アストンマーチン・ラゴンダ(Aston Martin Lagonda Limited)は、1913年に創業したイギリスの高級乗用車メーカー。
概要
創業時はレーシングチームであったことからも分かる通り、ハイパワーでスポーティなイメージで売っているブランドである。(一時は活動停止状態だったこともあるが)歴史を通じてモータースポーツにも積極的に携わっている。
ちなみにマーチンは創業者から、アストンは最初に優勝したヒルクライムイベントの地名から取られている。
2座席のスポーツカーのみならず、セダンやクロスオーバーSUVといった乗用車も手掛けるが、いずれも8気筒以上のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルである。
ブガッティの馬蹄形グリルや、アルファ・ロメオの盾形グリル、BMWのキドニーグリルのように、歴史が長いメーカーは一見してそれと判る伝統的なデザインのフロントグリルを使うことが多いが、アストンマーチンも例に漏れず凸形のグリルがトレードマークとなっている。
英国の王室や芸能界との関わりが深く、特に名作『007』でジェームズ・ボンドが遣う歴代のボンドカーには、アストンマーチンのスポーツカーが多いことで知られる。
しかしながらネームバリューは高い反面、何度か経営危機に陥っており、度々オーナー・経営陣が交代している。
1987年〜2007年の間は米国のフォードの傘下に入っていた時期もあった。
2013年以降は独ダイムラーと提携し、エンジンを供給してもらっている。
モータースポーツ
モータースポーツでは、第二次世界大戦前からル・マン24時間耐久レースに参戦するなど長い歴史を持ち、スポーツカー(GTカー)レースや耐久レースでは輝かしい成績を残している。
ル・マン24時間では1931年に5位、1959年には総合優勝を遂げた。
近年ではGTカーでの参戦・マシン供給で知られる。グループGT3規則のヴァンテージやル・マン24時間を擁する世界耐久選手権のGTクラスでも、ワークスや複数のプライベーターが採用するなど根強い人気を持っている。
日本ではパチンコ事業を展開するNEXUSが店名を冠した「D'Station Racing」でヴァンテージを駆りル・マン24時を始めとするWECやル・マン地方選手権、国内ではSUPER_GTやスーパー耐久で精力的な参戦を継続している。ちなみに総監督は「大魔神」の異名で知られた、元メジャー投手の佐々木主浩が務めている。
2025年はF1のレッドブル・レーシングとの共同開発により生まれた、現在では稀少なV12自然吸気エンジンのハイパーカーであるヴァルキリーで、WECの最高クラスであるハイパーカークラスに参戦する見込みである。
ワークスカラーはロータスやMiniと同じくブリティッシュグリーン(深緑)である。
また近年のル・マンではオイルメーカーでメインスポンサーだった「ガルフ」の水色+オレンジ色を用いていたため、こちらも馴染みが深いだろう。
F1
F1グランプリには1959年、60年と参戦したものの鳴かず飛ばずのまま撤退している。その後、2018年にホンダがパワーユニット供給を行うレッドブル・レーシングと提携する形で名前が復活した(アストンマーチン・レッドブル・ホンダ)。
後にF1チーム「レーシングポイント」(旧フォース・インディア)を所有していたカナダの実業家ローレンス・ストロールが、アストンマーチン社の株式を取得し企業オーナーに就任。そして2021年シーズンよりレーシングポイントが「アストンマーチン・レーシング」と名称を変更してコンストラクター参戦する事になった。なおこれに伴い、レッドブル・ホンダとのスポンサー契約は終了した。
2021年の第6戦アゼルバイジャン戦において、4度のF1王者セバスチャン・ベッテルが、コンストラクター復帰したアストンマーティンにとって初、かつベッテル自身も移籍後初の表彰台を獲得した。その後ベッテルは現役を引退し、2023年から2度のF1王者フェルナンド・アロンソが加入。アロンソは2023年に8度もの表彰台を獲得し、ランキング4位を占めた。
同チームからはローレンスの息子ランスも参戦しているが、王者に対してはさすがに分が悪く、素行の悪さも相俟って評判は良くない。彼の表彰台は2024年時点で0である。
2026年からは、F1に正式復帰するホンダからパワーユニット供給を受けることとなり、レッドブルの天才マシンデザイナーのエイドリアン・ニューウェイも移籍加入するなど、さらなる期待が見込まれている。
現在の販売車種
DB12
DBX
ヴァンテージ
ヴァルキリー
ヴァルハラ
ヴァンキッシュ
ヴァリアント
余談
- スパイ映画 007シリーズのマストアイテム「ボンドカー」でアストンマーティンが使用されたのは第3作『007 ゴールドフィンガー』から。この時使用されたのはDB5であった。
- 高級車メーカーらしくハイパワーな車が多かったが、一時期トヨタ・IQを元にしたシグネットを作っていた。きっかけは当時のアストンマーチンとトヨタの社長(豊田章男)が、お互いの車を相乗りしながらニュルブルクリンク24時間レースに参戦したことであった。
- あるショップが、ダイハツ・コペン(初代)用のアストンマーティン風グリルを製作している。
- かつてJRAに所属した競走馬のアストンマーチャンの由来にもなっている。また、同馬はウマ娘化もされている。
↑アストンマーティンのワークスカラーを纏うアストンマーチャン