概要
人間の上位種族であるバケモノが形成した街の一つ。現宗師(元首)は卯月。
バケモノ界屈指の大都市で、総人口はおよそ10万3千人。
渋谷スクランブル交差点=大広場、渋谷109=給水塔、代々木体育館=闘技場、など人間界の街である渋谷を連想させる街並みをしている。これはバケモノ界と人間界が互いに「響き合った」関係にあることに起因すると思われる。
しかし近代的な街並みをしている渋谷とは対照的に、建物は確認される限り全て木造建や石造りであり、道路もアスファルトで整備されていないなど、クラシックさが感じられる。一方マンホールが確認されていることから水道や、電気は供給されている模様。その他、和風の他に南欧やラテンアメリカの趣もある和洋折衷な雰囲気がある。
この地域では武芸を重んじた文化が特徴的で、街の宗師となるための第一条件として武芸の実力が求められいる。現に卯月は史上最強と謳われる程の実力者である他、次期候補者の熊徹と猪王山も街では指折りの実力者である。
他にも布の生産が盛んであり、街の至る所に色とりどり多種多様な布が装飾されていることから「布の街」とも称されている。
教育施設(学校)や「元老院」と呼ばれる議会の設置、治安維持活動が許可されているなど、人間社会と共通している点も見受けられる。
学校は身分限らず子供であれば誰でも通うことが出来、そこから更に優秀と見込まれた生徒は高等教育の受講資格を得る。
ただし熊徹はバケモノの人間が交わりを絶った原因を認知していなかったことを踏まえると、彼が青少年の頃には一般階層の住民にまでは教育制度が普及していなかった可能性もある。
治安維持に関しては、猪王山率いる「渋天街見廻組」という組織がこの一部を担っており、人間界とは異なり警察は組織として構成されているわけではなく複数の団体が協力し合い取り組んでいるか、渋天街にも警察組織が存在しその活動の一部を見廻組に依頼しているかのどちらかと思われる。
議会が存在していることから、街の政治は議会制であり卯月だけに特別決定権があるわけではない模様(とある人物が問題を起こした際も、その処遇を巡る会議が卯月と複数の議員たちで行われている)。議員は如何にして選定されるかは不明。
住民は熊や猪、猿、豚、うさぎ、水牛、狼、ロバなど、主に東アジアに生息する動物のバケモノが大半を占める。一方カバなど東亜地域以外に生息する動物のバケモノも少数ながら確認され、それらの住民は他地域から移住してきたのかは不明。
服装は男性のみ年齢身分限らずシャツにサルエルパンツを思わせる七分丈の袴を履き、腰には帯を巻くことが定められている。
柄や着こなしに関しては個々の自由のようで、例えば熊徹は帯を必ず左側に締めている。一方女性には服装に関する縛りはないようだが、熊徹に弟子入りした者は女性であっても先述の服装をしていた。
武を重んじた風情故に帯刀している住民もいるが、卯月によって抜刀は禁止されているため、使用する際は刀を鞘に収めたまま闘うことが作法となっている。
永らく卯月による統治が続いていたが、その彼が八百万の神への転生を宣言したこと、そして1人の人間が住み着いたことによって、街は大きな転換期を迎えつつある。
主な住民
宗師
渋天街の現宗師。長きに渡り渋天街を治めてきたが、高齢から引退を決意する。その座を務めるのに相応しい寛容かつ温厚な気性の持ち主で、当然ながら住民たちからの敬慕ぶりは絶大である。粗野な熊徹や人間の九太にすら慈悲深く接する。
次期宗師候補者
渋天街屈指の武の達者。しかしながら日頃の不遜な振る舞いと慣習を軽んじる気質から多くの住民たちから疎ましがられ、次期宗師に立候補しても当然ながら支持は皆無であった。しかし人間の九太と出会い彼と切磋琢磨していく内に真っ当な武者としての気前が整い、次第に次期宗師候補者としての支持を得ていく。
卯月に並ぶ渋天街の人格者。武芸の実力はさることながら、街の議員や警察活動の一部を担う「見廻組」の主宰者も兼任し、卯月までとは行かずとも街に於いては多大な権限を持つ。次期宗師候補者としての支持も当然ながら絶大である。妻帯者であり、その妻との間には一郎彦と二郎丸を設けている。家族を何よりも大切に思う反面、一郎彦の悩みに応え切れないなど、人知れず苦悩している一面がある。
次期宗師候補の関係者
ひょんなことから熊徹の弟子として渋天街で暮らすことになった人間。当初こそ熊徹といがみ合っていたが、宗師謁見の旅や熊徹の日頃の動作を観察するなどして独力で武芸のノウハウを身に付けたことで次第信頼関係を築いていき、遂には武芸を極め人間であるにもかかわらず渋天街のバケモノたちから慕われるようになる。青年に成長してからは自主行動が目立ち、楓を通して人間社会について学び始めるようになる。人間としての名は蓮。
熊徹の友人の一人。皮肉屋なお調子者。九太に対しては長続きしないだろうと思い素っ気なく振る舞っていたが、彼が武芸の実力を身に付けてからはそれを改め、遂には九太の良き理解者の一人となる。彼が決死の闘いに赴く際には、九太から今まで自分の成長を見守って来てくれたことに対する礼を百秋坊と共に受け、それに号泣して見送った。
熊徹の友人の一人。温厚篤実な僧侶。熊徹の弟子として渋天街に暮らすことになった九太に、家事やバケモノ社会の慣わしなどを教え込む。
猪王山の長男。名前からして彼の跡取り息子であることが窺える。父親譲りの才覚と品性を兼ね揃えているが、九太と熊徹を異常なまでに嫌悪するなどの不可解さも見せる。
猪王山の次男。父や兄を多大に慕い、九太と出会い彼の武芸を目の当たりにしてからは九太とも交流を深める。当初は人間を蔑むこともあったが、改心後は偏見や先入観に惑わされず自らの判断で物事を決める好青年へと成長。