概要
その名の通り1974年に制式化された。
亀甲形鋳造砲塔に105mmライフル戦車砲装備という第二世代主力戦車のスタンダードに加え、独自の油気圧サスペンションによる姿勢制御システムを備えている。
性能は西側第二世代主力戦車の水準を満たしていたものの第二世代としては最後発であり、制式採用後にレオパルト2、M1エイブラムスなどの第三世代主力戦車が次々と登場したため、早い時期に陳腐化が進んだことは否めない。
第三世代主力戦車の90式戦車がほぼ北海道限定運用のため40年近くにわたって本州防衛の任を負ってきたが、旧式化により10式戦車および16式機動戦闘車へ置換されつつ順次退役し、2024年3月末、戦闘部隊に配備されていた74式戦車は、その全車が退役した。
主砲である105mmライフル砲(英国ロイヤル・オードナンス社製51口経105mmライフル砲L7A1のライセンス生産型)の弾薬には、当初英国製砲弾をライセンス製造したもの(L28A1 APDS(翼安定型徹甲弾)と75式HEP-T弾(M393 HEP弾(粘着榴弾))を採用していたが、1984年よりM735 APFSDSが追加され、現在では国産の93式装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)や91式多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)などが使用されている。
2軸ジャイロによる砲安定装置も搭載されており、これと油気圧サスペンション・射撃管制装置などを組み合わせることで行進間射撃も可能だったとされている。ただ、HEP弾の跳弾事故やレーザー測距儀の不具合によって後に国内では禁止されてしまった。
量産型の中期からは夜間戦闘用にアクティブ型赤外線暗視装置(メインイラストの砲塔部、主砲右側の箱型装置)が追加された。これは赤外線フィルターを外すことで白色投光器としても使用する事も可能で、1.5km先で本が読めるほどの光量を有しているが、あまりの大出力・大光量のために低温やけどを負う危険性がある。
ただ、1991年の雲仙普賢岳の噴火の際、夜間に火砕流発生の警戒監視にこの投光器を使用するアイデアが採用された。実際に派遣準備までなされて駐屯地で待機していたが、結局出動することはなかった。
なお、1992年には能力向上を狙った改修型「74式戦車(G)」が開発された。これは赤外線暗視装置のパッシブ型への更新、レーザー測距義をルビーレーザー型からYAGレーザー型に変更、発煙弾発射機と連動するレーザー検知装置の搭載、サイドスカートの装備など多岐にわたる改修を施したもので、高い成績を収めたものの、改修費用の高額さから結局試作車1両・量産車4両の計5両で改修は打ち切られている。
鉄道輸送は考慮されていないと度々言われるが、実際には鉄道輸送を考慮して車体幅3.2mで設計されている(『防衛庁技術研究本部二十五年史』)。行われた実績こそほぼ無いものの、74式をベースとした78式戦車回収車は2009年の演習で履帯を外し、材木の足場を組んでJR貨物の機材輸送列車に載せた試験的な鉄道輸送が行われている。78式は車体のサイズだけであれば74式と同等かつ、重量は78式の方が大きいため、74式もやろうと思えば鉄道輸送はやれるのかもしれない。
また、『車両と電気.30(5)』(車両電気協会)の「特大貨物(自衛隊)の輸送」より、静岡局の自衛隊特大貨物輸送件数において昭和51年度及び52年度に1件ずつ『新戦車』の記述があり、恐らく74式のことであるから、74式は鉄道輸送されたことがあるのでは……と言われる。もっとも昭和53年度以降は輸送記録が無く、74式の鉄道輸送は何らかの問題があったのかもしれない。
すでに退役した74式だが、まだ少なくない数の車両が解体されずに残っているらしく、令和7年度防衛予算の概算要求にて74式のモスボール保管(長期保管)の予算が請求されている。もしも請求が認められ、モスボール保管が実現すれば、74式は必要に応じて現役に復帰できるようになる。老兵は未だ眠らず。
東日本大震災において
2011年の東日本大震災による福島第一原発事故において、放射性瓦礫除去のためにドーザーブレード(排土板)を装備した74式戦車が投入された。通常のブルドーザーに無い対NBC兵器防御を備えた戦車ならではの用途である。
老戦車ではあるが、戦後最大の国難でこのような任務を任せられるのは胸が熱くなる話である。
しかし、間もなくリモコン操作式ブルドーザーが投入されたため、実際に作業に当たる事なく撤収した。
関連イラスト
主な登場作品
1984年の『ゴジラ』以降、自衛隊の戦車として頻繁に登場。
撮影用模型はなんと初代ゴジラのM24軽戦車を61式戦車を経て改造したもので、一部の作品には61式戦車の車体に74式戦車の砲塔を載せた「61式改戦車」という架空戦車も登場する。
- 平成ガメラシリーズ
陸上自衛隊の戦車として登場。大部分は実車を使用しているが、『ガメラ2』のレギオンとの戦闘シーンでは破壊シーン用のミニチュアが制作された。
防衛軍の戦車として登場。
撮影に使用されたのはタイヨー製のラジコンで、車体がレオパルト1に近い造形になっている。『長髪大怪獣ゲハラ』や『デスガッパ』にも同型のラジコンが登場している。
YUZAMEの巨大ロボット迎撃のために出動。74式戦車(G)も登場している。
第5話に秋山優花里のアルバムに収められた写真として登場。
本編での絡みはここだけだが、大洗町のタイアップイベントで実車が展示されたり、第10戦車大隊所属の本車に大洗女子学園のエンブレムステッカーが貼り付けられたことがあった。
特地に派遣された自衛隊の戦車として登場。漫画版ではTUSKやサイドスカート、シュルツェンを追加装備した特地仕様車も登場している。
九式戦車「蒙虎」として登場。ティーガーⅡに対抗して命名されたとされている。
原作挿絵では74式戦車の車体にレオパルト1の砲塔を載せたようなデザイン、コミック版・OVA版でも74式戦車そのままのデザインで登場していたが、『新・旭日の艦隊』では90式戦車とルクレールを組み合わせたような造形で車体後部に脱出ハッチを備えるという全く別の戦車になっている。
投光器を外しピンク色に塗装した戦子さんとして登場。弁当屋を営んでおり90式先輩がひょんなことから恋心を抱く。
日本の中戦車として登場。試作車のSTB-1も実装されている。
STB-1が中戦車として登場。
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では作戦43「訣別のナイトシティ」に登場。同じステージに登場する90式戦車共々連射性能に優れた強敵。
「新コンバットチョロQ」では「ボルゾル徹甲部隊」にボルゾル元帥率いる精鋭部隊の隊員として登場。強力砲弾や複合装甲板Sで性能を強化しており苦戦は必至。
エキスパートアリーナ「ボムジムカーナ」で対決し勝利すると使用可能となる。
同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。