魔夜峰央
まやみねお
概要
埼玉県ではなく新潟県新潟市出身(「杉と男は育たない」で知られる旧新潟市域)、神奈川県横浜市在住。現在の少女漫画家では珍しい男性作家である。
本名及びデビュー当時の名義は山田峰央だったが、山田ミネコと紛らわしかったため名字を弄った現ペンネームに改名。
愛称は「ミーちゃん」。これは自称ではあるものの、幼い頃から親類にそう呼ばれていたのが由来。
1973年デビュー。デビュー当初はオカルト・ホラーもしくはミステリーが多かった。デビュー当初は繊細で耽美な絵柄を得意とし、妖怪や悪魔が登場する怪奇ものを中心として発表していた。しかしその方面では今ひとつ人気が出ず、ギャグ漫画に切り替えてブレイクを果たす。
『パタリロ!』は1982年にテレビアニメ化、翌年映画化。この時、声優と主題歌「RUN AWAY 美少年達(ローズボーイズ)!」の歌唱を担当、美声を披露している。
『パタリロ!』は少女漫画界では随一の長期連載作品(連載誌を移る間短い中断期間がある)となり、2016年に舞台化。主演の加藤諒の怪演が「はまり役」として話題になり、2019年に舞台版と同じメインキャストで二度目の映画化がされた。また、これに先立つ2015年に『翔んで埼玉』がリバイバルヒット。映画版が2019年2月に二階堂ふみとGACKTのダブル主演で公開されると、各地でロングラン上映となる大ブームを巻き起こした。
人物
ミーちゃん28歳と名乗る、永遠の28歳。非常にノーブルな雰囲気を持つお洒落な紳士。素顔でメディアに登場することも多く、サングラスとオールバックの髪型がトレードマーク(スタイルがタモリとかぶったのは偶然)。『パタリロ!』のアフレコ現場に、ダークスーツに真っ赤な薔薇の花束を抱えて現れ、しかもそれが様になっていたためパタリロ役の白石冬美を「リアルバンコラン」と驚かせたことがある。一方では下ネタも嗜むお茶目なお方でもあり(BL作品を読んでいたまだ幼い娘から「やおい」の意味を聞かれた時に「やめて おしりが いたい」と言ったらしい。しかもさらに娘から「ザー○ン」の意味まで聞かれた上に「ラーメンとザーサイを一緒に注文する時に略して注文しないように」という忠告(?)までしたらしい)、担当編集者が落差にショックを受けたという逸話がある。
このペンネームでありながら現在でも女性作家とよく勘違いされるという。
黒づくめのスタイルは私生活でのラフなスタイルでも通しているらしく、傍から見ると誘拐犯に見られた事も。
また、そんな黒づくめな紳士スタイルゆえに後述の娘・マリエの授業参観に現れると只者ではない感がすごく目立っていた上に同級生からは「マリエの家は吸血鬼の館みたいな家」だの「忍者屋敷」だの想像されたらしい。
漫画家稼業の傍ら、家事をもこなし、幼い頃の娘達の弁当を作ってたりと家族愛が強い。
猫を飼うようになってからはかなりの親バカならぬ猫バカな可愛がり方をしているらしい。
また、潔癖症である事でも知られており、特に自身のテリトリーである仕事場は絶対で家族でさえ入るのもはばかられる程だという(しかも愛猫でさえも入れない)。
オカルト、宝石、落語が好きで、作品にもその分野の知識が活かされている。作品にはやたらと美少年が登場し、BL要素があふれることで有名だが、これはミーちゃんが女性キャラクターの造形を苦手としており、「胸のふくらみを付けると全部同じ性格になってしまう」のが理由である。また、バレエを描くのも実は苦手…と、言うか描くとバレエを本職とする妻から細かいところまでポーズの描写を指摘されるかららしい。
また、ご本人にはその気は一切なく、一時は同性愛者からそのあたりを誤解されたファンレターが殺到してしまい、非常に困惑したという。
なお、当初宝石コレクションは趣味ではなく、新潟から関東に出てきた際に「災害で簡単に持ち出せる財産が欲しい」と考えた故に始めたものである。
酒どころとして知られる新潟出身だけあり、「毎日ウイスキーのボトル1本を開ける」「日本酒ならば三升は開ける」という大変な酒豪だった。それでいてほとんど乱れることはなかったらしいのだが、呑みすぎて食道がんを患い肝臓も悪くし、以来酒量をかなり減らしたという。
なお、医者嫌いだったらしく基本寝れば治る派だったがさすがに娘が心配を通り越して憤慨して検査に連れて行った事が身体の不調の正体や食道がんの早期発見に繋がったエピソードがある。
『パタリロ!』は1990年に「花とゆめ」での連載が終わり、掲載誌を移るうち人気も下火に。他の仕事も減り、2010年代の前半に自身によれば「冬の時代」という低迷期に入り、(呑みすぎによる)体調不良で漫画が描けなくなる(娘によると手の震えが出ていた等)。借りていた仕事場の家賃滞納(それでもかなり待ってもらえたらしい)、宝石のコレクションを売る、貯金を取り崩す、妻のバレエ教室からの収入に頼る、ついには自宅を売り払う寸前に陥るなど苦しい時期だったという。
しかし2015年に(かつて住んでいた)埼玉県を扱った自虐系ギャグ漫画『翔んで埼玉』が突然のリバイバル&大ヒット、まさかの代表作入りを果たす。『パタリロ!』も2016年に上演された舞台化作品が当たり、完全復活を遂げた。
家族
妻の山田芳実と娘の山田マリエはバレエ講師で、息子の山田真央もバレエ団員、魔夜本人もバレエを嗜んでいるというバレエ一家である。ただし、ミーちゃん以外は全員講師以上のレベルなのでバレエのみ、家族ヒエラルキーが逆転する。
奥様との年齢差はバンコランとマライヒの二人と同じであり、出会った頃は本当にバンコランとマライヒの作中年齢設定と全く同じだったというエピソードがある。やきもち焼きなマライヒの性格も奥様にそっくりだとか。マライヒの前髪を前に垂らす髪型のスタイルは本当にそっくり。ただし、マライヒの登場は奥様と出逢う以前である為、正確には奥様はマライヒのモデルではない(魔夜の家族エッセイ漫画「親バカ日誌」と娘マリエの「魔夜の娘はお腐り申し上げて」「魔夜の娘はお腐り咲いて」でも妻(母)はマライヒとは殆ど似ていない)。ただし魔夜が奥さんを描く場合はかなり気合いが入っている様子。
その奥様とは互いが運命の出会いだと感じたという。以来、「アウト×デラックス」出演時にも「愛してるよ(はぁと)」「大好きです(はぁと)」と堂々と語り合い、マツコを呆然とさせるほど夫妻はラブラブである。大の愛妻家に加え家族思いでもあり、御本人のエッセイからも読み取れるように家族に対する愛情が非常に深い。なお、娘の漫画によると夫妻が出会ったのは「魔夜峰央ファンクラブのお茶会」だった。ちなみに妻はその時はまだ高校生だった。その出会いはまさに一目惚れかつ互いに電撃が走った感覚がしたという。さらに言うと魔夜は妻を初めて見た時「絶対この娘は歳を重ねる毎に綺麗になっていくタイプの美人」と確信していたらしい。なお、妻の方は暑い夏なのにダークスーツに身を包んで現れた魔夜を変な人と思っていたようだ。
ちなみに家族で出かける時はリアルバンコランと称される程の父を筆頭に家族全員傍から見ると只者ではないよそ行きの服を着ていたとの事。しかもそれでバス停でバスを待っていたのを同級生に見られていた。その光景はまるで今で言うコラ画像にしか見えない程の浮きっぷりだったという。
娘の山田マリエがTwitterアカウントを以前から持っており、彼のスポークスマン的な役割も果たしていたが、2017年に彼女も漫画家デビューした。
父である峰央はマリエに対し、「トーマの心臓」と「風と木の詩」を(少年愛の)名作だから必ず読みなさい、と勧めたという逸話があり、また献本として送られてきた父の作品やBL漫画雑誌が書庫に満載されていた。そのため、マリエはまだ意味がよくわからない時期からその世界の洗礼を受けることになった。また、マリエは無邪気にも友人たちにそれらの本を見せたため、何人かをその道に引きずり込み、何人かにはトラウマを与えてしまったという。
また、同人誌はアシスタント達の作業部屋に誰もいない時に好奇心で忍びこんだ際にスタッフの私物として持っていた同人誌を見つけたのが初めて触れたきっかけとのこと。しかもそれが「某美少女戦士のGL本」だったらしい。
その結果、その後は自ら公言するほどの立派な腐女子となった。一方で、腐女子という趣味そのものは「やっぱり魔夜峰央の娘だ…」と周囲に納得してもらえたため、学生時代から非常に理解を得られやすかったと語っている。なお、少しGL本も持っており嗜んでいる様子。
ちなみに魔夜家では妻・娘・息子はBL作品が家にある為、同性愛というものには理解があるらしい。ただし、妻と息子は腐ではない。なお、息子(マリエの弟)にはバイセクシャル指向の友人がいるというエピソードがあったり、マリエもゲイカップルの友人や父の作品ファンであるゲイの生徒が母のバレエ教室にいるという事も明かしている。ちなみに妻も絵心があり、親バカシリーズで妻自筆のイラストが描かれている。
ただし、マリエのエッセイ漫画「魔夜の娘はお腐り申し上げて」によると、父娘でかなり嗜好が違うようである(父は美少年たちの耽美な世界を愛好、娘はマッチョ派)。ちなみに父の作品のキャラクターでは一回も(腐として)萌えた事がないそうである。理由は自分にとっては同じ生みの親の生き別れの兄弟みたいな感覚にあるかららしい。ちなみに母である芳実は腐(BL)の嗜好は無いそうではあるが、パタリロ!の舞台鑑賞ではキャーキャー言ってたようだ。
なお、自身の作品の登場人物の目の描き方(特に睫毛)は父の影響があるという。
一家の経済状況が悪化していた事に最初に気付いたのはある日の食卓で魔夜がマリエに金を無心してきた時だという。最初は気軽に思ったがよくよく考えたらそれまでそんな事が無かった事に気付いた瞬間だった。
「魔夜の娘はお腐り申し上げて」では魔夜(山田家)のピンチは第1話で軽く採り上げられていたが、「魔夜の娘はお腐り咲いて」ではその経済的危機が家庭崩壊の瀬戸際にまで陥っていた事(魔夜家の冬の時代)を描いている。その中では「ネタにされていた魔夜の飲酒量は経済的危機でも変わっていなかった(後に魔夜の病が発覚する事に)」「母のバレエ教室の助講師をしていたが、実質的に家事手伝い状態だったマリエが外でガールズバーのアルバイトをしなければならない事態にまでなっていた」「実は愛妻の芳実と破局寸前にまでなりかけていた」「これまでの仲の良い家族の状態がすれ違っていってた」等が明かされていた。実際、これを読んだ読者からショックを受けた声が届いており、本気で心配されたとの事。ただし、マリエは漫画で明かすまでバレずに済んでいたと回顧している。同じ窮地に陥った漫画家と末路が違った点では、魔夜自身が家族愛が一際強かった事が大きく、何がなんでも最後まで自分一人で全てを背負って家族を守ろうとしてきた意思があったとマリエは語っている。
そんな危機を救ったのがあの「翔んで埼玉」のリバイバルだった。
後日談として、コロナ禍においては漫画家である父娘はインドア仕事である為、さほど影響はなかったらしいが、バレエを生業とする母と弟は前者がバレエ教室、後者はバレエ劇団の活動が制限されてしまって大変な事になっている様子。なお、母・芳実は「魔夜家の冬の時代」の経験から金銭(経済)に関しては凄くシビアになったとの事。
主な作品(2014年現在、連載継続中は☆印)
パタリロ西遊記!外伝
パタリロ源氏物語!
パパ!?パタリロ☆
家政夫パタリロ!シリーズ
- ラシャーヌ!(パタリロ!にもゲスト出演)
- 妖怪始末人トラウマ!! (パタリロ!にもゲスト出演)
妖怪始末人トラ・貧!!
妖怪始末人トラウマ!!と貧乏神
実は「妖怪始末人トラウマ!!」にはTVアニメ化の企画が持ち上がっていた。しかし予定されていた枠はあの「美少女戦士セーラームーン」の後番組。当初はさほど人気が出ず、1クールで終了すると思われていたセーラームーンが思いがけず大ヒットしてしまったため、あえなくトラウマのアニメ化企画はお蔵入りとなってしまった。魔夜峰央作品としては珍しくBL要素のない作品。
- 眠らないイブ☆
- May探偵プリコロ
May探偵プリコロの○○☆