった。
【1戦目】白と黒の翼携え世に抗う者
一方通行(白翼+手加減)
【2戦目】二十億の猛威
アニェーゼ=サンクティス(ローマ正教20億人)
【3戦目】神威にたゆたう修道女達
【4戦目】魔を屠る四つの刃
【5戦目】魔剣を解放せし鍛冶師
【6戦目】表舞台の警察
大統領(アメリカ)
【7戦目】無慈悲なる科学の尖兵
学園都市製の科学兵器
【8戦目】電子に愛されし申し子
【9戦目】図書館の主と魔術の女王
【10戦目】魔神に対する者
シルビア、ブリュンヒルド=エイクトベル
【11戦目】槌振るいし全能神
トール
なんと当麻はこれらを全て退けている。
とはいえ全てに勝利したわけではない。せっかく当麻に勝利したのに自ら退いた者、当麻の相手の理念を理解した「搦め手」に付き合わされた者なども居る。
そして、このボスラッシュの最後の相手は…
【ラストバトル】???
やっぱり、私にはできないよ
私には私を救う事なんてできないよ
今まで大勢の者を苦しめてきた、自分はまだ罪を償ってない、過程で当麻が自分のために傷ついてるのに自分は何もしてない。
こんな自分が救われてもいいのかと苦悩し、救いを拒絶したオティヌスであった。
当麻はこれから「世界の脅威である魔神オティヌスを救った業」を背負い続けなければならない。その行程は当麻自らが選び、世界を相手に見事に勝ち取ってみせた。何の理解も得られてない者からすれば、まさしく脅威でしかない。
だが罪の意識から逃げるオティヌスに対し、当麻は「逃げるな」と叫び、そして
もしも、あいつが自分が死んだ方が良いなんて思っているなら。
そんなくだらない考えで辛い道から逃げて、上条当麻を救えるなんてとんだ勘違いをしているっていうなら。
まずは、その幻想をぶち殺す!!!!!!
新約から数えて10巻分「らしくない上条当麻」が続いた中で、久し振りのそげぶ宣言である。
妖精化が進行して徐々に体が崩壊していたオティヌスは、もはや限界だった。
消滅間近の自分を救おうとする当麻を近付けさせないために、かつて彼に使った『弩』を再び射出する。無間地獄での経験によって、当麻でも何とか回避できた。
当麻は避けられなかった最後の一本を玉砕覚悟で右手で何とか逸らし、激痛に苛まれながらオティヌスの元へたどり着いて、妖精化の『光の杭』を砕いた。
だが『光の杭』を砕くと同時に、オティヌスの体は限界を迎えてしまう。
もう、逃さないぞ
約束しただろ……世界の全てと戦ってでも、俺がお前を助けてやるって……
そう、だな
でも、それなら、大丈夫だ……
私はさ
その言葉を受けたときにはさ、もう、きちんと救われていたんだよ
最後に当麻と抱き合いながら、オティヌスの体は光の粒子と化した。
妖精化
現在の彼女は15cmサイズに身長が縮んでいる(しかも、魔神の力を失いはしたが、不老不死であるような発言アリ…)。
無論、オティヌスは消滅する筈だった。
しかし裏で暗躍している彼女以上に完成された魔神の木乃伊ジーちゃんの僧正(欲望まみれで悟りは開いていない)の介入もあって消滅を免れた。その時に体が15cmに再構築されインデックちゅ、インデックスたん、シャナたん化してしまったのだ。
また長いので記事では省いたが、先述のバトルと同時進行でアメリカ大統領や英国女王により、世界に生きることを「条件」付きで許された(バトルの裏では大統領の粋な計らいで上条とオティヌスの様子が世界中に生配信されていたとか)。
「自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、一番近い場所で永劫に眺めていけ。それが魔神との戦いに勝利した人類がアンタに贈る、最大の罰だ」
その後の活躍
その後は上条家の居候となり、新たな天敵であるスフィンクスと鎬を削りながら平穏(?)な日々を過ごす事に。
だが魔術師相手の戦闘となれば小さな体を活かしての情報収集や、魔神としての知識をインデックスの十万三千冊の知識と組み合わせての解析や対抗策の構築を担当する。
双方の体感的な時間で当麻にとって最も長く付き合ってきた理解者であるため、オティヌスから見た当麻がそうであるように、彼の『理解者』として精神面をサポートしたりもするようになった。
特に新約14巻での当麻に対する「『繋がる力』が切り札」という彼女の言葉は、当麻に影響を与える事となった。
「……お前は本当に、俺の『理解者』なんだな」
「今更何を言っている。定義の確認でもしたいのか?」
妖精サイズになってから、当麻の「肩の上」が彼女の定位置となっている(新約18巻では「所定の右肩」と表現された)。
オティヌスの存在を知らない級友には「腹話術人形」で押し通している。ただし、それが原因で当麻が吹寄や青髪からかわいそうな子扱いされた事も。
なお、当麻に対して恋愛感情を持っている疑惑がある。
合コンSS「(……知るか馬鹿者。私というものがありながらのこのことこのように不埒な会合に参加しおって。この人間は少し痛い目を見て教訓を得れば良い)」
新約18巻「お前、ここに来るまで複数の女と抱き合ってきただろう?まったくこんな不埒な匂いをなすりつけられても気がつかんとは、まったくもう……」
以前から「理解者」だの「無人島に持っていくリストの筆頭候補」だの、人並み以上の信頼を寄せていたのは確かだが、最近はそれが男女の仲にシフトしているような発言も見られる。仮に恋愛感情でなくとも嫉妬心、独占欲はそれなりにあるのだろう。まぁ、幾千億もの年月を共に過ごした唯一の「理解者」なので仕方ないとは言えるが。
新約18巻ではあくまで『魔神』視点からエイワスの正体やアレイスター=クロウリーの思想を伝えたり、インデックスと共に土御門元春の呪詛の魔術剣の解除作業をサポートし、エイワスの召喚理論を狂わせ当麻を間接的に助けている。
新約20巻ではクロウリーズ・ハザードの際に当麻やインデックス、アレイスター、アクセラレータ、烏丸府蘭、浜面仕上、滝壺理后と一緒にイギリスへ入国。作戦とはいえ何の説明もなくアレイスターに無理やり突き落とされた当麻の後を追い、ロンドンにて幽閉されていた当麻を救助・合流する。
イシス=デメーテルに歪められたオルソラ=アクィナスとの戦闘では苦戦した当麻を再起させ、自身も当麻の体の上で魔術を分析しつつ貢献。最終的に「可哀相なお姫様」だけでは終わらなかったオルソラを高く評価した。
新約21巻《黄金夜明》の騒乱でも引き続き当麻の体に乗ってアドバイスしている。アクセラレータに魔術の知識すら超えられそうで焦った小心者の理解者をなだめたり、キャーリサの処女疑惑を提唱したり、当麻に執拗に迫るねとねとしているえっちな人に毒を吐いていた。
他の鎌池作品との関係
セルフコラボ小説『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』や『合コンやってみました。ただしオールスターで世界の危機ではあるけども。』等では、新約10巻後の設定で等身大(元のサイズ)の彼女が登場している。
先述通り、コラボ設定だと同作者の『ヴァルトラウテさんの婚活事情』(並行世界)のオーディンとして君臨した事もあったらしい。
なお前者では上条を助ける為に『ヴァル婚』世界に干渉した際には人間サイズだったが、元の禁書世界では妖精サイズだった。後者の『合コンSS』はお遊び的な作品なので、単に設定が無視されているのだろう。
ちなみにゲーム版『とある魔術の電脳戦機』でも新約10巻後の彼女が登場するのだが、こちらも15cmではなく通常の人間サイズ。いわく、もはや不要になった魔神の力と肉の器を勝手に押し付けられたらしい。
未踏召喚://ブラッドサイン
オティヌス(魔神)は同作者の小説『未踏召喚://ブラッドサイン』の設定で《神格級》に分類される事が確定している(※先述した『合コンSS』初出の設定)。
そして神格級のさらに上、神々の上位法則たる理を司る《未踏級》、その中でも最強の存在である「白き女王」が、あのオティヌスの力を上回るという事も……。
後に未ブラ本編でも《神格級》のオティヌスと青行燈が「喚起」された。ただし、禁書のオティヌスとインテリの青行燈そのものかは不明。ちなみに以前にも『ヴァル婚』デザインと酷似したヴァルトラウテが「召喚」されている。どちらにせよ禁書のオティヌスも神格級なのは確定しているが…。
未ブラ本編ではフェンリルがオーディンを飲み込む事が「神々でも抗えない法則」の例として挙げられ、それらの理を束ね天の歯車を回すのが未踏級と説明されている。
白き女王はそのような法則を束ねる全未踏級を叩きのめしているので、女王>オティヌスの力関係も特に不思議ではないのだろう(実際、『合コンSS』ではオティヌスや下記の座敷わらし「縁」ごと世界をぶち壊し、謎のループが人知れず行われた)。
補足
オティヌスの人気・反響
それまで能力バトル物として均衡を保っていた禁書に「世界自体をぶち壊す」という概念を持ち込んだ事で読者に大きな衝撃を与えた。
しかし上条を絶望に追い込む無限ループ、そこからの上条の復活、オティヌスのヒロイン化の相乗効果で凄まじい話題性と人気を獲得。そして、新約10巻にして新約初のそげぶを掻っ攫う(※救済枠なので殴らなかった)。
当時、新約9,10巻を禁書最高クラスのエピソードと評価していた者も多い。
また、彼女は上条当麻と一番長く付き合ってきたヒロインとなっている。それこそ億~兆単位はあってもおかしくはない。そのため、上条も彼女に対してはインデックスとはまた違ったベクトルで特別視する(理解者的な意味で)。
このラノ2015年女性キャラ投票やアプリ『幻想収束』事前投票で5位になった事からも、人気の高さが伺える。
余談だが、他の鎌池作品でもオティヌス前後に同等、またはそれ以上のパワーインフレが起き始めるようになった。
- 縁 - 『インテリビレッジの座敷童』
- 白き女王 - 『未踏召喚://ブラッドサイン』
この2名はメインヒロインで、世界を改変・破壊する程の力を持つ実力者。そして禁書やヘヴィーオブジェクトの後に始まったのにインデックスやお姫様の「先駆者」となった。インデックスには是非とも頑張って頂きたいものである。
デザイン・声優
当初は挿絵やイラストが無かった為、キャラクターデザインは長らく分からなかった。
後に新約6巻でシルエットだけ公開。いかにも古典的な魔女といった風なハイレグ少女であった。
同時期の作品で言えば、劇場版とある魔術の禁書目録「エンデュミオンの奇蹟」に登場するステイル3弟子の内の一人メアリエ=スピアヘッドに近い。
なお、ゲーム版『とある魔術の電脳戦機』でメアリエ役の瀬戸麻沙美がオティヌスの声を当てることになった。
正式なデザインは劇場版「とある魔術の禁書目録」Blu-ray&DVD発売記念 103000秒TV ~魔術と科学は世界を救う~で初公開。
担当の自慢大会…もとい制作に関する裏話的な企画のサプライズとして、担当の三木一馬がオティヌスのキャラクターデザインを持参したのだが、それが当初の予想を斜め上に上回る露出の多さであった為、一部では痴女呼ばわりされていた。
現在では公式絵師灰村キヨタカ氏のサイトに、28時間TVで公開されたイラストと同一のものが上がっている。一度拝見して貰いたい。
ところで三木は勝手に持って来たらしいが、良かったのだろうか。
関連タグ
オーディン - オティヌスのモデル
カップリングタグ