概要
主人公エドワード・エルリックと同じく国家錬金術師であり、二つ名は「焔(ほのお)」。物語序盤は東方司令部勤務だったが、後に部下たちと共に中央司令部に栄転する。
エルリック兄弟の経緯を知る数少ない一人。
彼らのことを表面上は「利害の一致から協力している」としつつ、内心では若くして禁忌の対価を背負うことになった兄弟を気にかけている。
人物像
1885年生まれ。年齢は29歳(連載開始時)。
黒髪のショートヘアに、キレ目から覗く黒目が特徴。
非常に女好きであり、普段から女性に対し社交的に接しつつ口説いたり、ときには軍部の電話を介して目当ての女性(ホステス)と長電話をしたりなど職務怠慢な態度を振る舞ってみせている。しかし、その内面は「国を変える」という強い意志を秘め、大総統(国家元首)の座を狙う野心家であり、そのためであれば周囲を欺く狡猾さを併せ持った策士でもある。
心を許した仲間への情は厚く、部下たちとの信頼も強い。普段は突っぱねるような冷たい言動を用いることもあるが、仲間の危機には自らを顧みず危険に身を投じるなど激情を露わにすることも。一方で、若くして佐官となった経緯から、上層部からの風当たりは強い。
因みにコミックス15巻での質問コーナーにて「もし実写化するならキャストは誰?」という質問に対し、マスタング役は「及川光博」という意見で会合一致したらしい。なお、2017年放映予定の実写映画ではマスタング役をディーン・フジオカが担当することとなった。
来歴
明確な出自は不明だが、父方の叔母にあたるクリス・マスタングを養母として育ち、青年期にはリザ・ホークアイの父親の下で錬金術の基礎を学んだとされる。
「錬金術は大衆のために」とする師の教えに同調しつつ、国家錬金術師を「軍の狗」と呼び否定する師とは対称的に「軍に属することも民衆のためにつながる」という想いから士官学校に入校する。間もなく病没した師が今際の際に呟いた“秘伝”を直接伝授されることはなかったが、忘れ形見であるリザがマスタングの志を信じ、彼女の背中に彫られた錬成陣を解読することを承諾。師の秘伝である「焔の錬金術」を会得し、国家錬金術師資格を取得した。
イシュヴァール人殲滅戦では、その錬金術により多くのイシュヴァール人を葬り、彼の指揮下にあった兵たちからは「英雄」と賞賛されるが、当人は自身や師の錬金術の根幹であった民衆を殺戮するという矛盾した行為に葛藤し、理想と現実の差に打ちのめされる。同時に、この一件が「国そのもののルールを変える」という考えへと繋がり、自らが大総統にならんとする野望を抱くようになる。
イシュヴァールでの戦績により中佐にまで昇格し、戦後は東方司令部に配属される。司令官であるグラマン中将からは、その本質に己と重なるところもあることから気に入られ、策謀の手ほどきを受けつつ重用される。中将からの教えもありその野心を他人に悟らせぬよう、表向きは「女好きな遊び人」を演じつつ、養母であるクリス(源氏名マダム・クリスマス)をはじめ、彼女の営むバーのホステスたちを情報源に国家の情勢を把握し、軍人としても着実に実績を重ねていくことになる(クリスとの関係も、周囲には「常連客」という形で濁されている)。
能力
「焔」の二つ名の通り、火を自在に操る錬金術を得意とする。
原理としては、燃焼の三要素である【燃焼物】・【酸素】・【点火源】を錬金術によって生成(用意)することで炎を起こすというもの。具体的には対象を【燃焼物】とし、錬金術で【酸素】の濃度を調節、そこに錬成陣の描かれた発火布(強い摩擦で火花を発する特殊な布)で作られた手袋で指鳴らしを行い火花を起こし【点火】している。
弱点として、その性質上【水】との相性はすこぶる悪く、発火布が濡れる・湿ることで点火源である火花を出せなくなるとこの能力を発揮できない。特に雨天下での戦闘は完全に無力化するため、ときには味方(それも部下)から「無能」の烙印を押されてショックを受ける、という(ギャグ)場面があった。アニメ『FA』ではこの対策として、ホークアイ中尉に大量の予備手袋が入ったカバンを持たせているという描写も存在する。原作においても、ある戦闘ではライター(の発火石)を使用している。
上記の弱点を除けば作中において射程・威力・攻撃範囲・命中精度の全てにおいてトップクラスの戦闘能力を持ち、「遠距離戦」と「範囲攻撃」においては間違いなく作中に登場した人間キャラの中で最強である。ホムンクルス達からも「人柱候補」の中では一番厄介と評されている。火力に関しても自由自在であるらしく、相手の眼球を狙ってのピンポイント射撃も可能なら、一瞬で相手を消し炭レベルまで炭化させる大火力も作り出せるなど、その戦術は幅広い。また、水を分解すれば酸素と水素であるため、火種が別にある場合は、大量の水は逆に彼に凄まじい爆発力を与える事になる。
「真理」に触れたエドほどではないにしろ錬金術の知識は深く、ときには炎以外の錬成も行っている。ちなみに彼の研究文書の暗号は「女性の名前」。
人間関係
副官であるリザ・ホークアイ中尉は、マスタングの錬金術の師匠の娘であり、お互いに軍役に就くより以前からの知人関係である。前述通りマスタングの志に同調し、父の死後は自身も士官学校に入るが、結果、共に内乱で多くの一般人を殺害することになる。戦後は自らの背中をロイに焼かせ、これ以上「焔の錬金術」の被害が広まることを食い止めるとともに「理想のために手を汚すのは自分たち軍人だけでいい」という考えに至り、軍に残る。マスタングは自身の背中を彼女に守らせるとともに、道を踏み外せばいつでも粛清できるようにと常に傍に置いている。強い信頼関係で結ばれており、ホムンクルス側にはマスタングの動きを封じたり、人体錬成を強要するために彼女を人質に取られた。
また彼女と同じく、東方司令部ではケイン・フュリー、ヴァトー・ファルマン、ハイマンス・ブレダ、ジャン・ハボックと、それぞれ抜きん出た長所を持つ有能な部下を複数見出した(→マスタング組)。
マース・ヒューズとは士官学校以来の仲であり、先の内乱にて再会を果たした。ブラッドレイ大総統への不満に同調しており、彼の国盗りに助力・助言するなど軍の中にあって信頼する親友であった。そんなヒューズを殺した真犯人を知ったときは、烈火の如く憤怒し瀕死になるまで焼き尽くした。
エルリック兄弟とは、内乱後の軍の人手不足を補うため、有能な錬金術師を推挙するという目的で接触することになる。このとき、兄弟の犯した錬金術の禁忌である「人体錬成」の惨状を目の当たりにし二人を叱責するが、同時に絶望する兄弟に憂慮してか、国家資格を得ることで元に戻る研究が出来るなど目標を掲示すると共に拍車をかけ、二人が立ち直るキッカケを作っている。
2003年アニメ版
2003年版における彼は、イシュヴァール殲滅戦の際に軍の命令で「とある人物の両親」を殺害(銃殺)したということになっている。この出来事はトラウマとなっており、射撃が全くダメになっている(原作で一般的な軍人と同等かそれ以上の腕前)。
終盤では、錬金術師ライラの部下であるキング・ブラッドレイ(本作では“傲慢”のホムンクルス・プライド)の邸宅を襲撃。ブラッドレイとの一騎打ちに挑む。無限に再生するホムンクルスを相手に苦戦を強いられるが、最後はプライドの慢心が招いたミス(弱点である素体の断片を収めた金庫の鍵を養子セリムに託したが、セリムが「父の大事なもの」を守ろうと持ち出してプライドに渡しに現れた)により形勢は逆転し辛くも勝利をおさめる。
しかし直後、油断したマスタングを政敵であるフランク・アーチャーが急襲。ホークアイ中尉の助勢でなんとか危機を退けるも、アーチャーからの銃撃で左眼を失明する。以降は、眼帯を着用するようになった。
続編である映画『シャンバラを征く者』では、軍の暗部を明かした功績から准将に昇進するが、すぐに自ら志願して伍長にまで降格し、誰もいない極寒の北部の警護の任に就く。様子を見に来たかつての部下たちを敬礼で迎えるが「似合わない」と返され、中央への復帰を願われた。
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残念なイケメン・・・上記の関係でネタ扱いされる。