錬金術師とは、錬金術を研究する人のことである。英語では『アルケミスト』【Alchemist】という。
概要
錬金術を研究する者たちの総称。
錬金術を用いて、世界の真理を読み解こうとしたのが彼らの目的であった。その研究は、現在の化学に直接つながっており、同時に魔術や占星術などのオカルト方面にも大きな影響を及ぼした。
目的
彼らの最終目的は『卑金属から貴金属を生み出すこと』であり、突き詰めれば『錫や鉛などの安価な金属を金に変換する』ことを研究することを目的としていた。
そして、そのために必要な賢者の石の製造法を見つけ出し、それを作りだすことを至上の命題としていた。
発展と衰退
12世紀前後の十字軍の遠征の影響で、中東から錬金術が入ってきたことをきっかけに西欧で錬金術が復活する。キリスト教会の影響で科学の伝承がいったん途切れた西欧では、錬金術は魔法に見えたに違いない。錬金術本来の目的である金の錬成はできなかったものの、金属めっき技術の開発や薬の製造など、実際的方面にも多くの応用がなされた。
以後、19世紀になるまで盛んに研究がすすめられ、数多くの化学物質の発見や、化合物の精製が試みられてきた。現在、化学実験などで使われる多くの実験器具がこの頃に創造されたものである。
だが、イギリスの錬金術師ロバート・ボイルらにより物質がそれぞれに固有の原子で構成されていることが示唆され、化学への歩みがはじまる。もっとも、ボイルたちのような自然学者が当時は錬金術師とみなされていたことからわかるように、錬金術は当時はオカルトなどではなく、『真理の探究』 『創造主である神の恩寵を解き明かす行為』であり、自然学の営みのひとつであった。
「近代化学の父」アントワーヌ・ラヴォアジエが登場すると、近代科学である化学が確立し、骨子である『金の錬成』が明確に否定される。この時点をもって錬金術は歴史的役割を終え、化学に発展解消していった。
徐福伝説
司馬遷の『史記』巻百十八よれば、中国の王朝の1つである秦の時代、始皇帝に仕えていた徐福という方士が「東方の三神山には不老不死の霊薬がある」と具申して3000人の若い男女、多くの技術者を従え、五穀の種を持って東方に向け出港していったが、ついに霊薬を見つけて帰ることはなかったという記述が残されている。
あくまで伝説の1つにすぎず、徐福が西洋にいう「錬金術師」にあたるかどうかもわからないが、そういった類の研究は洋の東西を問わず行われていたのはたしかではないかとも思われる。
創作・フィクションでの『錬金術師』
錬金術を「魔法」に学問的なリアリティを持たせる用途として取り入れた作品はたまにあったが、 『アトリエシリーズ』などに代表されるように、研究者としての色合いを濃く出したものがほとんどであった。
これが『鋼の錬金術師』の人気とともに一転し、錬金術をバトル要素として取り入れる作品が多数登場するようになった。
現在では、いわゆる鉄板ネタの一つとなっている。
……で、結局金を創り出す事は果たして可能なのか?
結論から言えば、可能だが無駄である。
原子物理学が発展した現代の技術であれば、昔から錬金術の材料としてよく用いられてきた水銀を用いて、原子炉内で中性子線を照射し続ければ核分裂で金を『錬成』する事は理論上可能である。実際にこの「原子炉錬金術」の研究を行う物理学者も存在している。ある意味では、こうした原子物理学者の一部が現代の(科学者としての)錬金術師と言えなくもない。
ただし、すべての水銀原子が中性子線の照射で必ず金になる訳ではなく、水銀原子全体の約666個に1個の割合で存在する「Hg-196」という同位体でなければうまく金を作る事が出来ない(それ以外の同位体に当てても、金以外の別の原子に変化するだけである)。そのため、仮に1Lの水銀に1年間ずっと中性子線を当て続けたとしても、生み出せる金は精々10g程度に過ぎない(とはいえ、元々のHg-196が水銀1L中に20g程度しか含まれていないと考えれば、その半数が金に変換されているので、これでもマシと言えるのかもしれないが)。
要するに、現段階では技術的には金の錬成は可能だが、錬成すればするほど大赤字になるだけなのである。
関連タグ
史実上で有名な錬金術師
アイザック・ニュートン 科学者として有名だが、後半生は錬金術の研究も熱心に行っていた。
創作・フィクションでの有名な錬金術師
および作中での錬金術師たち
○パラセ・ルシア(すっごい!アルカナハート2 ~転校生 あかねとなずな~)
及び、アトリエシリーズの登場人物たち
○レザード・ヴァレス(ヴァルキリープロファイルシリーズ)