概要
2006年より製造されてきたE233系の後継車両。技術進歩を反映し、E233系よりも更なる運用効率の向上が図られている。
最大の特徴として、車内広告の殆どをデジタルサイネージ化したことが挙げられる。その他、炭化ケイ素半導体や営業走行中に地上設備を監視するシステムなど、新たな装備も多数採用している。
おもな諸元
設計最高速度 | 120km/h |
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歯車比 | 14:99=1:7.07 |
駆動装置 | TD平行カルダン |
主電動機 | かご形三相誘導電動機・全閉外扇式
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制御方式 | 2レベル電圧型PWMインバータによるVVVF制御・1C4M制御
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台車 | ボルスタレス台車・軸梁式
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製造所 | 総合車両製作所 |
0番台(山手線)
既存のE231系500番代車に代わる新型車両として導入されている。11両編成50本が東京総合車両センターに在籍。
営業最高速度 | 95km/h |
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起動加速度 | 3.0km/h/s |
減速度 | 4.2km/h/s |
量産先行車
2015年3月23日、第1編成にあたる量産先行車11両編成×1本(うち10号車はサハE231-4620から改造編入)が、総合車両製作所新津事業所を出場し試運転を実施。
その見た目からアップルウォッチ、ヤテップルウォッチ(山手線の電報略号ヤテとアップルウォッチをかけたもの)と呼ばれたり、あるいは電子レンジに例えられたりしたほか、ツイッターでは「山手線クソコラグランプリ」というハッシュタグでさまざまなコラが投稿されるに至る。
その後も試運転が繰り返され、同年11月30日より営業運転を開始した。
営業開始直後のトラブル
営業運転開始の5分後(2駅目)、早速のオーバーラン。
その後もトラブルが連続し、30分にわたって乗客を閉じ込める事案までもが発生した。
当然その後の運転は打ち切りとなり、翌日以降の営業運転も未定になる幸先の悪いスタートになってしまった。
原因は車載の情報管理システム(INTEROS)の不具合のためで、ソフトの修正などの対策が行われた。(中には混雑時の荷重を再現するため客室内に水タンクを満載してテストを行うなど、徹底した対策が行われていた。)
何かと不具合が強調されがちだが、新技術の初期不良というのはどの分野に於いても起こらない方が珍しく、事実としてJR東日本も苦い経験をしている。
同年12月27日より試運転が再開され、2016年3月より営業運転へ復帰した。
量産車
2016年6月8日、量産投入計画が発表。2017年春から2020年春にかけて49編成を製造することとなった。これにより既に営業運転中の量産先行車を含めて計50編成(先代の52編成から2編成減)となる。
サハE231形4600番代車の改造期間の問題から、2編成については改造編入なしのフル新造となることも合わせて発表された。これによりサハE231-4600は4両が余剰となる見込みである。
なおこの新造車(サハE235形500番台)は、トウ04・トウ05編成に組み込まれている。
なお多くの鉄道界隈の予想通り、捻出されるE231系500番台は中央・総武緩行線への転用となることも正式に発表された。そして捻出されるE231系900・0番台、209系500番台は武蔵野線、八高線・川越線へ転用され、古い205系と209系を置き換える予定(205系はさらに海外へ譲渡の予定)。
1000番台(横須賀線・総武快速線)
老朽化・陳腐化の進む横須賀線・総武快速線用のE217系の置き換えを目的に、2020年以降順次導入される。
二階建てグリーン車2両を含む11両編成を51編成、4両編成を46編成の計745両が製造される予定。
既存のE217系とは異なり、座席は全てロングシートとなる。
主な構造・特徴
INTEROS
従来のTIMSに代わる最新の車両制御システム・INTEROSを採用。
TIMSと同様に、力行・制動の指令、ドア開閉や空調など、殆どの車両制御はこのINTEROSを介して行われる。
開発・整備コストの削減と高性能の両立を目的として、基幹伝送路にEthernetを採用。その他の通信システムもIEC国際規格系に準拠したものを採用している。
通信速度は100Mbpsと大幅に強化され、将来の機能拡張も可能になっている。
線路設備・架線設備モニタリングシステムとの連動に対応し、検測データの送信が可能。
E235系ではINTEROS-A方式(集中方式)を採用。演算装置・伝送装置を両先頭車に集中搭載する。
車体
総合車両製作所の「sustina」シリーズの設計を全面的に採用した。雨どい部分の出っ張りがなくなり、すっきりとした外観となったほか、妻板などにレーザー溶接の適用、車体四隅の強化などが行われている。
前面は、これまでの白地に黒と帯の入ったデザインから一転し、ラインカラーが下地となり、巨大なスクリーンのような平面と下部のグラデーションが近未来感を演出している。
前面ガラスは、平面ガラス化によってコスト削減を図り、行先表示器周辺と乗務員室部分とで分割することで、破損時の修復の容易化を図った。
走行機器
主電動機は新形式・MT79形。原設計は東芝が担当。
E233系のMT75形と性能互換性を持たせつつ、全密閉構造により内部清掃を不要とし、非分解での軸受交換を可能にしたことで、整備性が向上。また、回転子に低損失材料を用いて効率を向上させている。
制御装置は、炭化ケイ素(SiC)適用型半導体素子を使用し、小型化・高性能化を図った最新のVVVFインバータを採用。
形式はSC104形で、原設計は三菱電機が担当。最新の大容量フルSiCモジュールの適用により、小型化とスイッチング損失・導通損失低減を実現。高速域でも多パルススイッチングを行うことで、モータの電流波形をなめらかにし、高調波損失を減らすことで効率向上をも図っている。
量産先行車は、比較用としてSC105形も搭載する。原設計は東芝。スイッチング部をSi-IGBTとしたハイブリッドSiCモジュールを採用。SC104形よりもヒートシンクが大きく、また磁励音が異なる。
何れも、素子の損失低減・耐熱性向上が実現したことから、回生時の定トルク域を高速側に拡大し、回生電力量を増大することで消費電力低減を図っている。
編成構成
1両単位での柔軟な編成構成を可能にすべく、全ての電動車に制御装置・フィルタリアクトル等を搭載する独立M車方式を採用。ただし、基本的にはモハE235形とモハE234形でユニットを構成し、モハE235にパンタグラフ、モハE234に空気圧縮機を搭載する。
なお、補助電源装置はクハE235・クハE234・サハE235(4600番台除く)に搭載している。
設備面
前面・側面の行先表示器は、従来よりも解像度の高いフルカラーLEDを採用。走行中は簡易的なイラストを表示することが可能に。また量産車以降では、鉄道車両用で初の透明フィルムを外装飾に採用。
車内においては、従来全ドア上部に2台設置であったLCDを、ドア間座席の荷棚上に3台、貫通路上部に1台ずつ増設。この大量に増加したディスプレイによって、当初は紙媒体の広告を全てデジタル広告化する方針であったが、広告会社からの要望により、紙媒体は縮小の上で存続することになった。
また、従来1編成当たり2〜3箇所設置であった車椅子スペースは、「フリースペース」に名称が変更され、全車両に1箇所ずつ設けられた。
ドアエンジンにラックアンドピニオン方式を採用。従来のリニアモーター式に比べ軽量化・コスト削減・信頼性向上が図られている。施錠機構と戸挟み検知システムを改良し、荷物の引き抜き易さと耐こじ開け性能を両立した。
今後の予定
・全車両に防犯カメラを設置する。
・一部報道機関によると東海道線・宇都宮線・高崎線(上野東京ライン・湘南新宿ライン)にも順次投入予定であると報じられていた。
しかし、2020年頃に京浜東北線・横浜線への投入が報道や労働組合から発表されたため、こちらに投入される可能性が高いと思われる。
模型化
Nゲージでは早速大手二社によって模型化されている。
TOMIXでは初心者向けの3両セットシリーズやレールとセットにしたスターターセットでリリースし、各種増結セットと組み合わせた。それに加えて、限定品でオール新製の04編成を製品化したほか、月毎の後部表示も交換パーツによって(増結セットと限定品に付属)再現している。
ほぼ同時期にKATOでも製品化されたがこちらは03編成をモデルとして、ボディーマウント新型KATOカプラー(下にフックがないタイプ)標準装備、前面・側面行先表示印刷済となった。
ただし、こちらは月毎の後部表示はなく、交換用パーツとして「品川・東京方面」「池袋・上野方面」が付属。
最大の特徴の再現についてはTOMIXに一歩遅れるかたちとなった。