概要
一定の電圧の電流を流す事で相転移する効果を持った特殊金属でできた装甲。作中では「フェイズシフト装甲」「フェイズシフト」と呼ばれているが、作外での通称は「PS装甲」。
機能
通電されていない状態(ディアクティブモード)ではメタリックグレー(モノクロ)だが、通電しアクティブ状態になるとカラフル(厳密には装甲部位単位で一つの単一色)に変化する。電圧や相転移率に応じて色彩が変化する。このため塗装が不要というメンテナンス上のメリットがある。
アクティブになったPS装甲は表面の位相転移現象(現実で言うところの構造相転移)によって強度を変化させ、MSサイズの実体剣やレールガン、ミサイルといった物理攻撃による熱を含めた攻撃を無効化してしまう。
装甲はフレームを介した通電プラグによって電力供給され、表面に通電現象が起こっているわけではないため、展開中のPS装甲に人体が触れても感電する事はない。ストライクのように大気圏突入時の高温にも耐え得るが、荷電粒子のビームによる攻撃にはほぼ貫通される。
あくまで強度を上げることによる物理攻撃の事実上の無効化であるため、通常装甲と同様に装甲の厚さや、相転移現象を支えている電圧(電力消費量)によって強度が大きく左右される。プロヴィデンスのドラグーンの砲口やアビスの脚部スラスターといった装甲の薄い部位はレールガンによって破壊されており、逆に巨大設備として分厚い装甲と膨大な電力消費量を持つジェネシスは戦艦の主砲レベルのビームはおろか陽電子砲さえ防いでいる(この時、エターナルとクサナギは有効射程ギリギリから撃っていることに加え、「ジェネシス外装70、相転移変動率98%」というモブの説明が背景で流れており、防ぎはしたがギリギリだったことがうかがえる)。他にも、ブルーフレームサードがソードによってライゴウを撃破してたり、プラモデルの説明ではオオトリのレールガンもPS装甲を破砕できるとしていたり、MSVでもPS装甲を破壊できる万力状の装備としてグフクラッシャーのインパクトバイスあったり、ΔASTRAYのネロブリッツの可変アームユニットも試験データ上は破壊可能であったりなど、物理攻撃で破壊可能な事例はそれなりに存在する。
元々熱に強い設定からか、同程度の厚さを持つ通常装甲よりもビームに堅牢とされ、ストライクダガーの胴体を一撃で貫通したプロヴィデンスのドラグーンのビームが直撃してもフリーダムとバスターは半壊程度ですんでる。また、外伝ではテスタメントのシールドやイライジャのザクがPS装甲でビームを防いだ場面があり、描写的には低出力のものをある程度防いでくれるといった具合で実弾と違い装甲にダメージは入っている。
また、レイダーの破砕球のような被撃や落下等による装甲内側への衝撃伝達までは無効化しないため、必ずしもパイロットや内部フレームが無事とは限らない。ただし、作中描写では通常装甲と同等か、それ以上の衝撃耐性を見せてはいる。
堅牢な装甲は武器にも転用可能であり、ゴールドフレーム天のマガノシラホコ、ミラージュフレームの天羽々斬はそれぞれPS装甲、VPS装甲を採用している。
装甲色と装甲強度や消費電力の差は不明。
供給電力が増加したことで防御力が増加して赤主体になっているストライクルージュ、およびVPS装甲で近接格闘用に装甲強度が増して赤色になっているテスタメントの存在から赤が高強度ではないかと推測できるが、あくまで両機とも白色がベースな所を高電圧により赤色となっただけであり、白色以外がベースなことも多い他のPS装甲(VPS装甲)全般に適用可能なのかは別の話となる。さらに言えば、作中最大硬度のPS装甲を持つジェネシスは白寄りの灰色である。
特筆すべき弱点として、アクティブ状態中は常に装甲表面の位相を変化させているため、稼働時間に比例した電力を消耗、最終的に電池切れに陥る。(ごく一部を覗いてC.E.のMSはバッテリーで稼働しているため)
また、外力に対して相転移による構造を維持しようとするためか、被弾時はさらに電力消費が発生する。作中でもバルドフェルドはコレを狙って計76発の通常弾頭の同時攻撃をストライクに行おうとした。
エネルギーが切れると装甲がディアクティブモードに戻ってしまう「フェイズシフトダウン」を起こし、機体の稼働すらままならなくなる。加えて装甲色がメタリックグレーに戻ってしまうため、敵にもエネルギー切れを知られてしまう。
更にはビーム兵器にも電力を使用する為、高火力装備を連発すればそれだけバッテリー切れにもなりやすく、フェイズシフトダウンの危険性は高まる。
また、防御可能なのはあくまで装甲で覆われている箇所であり、関節部、推進器、カメラなどの装甲で覆えない箇所には実体兵器でも問題なく攻撃が通るため、全く穴がないわけではない(ただし、穴をピンポイントで狙うには相応の技量が必要だが)。関節部についてはストライクフリーダム、デスティニー、インフィニットジャスティスのようにフレームもフェイズシフト装甲製とすることで克服している例もあるが、こちらは防御以上にフレーム剛性の強化によるパイロットの操縦技術への適応を目的としている。
シールドに使うことも可能ではあるが、摩耗などの問題により対ビーム用措置の一種である振動鋼材と併用が難しいこと、何より機体そのものが実体攻撃を防ぐため、シールドを対ビーム兵器用に特化させた方がメリットがあるためシールドへの採用は少ない。
なお、PS装甲に対ビームコーティングを併用した例としてはC.E.73に開発されたアビスが存在する。こちらは水中での運用を前提とした特例と言えよう。
余談だが、アスランとカガリが遭難したTV版の回で、イージスのシールドもシフトダウンしたグレー色になる作画ミスがあった。
諸勢力での実用化
兼ねてより理論は存在した技術であったが、宇宙船の甲板を製造するアドヴァンス・スペース・ダイナミック社のもと大西洋連邦の技術仕官マリュー・ラミアスが実装に漕ぎ付ける。無重力下でしか製造できない特殊合金技術を拠り所とし、ヘリオポリスにて開発された初期GAT-Xに採用された。
これらのGAT-Xを鹵獲したザフトでも解析され、以後は同軍のガンダムタイプ等にも実用化されていく事となる。
弱点については両陣営で改良が模索され、その結果連合では通常装甲と併用し使用箇所を限定的にした上で必要時のみに稼働させるトランスフェイズ装甲(後述)が後期GAT-Xシリーズに採用された他、ザフトではニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核エンジンを搭載しそもそものエネルギー切れを無くしてしまうという方法で克服がなされた(ファーストステージシリーズ)。
GAT-X開発に携わったオーブ連合首長国では、開発ライセンスの問題から同技術は秘匿されていたが、後に領土近辺で大破したストライクを改修する事で解析に成功した。ストライクのデッドコピーであるストライクルージュでは「パワーエクステンダー」による電力容量が増大した事と、試験的に搭載されたAIが制御系に介入したことで、戦闘に不慣れなカガリのために防御力が高めの赤系統に再調整されている。この時の技術は後に各勢力に流出し、ヴァリアブルフェイズシフト装甲へ発展する。
発展系
トランスフェイズ装甲
フェイズシフト装甲の改良型。主に後期GAT-Xシリーズのガンダムに使用されている。
通常装甲の内側にPS装甲を備えた二重構造とし、通常装甲内のセンサーが衝撃を感知した時にPS装甲に通電することで、被弾時のみフェイズシフトするようになっている。
これにより、欠点だったエネルギー消費を大幅に軽減することに成功し、余剰電力を潤沢に兵装に回せるようになった。
詳細は該当記事を参照。
ヴァリアブルフェイズシフト装甲
フェイズシフト装甲の改良型。主にインパルスをはじめとするザフト製のガンダム(セカンドステージシリーズ・サードステージシリーズ)やストライクE、その後継機であるライゴウガンダム、そしてストライクフリーダムやインフィニットジャスティス等に使用されている。
ストライクルージュ開発の折に発生した通電率と装甲強度の変化率を参照し、装甲に流す電流の量を装備や状況に応じて調整、装甲へのエネルギー配分を最適化しエネルギー消費を更に抑える事が可能となった。
詳細は該当記事を参照。
余談
元々は「ガンダムSEED」一作目に登場するガンダムを最強の存在にするよう作られた設定とのこと。番組初期には携行型ビームライフルを装備する機動兵器はガンダムくらいしかいなかった(戦艦用の収束火線砲やD装備のバルルス改もあるがサイズが大きい)ので、Nジャマー下のドッグファイトでガンダムを倒せるのはガンダムだけという構図になるとのこと。
ちなみにそのカラーチェンジ要素は多分に制作局が同じ「平成ウルトラマンシリーズ」の影響を受けたんだとのこと。
当初は実弾を一切無効化する設定で、その作用があるPS装甲とビームを防ぐシールドで防御を分担する扱いだった。ところが、ジェネシスが防御したのを始めDESTINYではフリーダムのレールガンでアビスのPS装甲が破砕される場面があるほか、DESTINY ASTRAYではPS装甲が通常装甲よりもビームに堅牢という設定が追加されている(ただし、上記の通りSEED本編時点で通常装甲より堅牢な描写は存在している)。また、「装甲の相転移によって硬質化」するという設定上、内部の衝撃までは相殺不可とされており、素材の硬質さ故のクラックのリスク等は言及されていないのだが、後にデスティニーに採用されたPSフレームは「柔軟性と硬質を併せ持ち、余剰パワーを光子に変換する」とされており、RGシリーズにおいては最終装甲材や部材の強度・構造は異なるともされている。
ガンダムが登場するシミュレーションゲーム(Gジェネやスパロボなど)では機体の特殊能力として扱われ、実弾ダメージをエネルギーと引き換えに軽減する効果で再現されることが多い。
逆にアクションゲーム(ガンダムVSシリーズなど)では設定がゲームバランスの都合で再現できないため、敗北時や撃墜時に装甲色が変わるという演出のみにとどまっている。
ジェネシスがクサナギのローエングリン(陽電子砲)を防いでいるが、ローエングリンは陽電子をビームによって保持しているためあのビーム全体が陽電子というわけではなく、また陽電子砲は対消滅によって生じる膨大な光(熱)エネルギーを破壊の主としており物質消滅はおまけに過ぎないため、分厚い装甲を持つジェネシスが防ぎきれたことについては装甲表面が対消滅しただけで対消滅の熱量は防ぎ切ったと考えれば特に不思議はない。
言及されていないが、フリーダムとジャスティスの持つビームサーベル、ストライクフリーダムのライフルとサーベル、インフィニットジャスティスのライフル・シールド・サーベルも色が変化しておりそれらもPS装甲が施された武器だと推測できる(リマスター版でも修正されず、対の存在であるデスティニーとレジェンドは色が変化しており明らかな描き分けが行われている)。
前述した通り被弾時にエネルギーを消費し、それが相転移変動率という形で表現されることから、通電することにより硬度を上げるというよりも電力を動的に消費することにより装甲の(分子)構造を維持しようとする(ので硬度が上がったように見える)の方が正確である可能性がある。
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEEDDESTINY
ナノラミネートアーマー…鉄血のオルフェンズに登場する装甲。
こちらはビーム兵器を弾く装甲であり、フェイズシフト装甲とは対極に位置する。