ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

猪王山の編集履歴

2021-02-13 00:44:25 バージョン

猪王山

いおうぜん

映画『バケモノの子』の登場キャラクター。

CV:山路和弘

概要

「いい息子だ、行くぞ」


概要

バケモノ界屈指の大都市・渋天街の長・宗師の次期候補者の一人。


現宗師・卯月と並ぶ渋天街の人格者であり、街に於いては彼に次ぐ権限を持つ。


息子には、長男一郎彦次男二郎丸を授けている。


次期宗師の最有力候補者であったが、同じく候補者の熊徹が人間の子供・九太を弟子に迎え彼と切磋琢磨した後、宗師として相応しい器を有したことにより下馬評が変化したことで、彼とは互いを讃え合いつつも宗師の座を巡って覇を競うこととなる。


キャラクター像

猪王山様


獅子をも思わせる豪壮な黄金の鬣と牙を誇る巨躯ののバケモノ。


周囲を常に思いやり、誰に対しても物腰柔らかに接する謙虚かつ慈悲深い性格で、街の議員を務めている他、主宰している「見廻組」は警察活動の一部を担っている。その誇り高さから息子二人を始め大勢の住民たちから多大な尊敬を集めている。次期宗師に立候補した理由も、その立場への執着心ではなく周囲からの推挙に応じたためである節が強い。自らの能力を誇示することもせず、息子二人に対しては「力は見せびらかすのではなく優しさのためにある」と教示している。


街では乱暴且つ常識を弁えない気質である故に住民たちからは快く思われていない熊徹に対しても気さくに接しているが、劇中で初めて2人が対面する場面では多忙の身であるにも関わらず猪王山の方から気軽に彼に声を掛けており、対する熊徹も快く返事を返していることから、以前より交友関係にあったことが示唆される。


その慈悲の念を向ける対象は一般のバケモノから疎んじられている人間も例外ではなく、若かりし頃に人間界を訪れた際には路地裏に遺棄されていた一人の人間の遺児を不憫に思い情けをかけている。


しかし太古にバケモノが人間の持つ""と呼ばれる存在を恐れその交わりを絶った史実から、バケモノと人間は一切交流せず別々に暮らした方が双方のためになると考えており、熊徹が九太を弟子にしようとした際はそれを必死で引き止めようとした(最も、これに関しては別の意図もあったと思われる)。


武芸の実力も渋天街随一であり、同じく実力者である熊徹とは互角に渡り合える。決闘の際は、相手が誰であっても礼儀作法と敬意を忘れず開始前に必ず一礼をする。武芸のスタイルは形に沿ったものであると言え、後述のように体得には専用のフィールドが必要になると思われる。ただし熊徹のような形に囚われない武術に裏をかかれることもある。


自宅は街の東部にある丘の一等地に所在し、渋天街屈指の美術館を思わせる大豪邸である。最もこれは自身の力を誇示するためというよりは、彼の自宅が「見廻組」の稽古場や事業所、多数の弟子や従業員たちの社宅を兼ねていると思われ、実際の家族の生活スペースは全体の極一部である可能性もある。


一見すると非の打ち所がないように思えるが、周囲の為を想うあまり自らの悩みや問題を後回しにして一人で抱え込んでしまうあまり、彼のそういった側面に目を向けてくれる者がごく僅かしかいないなど、人知れず苦悩を抱えている一面がある。また家族を大切に想う一方で日頃より街の執政に尽力しているために家庭とあまり向き合えていない。そのため、常日頃から九太と触れ合っている熊徹を何処か羨望している節がある。


こうしたことから双璧を成す熊徹とはあらゆる面で対照的であると言えるが、一方で権力や物欲に対する拘りはない他、バケモノからは奇異の目で見られる種族を育てているなど、共通した点も見受けられる。


最終的に次期宗師を正式に決する闘技試合で、熊徹と熱戦を繰り広げた末惜敗。試合後、九太と勝利を喜び合う熊徹の姿を見て記事冒頭の讃辞の言葉を二人に送った。


しかし彼の敗北は、その誇り高さが裏目に出たことを起因し、これから起こる惨劇の引き金となる


評価


※以下、物語の核心に触れるネタバレが含まれています。


主人公サイドのライバルポジションにあり尚且つ社会的地位も高い上に目指す目標の筆頭候補者であるにも関わらず、厭味を一切感じさせないばかりか紛うことなき人格者であるキャラクター性から、熊徹よりも寧ろ彼を支持する鑑賞者は決して少なくない。


しかし終盤にて一郎彦の悩みに応えきれていなかったことが判明し、それが彼の暴走を招く一因となったことから、対照的に終始九太と向き合っていた熊徹との比較もあり、そんな猪王山に対して厳しい意見を唱える者もいる。実際説得するための方便とはいえ、九太を育てようとする熊徹に対し一郎彦がいる前で人間の危険性を述べた上に「これは皆んなのためだ」と発言したことが彼の自己肯定感を下げる一因となったことは否定の仕様がない事実である。何より彼自身もまた人間を育てている身でありながら、そのような注意勧告をするのは如何なものかと言える。また上記のように一郎彦が自身の悩みや素性に関しての疑問に対して明確な答えを示さなかったばかりか、事態が悪化するまで彼の闇が肥大化していたことを把握できなかったことも指摘されている。


ただし擁護すると、これらの要素は一郎彦の闇堕ちには直結しておらず、真の要因は己の弱さを否定するあまり周囲を信頼せず蔑んでしまった一郎彦自身の愚かさである


事実それぞれに差異はあれど、一郎彦と同様の境遇にあった九太、熊徹、二郎丸、の4人は他者との交流により互いを認め合うことで次第にそれを憂いる、傲るといったことをしなくなり、自らの弱さ、至らなさ、不甲斐なさからも逃げたりせず真摯に向き合い克服していることから、彼自身、この4人のうちの一人にでも自らの弱さや悩み、秘密を打ち明けていれば闇の増幅を抑えられていたことは言うまでもない。


また猪王山自身上記のことを把握していた可能性があり、更に九太を含めた一郎彦を取り巻く者達は彼に対して好印象だったことや、普段の一郎彦の他者への対応から察するに、彼は表面上では周囲に愛想良く振る舞っていたことが伺え、その様を見た猪王山は一郎彦が九太たちとの交流で闇を克服出来ていると思っていたのであろう。言うなれば、猪王山はそれ程にまで彼のことを信頼していたということでもある。このことから、一郎彦の闇落ちの責任を彼に追及するのは余りに酷であると言える。


尚、一郎彦が闇を克服出来る環境が出来上がったのは他でもなく卯月が九太を街に住む許可を出したためである。卯月は以前より一郎彦がバケモノではなく人間であること、そして彼が闇を宿しつつあったのを見抜いていたことから、九太を街に住まわせたのはその対処であったといえる。猪王山は彼のこの対応を「どうしてそう熊徹に甘いのですか?」と疑問を呈していたが、皮肉なことにその恩恵の対象は熊徹だけでなく自身にも向けられていたのである。


他にも、彼自身の一郎彦への対応や待遇も決して問題があったわけではない。一つに彼に「一郎彦」という高尚な名を付け自身の世継ぎとし続けていたことが挙げられる(次男の二郎丸は厄除けを意味した平凡な名であることから、後述する待遇の違いも含めて確定的と見られる)。猪王山がその気になれば一郎彦を廃嫡にして唯一の実子である二郎丸を新たに嫡子に据えることはいつでも出来たにも関わらずそれをした様子はなく、それは即ち他でもなく彼の能力と人格を自身の後継として相応しい器と見込んでいたために他ならない。現に一郎彦はバケモノ社会で将来有望な人材と見込まれたごく僅かな者しか受けることの許されない高等教育を受講していたり、上述のように普段は他者に対し物腰柔らかに振る舞っていた。更に彼は青年に成長して尚も九太や二郎丸と馴れ合っていた様子もあることから、猪王山は一郎彦が他者と積極的に交流することも許していたことは明確である。恐らく自身が多忙故に思うように一郎彦と向き合えずにいたことから、その代わりに九太や二郎丸といった身辺者たちを彼の闇の肥大化を防ぐ存在として信頼していたためであろう。


そもそも彼が我が子らと触れ合う機会が少ないというのは飽くまで熊徹や他の一般家庭と比べればの場合であり、猪王山自身も業務中であっても街中で一郎彦と二郎丸を見かければ2人と気さくに会話を交わしたり、一郎彦の悩みに対しては本人が望んだ回答ではないとはいえ「何があってもお前は私の息子だから心配は要らない」と抱きしめながら励ましの言葉を掛けるなど、可能な限り家族との関係を大事にしていた。


上記の熊徹を咎める行動も、九太の存在によって一郎彦がより自身の正体に感づき闇が深まるリスクがあるためである。第一本来としては猪王山やバケモノ社会の世俗的な考えのようにバケモノと人間は価値観の違いや闇の存在などから互いに別々に暮らした方が寧ろ望ましいのであり、にも関わらず熊徹と九太が何にも変え難い信頼関係を築けたのは両者が社会から爪弾きにされた者同士からくるシンパシーや、熊徹自身が常識に囚われないリベラル思考だったがためであるなどという、極めて奇跡的な要因が重なったが故の特例である。そのため九太と熊徹が良き関係を築けるということは、本来バケモノであれば誰しもが想像できるはずはないのであった。そのためもし熊徹が九太の育成に失敗した場合、九太が渋天街に於いて蛇蝎視されることは明らかであり、そうとなれば一郎彦の人間というアイデンティティは益々彼にとってコンプレックスとなり、闇も増幅されていったであろう。故に猪王山のこの行動はなんら不自然ではなく、「これは皆んなの為」という発言も一郎彦と他のバケモノ達全てを想いやったがためのものであった。


これらのことから、一郎彦の凶行がどれほど彼からの配慮を踏み躙ったかが伺える。そもそも初めの次期宗師決定戦に於ける熊徹への殺人未遂からして猪王山の名誉を穢した愚挙である(上記の「力は見せびらかすのではなく優しさのためにある」という教えに反している他、試合の結果に納得が出来ないのであれば卯月やレフェリーなどの権限ある者に抗議して勝敗のやり直しを要求すべきだった)。


しかしながらそんな彼がラストで救われたのは、他でもなく猪王山を始めとする一郎彦を取り巻く者達の、彼に対する温情故である。実際コンプレックスから逃避するためとはいえ、一郎彦は猪王山を見習い彼の後継人として相応しい人物となるべく武芸、勉学に幼い頃から励み続け、他者に対してもリーダーシップを存分に発揮しつつ物腰柔らかに立ち振る舞い、間違いを犯した者は例え二郎丸のような身内の者でも厳しく叱責するなど、紛れもなく大いに評価される要素を持ち合わせていた。故に九太や二郎丸といった周囲の者たちの彼への信頼感も大きかったと言え、だからこそ一郎彦が闇堕ちした際、九太は飽くまで闇を祓い彼を救い出すことを目的として闘い、二郎丸はそれでも尚一郎彦のことを自身の兄と慕い続けていた。即ち、彼が闇から解放されるには猪王山の存在が不可欠だったのである


因みに異種族の子供にその正体を隠すよう促させるのは、実は前作の『おおかみこどもの雨と雪』の主人公・自身の子供達に対して行っていた教育方針のそれである。また周囲から尊敬された人格者でありながら、養子に迎えた複雑な事情を抱えた子供が自身に反抗し世界を危機に陥れる切っ掛けとなった境遇は、前々作のサマーウォーズの主要人物の一人である陣内栄と共通している。それを踏まえると彼は花と栄のキャラクター性を焼き直したキャラクターであるとも言える。


以上のことから、猪王山はその高名に違わぬ精神と所作を持ち合わせた正真正銘の人格者であることが明らかである。


最終的に熊徹の覇権争いに敗れ尚且つ完全に当人の非とはいえ一郎彦の闇堕ちを防げなかったが、彼もまた宗師を務める者として相応しいバケモノであると言えるだろう。


余談

モチーフ動物について

彼のモチーフである猪は、熊徹のモチーフであると並んで山間部に生息する代表的な動物の一種である。


繁殖の習性として、雄は雌との交尾を終えるとすぐさま他に交尾の相手となる別の雌を探しそれまでの雌とは関係を断つことから、雄は原則して子育てをすることはない(因みにこれは熊も同様である)。


また上記で山間部を代表する動物と記述したが、実は江戸時代ごろまでは平地にも生息していたものの、人間が活動範囲を広げたことに伴い、次第に生息域を山間部へと追いやられていったという。


これらのことを踏まえると、子育てをすることのない雄猪である猪王山が、猪を山へと追いやった人間の一郎彦と真に向き合えなかったのは、ある種必然だったのかも知れない。


因みに猪を家畜化した動物がであることから、厳密にはと同種のバケモノであると言える。


ネーミングから連想される意味

彼の名前の一字である「山」の字は「ぜん」と読むことから、これに違和感を感じた鑑賞者は少なくないであろう。


この読み方をする実例としては、中国地方に所在する火山群「蒜山(ひるぜん)」と「大山(だいぜん)」が挙げられる。地元ではこの山々を古来より山岳信仰の対象として敬っていた風習が存在する。即ち、「ぜん」と読む山は神聖な山を意味する


このことから「猪王山」という名は、「神聖なる場を統べる猪の王」という解釈が出来、正に誇り高き彼を冠していると言えよう。


ちなみに角界には江戸時代後期と昭和中頃に「猪王山」(読みは「いおうざん」)という四股名を冠した力士がそれぞれ2名実在(参照①参照②)しているが、無論偶然の一致で本作とは無関係である。


関連イラスト

センシティブな作品猪王山

我らの息子たちに乾杯!自慢の息子


関連タグ

バケモノの子 一郎彦 二郎丸 熊徹 卯月


バケモノ 渋天街 宗師


人格者


共通性のあるキャラクター

陣内栄花(おおかみこどもの雨と雪)…上記の通り、監督の前2作にて猪王山と共通点のあるキャラクター。


アルバス・ダンブルドアオビ=ワン・ケノービシルバーファングレイア・オーガナ夜神総一郎…いずれも多大なる能力に秀で、周囲からも絶大な尊敬を集める人格者であるが、教え子の一人弟子の一人我がが悪へと堕ちたという憂き目に遭ったキャラクター繋がり。ついでにシルバーファングとは中の人繋がりでもある。


ケニー・アッカーマン…同じく中の人繋がり。拾った孤児に武の心得を教え込み、後に敵対する様も共通。

問題を報告

0/3000

編集可能な部分に問題がある場合について 記事本文などに問題がある場合、ご自身での調整をお願いいたします。
問題のある行動が繰り返される場合、対象ユーザーのプロフィールページ内の「問題を報告」からご連絡ください。

報告を送信しました

見出し単位で編集できるようになりました