演:山本龍二(映画)、鶴見辰吾(テレビドラマ)
声優:山寺宏一(彼岸島X)
身長:167cm 体重:55.7kg
特技:医学
好きなこと:お国のために命を懸けること
嫌いなもの:米国
『次の空襲が来る前に、早くこの概要を読むんだっ!』
『五十嵐一郎』とは、1943年に『彼岸島ニオケル吸血病ノ報告』を執筆した大日本帝国陸軍中佐、
軍医の五十嵐一郎その人である。
彼岸島のラスボスである『雅』を生み出した張本人である五十嵐は、彼岸島の物語の最重要人物の一人である。
また雅を生み出したと同時に、彼を殺す唯一の手段である『五〇一ワクチン』を作成した人物でもある。
戦前の彼は軍人としての矜持と誇りに満ち溢れていたが...雅の封印に成功するも五十嵐は炭鉱の中に閉じ込められてしまい、感染した部下に襲われて吸血鬼ウィルスに感染してしまう。
五十嵐は六十年に渡り光の刺さない閉鎖空間に閉じ込められてしまい、化け物に追われながら孤独に生きてきたために人格が一転し、その性格もまるで別人のように変わってしまったのだった。
『今この瞬間よりこの記事は、ワシの経歴解説に入る!』
『六百年前から既に彼岸島内部にて存在していたという吸血鬼の一族。
絶海に浮かぶ孤島、彼岸島にはそんな彼らと人間とが互いに共存しているという』
その情報が大戦末期の昭和十七年十月三日、例えどんな手を使おうともアメリカの本土決戦へ対抗する為の手段を探していた大日本帝国陸軍中佐の五十嵐一郎の目に止まることとなる。
彼らの持つ遺伝性の吸血病に軍事的な価値を見出した五十嵐は、その吸血鬼一族へ目をつけた。
そして五十嵐率いる部隊は吸血鬼の一族を全て連行したのち、来たる本土決戦に瀕し『不死身の兵士』を作るべく島内の炭鉱を作り変えた研究所で凄惨な人体実験を開始することとなる。
まずは島内にいた吸血鬼の一族を銃で蜂の巣にし、嫌がる彼らを次々に連行していく五十嵐部隊。
しかし…とある男だけは中佐に抵抗するどころか、自ら進んで実験体に立候補すると言い出した。
その男の名は、『雅』。
『是非私をその 最強の兵士にしていただけないでしょうか?』
その彼の様子に不信感を抱きつつも、五十嵐はそんな彼を被験体として採用することとなる。
そしてあらゆる人体実験を繰り返すうちに判明したのは、吸血鬼は他の吸血鬼の血液を体内に入れることで免疫反応が暴走し、異なる個体の血液を掛け合わせることで『混血種』と呼ばれる種へと突然変異を起こす…ということ。
実験で吸血鬼化したモルモットに血液を投与するも、一瞬で異形の化け物へと変化した。
そこで実験をやめておけばよかったものを、五十嵐は戦争に勝つ為今度は人体実験でこれを試す。
大多数の吸血鬼がその凄絶な拒絶反応で死亡していく中で、実験体番号『四号』と呼ばれる実験体のみが耐えたが...その四号こそ、あの雅であった。
雅のただならぬ野心と狡猾さに危険を感じた五十嵐は、血液を分離し不死の力を奪う特殊な血液分離剤『五〇一ワクチン』*を作成する。
その後の実験でそれまで遺伝性であった吸血病は雅の体内で突然変異を起こし、彼は完全な不老不死を手に入れてしまった。
五〇一ワクチンを彼に投与し、実験を中止するかどうか五十嵐が決断するまさにその時、運悪く施設がアメリカ軍の空襲を受けてしまう。
突如実験室内の電気が停止し、実験施設全体が揺れたことにより五〇一ワクチンが瓦礫の下へと埋もれてしまったが…五十嵐は『空爆で実験施設が破壊される前の今しか、この実験をするチャンスはない』と判断。
実験を強行し...続く2体分、3体分の吸血鬼の血液を雅の体へと注入することとなる。
雅は実験中に吐血しするが、その血液に触れた研究員が次々に倒れてしまう。
雅の血液は感染性のウィルスへと変異しており、しかもそれは人間のみならず動物、さらには死体にさえも感染する悪夢の吸血鬼ウィルスへと変貌してしまっていたのだ。
そして隊員が次々に感染し、パンデミックが起きる中で遂に雅本人が起き上がってしまう。
なんとか不死身と化した雅を説得しようと試みるが、人間への憎悪を滾らせた彼の前に失敗。
機関銃で殺害を試みるも雅の身体は銃弾を吸収し全て撃ち返され、制圧は失敗に終わる。
雅は五十嵐の血を吸った後、崩れ落ちる彼に対し自身が『人間が大嫌いであること』、『これから日本を支配し、吸血鬼から生き残った人間もいずれ食料や家畜として支配すること』を宣言する。
その後の五十嵐は吸血鬼の一族の生き残り、青山龍ノ介の協力もあり501ワクチンを使って雅を追い込むものの...その雅の力に対して期待を捨てきれず、彼にとどめを刺さずに彼を冷凍封印した。
(その際、青山龍ノ介に大型獣用連続注射器を託している)
そして五十嵐本人はその後長らく生死不明となってしまい、第二次世界大戦の終戦から60年が経った彼岸島本編では既に故人であると思われていたが___
『お国の為ならどんな形であれ再登場するって決めてるね私』
『ホントねホントね!
やくそくよやくそくよ!だんなさん!』
そしてその後、六十年が経ち…
研究所に繋がっている炭鉱で五十嵐一郎はなんと吸血鬼として再登場することとなる。
炭鉱で吸血鬼に襲われ吸血鬼と化した五十嵐は、暗い炭鉱内で六十年以上に渡り一人彷徨い続けており、勇敢な軍人然としていた振る舞いも炭鉱内を徘徊する無数の邪鬼や正気を失った元部下の吸血鬼達から逃げ続ける過酷な生活により臆病で陰険な性格へと変わってしまった。
しかし五十嵐はなおも「お国の為、日本国民の為」という信念は捨てておらず、
邪鬼の爪に引っ掻かれ重傷を負った宮本明をユキの血液との交換条件で救うこととなる。
明の怪我を治療した後は、炭鉱を抜けた先の湖にてユキと冷の裸を覗いていた時に明たちと再会。
一本背負いで冷に投げ飛ばされ、彼女に危うく殺されかけるも明が静止し、九死に一生を得る。
『雅』を倒す鍵となる五〇一ワクチンが現在は邪鬼が巣食う研究所内にあること、五十嵐一人ではまずそこまでたどり着けないことを彼らに告げた。
彼は道中の道案内を彼らに買って出る代わり、安全にそこに辿り着くために宮本明達の力を借りたいと提案を行う。
ワクチンを破壊せんとする『雅』の部下、『宮本篤』より先にワクチンを手にいれるべく、
五十嵐と宮本明達一行は一時的に手を組み炭鉱の頂上にある研究所を目指すこととなる。
しかし、明達が研究所内に足を踏み入れた時には既に遅し。
洞窟の入り口には、大量の野良吸血鬼の死骸が散乱しており宮本篤が明達の遥か先へと到達してしまっていることは明らかだった。
が...既に篤が向かったと思われる道を見た五十嵐はニヤリと笑い、明に向かってこう言い放った。
『だんなさんにも勝ち目あるよ』
五十嵐がすぐ傍にあった床の大岩をどかすと...
そこには隠し通路への扉が巧妙に隠されていたのだった。
『全然早く着く 秘密のルートがあるね
かなり危険だけど、だんなさん望むなら私案内するよ』
明達は五十嵐のその提案を飲み、危険だが篤の通るルートより圧倒的に早く着くという秘密の抜け道を通り、打倒雅に必要不可欠な五〇一ワクチンを破壊せんとする彼の先回りを試みることにした。
そして『この先に進むなら』と前置きした五十嵐は、明達にとあることを忠告する。
『この先に棲む炭鉱の姫には、絶対に目を合わせないこと。いいね?』
五十嵐が案内した先にあったのは、巨大な縦穴だった。
老朽化した螺旋階段がついた縦穴のすぐ上層に、そのワクチンの置かれた研究所があるという。
そして急いで階段を上がる明達の存在に気付き…
数百メートルの巨大なムカデのような巨大な化け物が、明達が階段で上へ上へと登ぼるそのすぐ横をゆっくり通過していった。
濃硫酸の体液を身体中から吹き出す『姫』は、まさにこの炭鉱における最強の生物だった。
しかし、明達は階段の途中でそんな姫と目が合ってしまう。
なんとか間一髪のタイミングで頂上へと駆け込み、そして頑丈な扉の奥に逃げ込んだ明達は怒り狂う姫の追跡からとりあえず逃げおおせることに成功する。
そして五十嵐は、『ここまでくればもう安心』と明達に伝えたのだった。
五十嵐一郎の最期
『姫』の追跡からなんとか逃げた明達の目に留まったのは『地下五』と書かれた看板だった。
五十嵐の元研究所へとたどり着いたと安堵しつつも、明達は篤に先を越されていないことを確認し、五〇一ワクチンが保管されているという『地下2階』へと歩き続ける。
途中、『もし、ワクチンが手に入ったら...少しだけ飲ませてほしい』と支離滅裂な思考・発言を繰り返す五十嵐の姿を、明達は怪訝そうな顔で見つめることとなる。
それもそのはず、調査報告書によれば五〇一ワクチンは単なる血液分離剤に過ぎないのだ。
『既に吸血鬼化した人間を元に戻す類の薬ではない』...そのはずなのである。
しかもその報告書を書いたのは六十年前の五十嵐一郎、ご本人のはずなのだ。
目の前で嬉し涙を流す五十嵐一郎を見つめながら、明達は考える。
もしかしたら、目の前の男は『ワクチンを飲めば人間に戻れる』と強く思い込むことで六十年にも渡る孤独と戦い続けていたのではないのだろうか、と。
(事実、五十嵐一郎以外の吸血鬼達は永い炭鉱生活で正気を失い、意思疎通すらままならない怪物へと成り果ててしまっていた。)
彼らに外部からの助けはなく…暗い洞窟の中でいつかある日突然邪鬼化する身となっても五十嵐は
『ワクチンさえ飲めば人間に戻り、炭鉱から出られる』という希望を抱くことで、極限の状況下であっても正気を保てていたのだろう。
目の前で嬉し涙を流す老吸血鬼に、明達は次第に同情に似た感情を寄せ始めることとなる。
『よかった…
ずっとずっと、人間に戻れる日を待ってたね』
『それだけのために私、生きてきたね…』
そして瓦礫や入り組んだ構造に四苦八苦しながらも遂に明達は研究所地下二階に到達し、ワクチンが保存されている部屋のドアを開け、その中へと踏み出した___その瞬間だった。
物陰から一閃。
暗がりから現れた宮本篤の日本刀の斬撃により、五十嵐一郎の首は無慈悲にも宙を舞った。
『何もこの場所に詳しいのはその男だけではない』
斬り飛ばした五十嵐の首を床に踏みつけ、そう『宮本篤』は言い放つ。
かつて六十年前にこの研究所に居た雅に教えられた研究所内の構造、そして抜け道を全力で走ってくることで篤はいとも簡単に五十嵐に先導された明達を追い抜かしたのだった。
そして篤の手には五〇一ワクチンが既に握られており宮本明はそれを巡って彼と戦闘となる。
吸血鬼の身体能力で超強化された篤の前に結果として明は敗北することとなるも…
冷の命と引き換えに明は助かり、篤と明は五〇一ワクチンを巡り一対一の決闘を一週間後に行うこととなる。
そして篤との戦闘終了後、明達は姫に再度遭遇しつつも、辛くもこの地獄の炭鉱を抜けることに成功したのだった。
『なに言ってるね!余談はとっても大事よ』
五十嵐は作中での超重要人物であり続け、一度は雅を封印しながらもその最期はあまりにもあっけなく救いのないものだった。
彼は六十年以上に渡り孤独に戦い続け、自身の正気を保つためにも一抹の希望にすがる他なかった。
そして例えワクチンを飲んだとしても彼は人間へは戻れず、どのみち彼の残りの人生には絶望しか残っていなかったのだろう。
そう思えば宮本篤の手により痛みすら感じず死亡した彼はまだ幸せだったのだろうか。
それとも炭鉱内の他の吸血鬼と同じように閉鎖空間の狂気に取り憑かれ、正気を失う方が彼にとって幸せだったのか。
ともあれ五十嵐のもたらした『五〇一ワクチン』という片道切符により、
なお映画版の彼は雅を封印するも即座に自身の感染を悟り、完全に吸血鬼化する前に切腹。
自決を果たした五十嵐一郎の死体はミイラのようになり、吸血鬼として蘇ることはなかった。
彼のガチ名言
五十嵐は明の『もし人間に戻れたら、したい事はあるのか?』という問いに対し
『そうね
やっぱりお国の為に…日本国民のために何かしたいね
今度はみんなが笑って暮らせるような国がいいね』
『もう戦争はこりごりよ』
とだけ返している。
さてはいい奴だなオメー。
『何言ってるね!関連タグを読んだら 私は人間の体に戻れるのよ!』
『雅様』
なぜ、戦前の彼岸島でほぼ初対面にも関わらず五十嵐一郎中佐の事を知っていたのか?
一体どこで脳波干渉などを獲得したのか?...彼の一生の大部分は深い闇に覆われてしまっている。
元々は雅と同じ吸血鬼の一族の男だったが、五十嵐の実験の副作用により人間と同じ姿を手に入れることとなる。その後、戦後日本で復活した雅に襲撃され致命傷を負うこととなる。
死にかけの彼は五十嵐が遺した吸血鬼の血を自らの身体に入れ、吸血鬼の上位種の混血種となり雅の前に幾度となく立ち塞がる。
『彼岸島』
今作のタイトルであり、物語の舞台となる島の名称である。
森と海しかない...はずだが、炭鉱や火山も存在するほか、広大な砂漠や原生林が広がっている。
現在は物語の中心が彼岸島の外側、即ち「日本列島本土」へと移ったが地面から生える日本刀や無限湧きする忍者などの彼岸島特有の現象も本土に感染が広がっている。
(もう少しだけ具体的に言うと、自衛隊が無限湧きするようになった)
『宮本明』
今作の主人公。...とんでもねェ丸太の使い手である。
最近、立体機動を体得した。
『宮本篤』
宮本明の兄。薙刀を使ったり使わなかったりする。
死後は明に亡霊となって取り憑いており、あらゆる落下ダメージを完全に吸収する。