概要
勇者であるシリーズにおいて登場する勇者の変身や戦闘の根幹を担うシステム。神樹の力を科学、呪術の両面で研究、解析した成果が形となった物である。
絶えず改良が加えられているため、時代ごとに細かな差異はあるが、共通してスマートフォンのアプリ「NARUKO」の形を取っており(使用するスマホ自体は市販されている物と思われ、友奈達は勇者部入部の際に自分のスマホにシステムをインストールした)、普段はごく普通のSNSアプリとして機能しているが、有事の際は専用の画面をタップする事で勇者へと変身できる(なお、スマホ自体は変身後も勇者同士の通信に使用可能)。ただし変身には使用者の精神が安定している必要があり、不安定だと霊的回路が形成できず変身できない。
また、勇者をサポートする存在として精霊が備わっている(ただし、西暦時代の最初期型は後年の仕様と異なり、普段は精霊がマスコット状の姿で実体化する事はなく、後述の「切り札」を発動する時だけ、本来の姿で実体化する事が「大満開の章」の戦闘シーンにて描かれた)。
使用できるのは、神樹によって選ばれた勇者の素質が高い者のみで、誰が選ばれるのかは実際の戦闘が迫る直前になるまでわからない。ただ、あくまでもスマホを介して認識しているらしく、既に他の勇者が使用していた物を譲渡する形ならば、神樹に選ばれるのを待つ事なく勇者になれる。故に使用権を賭けて、二人の候補生が火花を散らす事となった。
勇者達の装束にはモチーフとなる花が存在するが、それについては各個人の記事を参照されたい。
『花結いのきらめき』にて語られた所によると、勇者システムの本体は大赦の本拠地内に存在しているという。また、天の神から離反した造反神によりもたらされた天の神の技術が一部流用されているとの事。
なお、システムで使われる数字は、全て漢数字(ロック解除用ボタンの数字は大字だった)が用いられている。
時代ごとの特徴
『乃木若葉は勇者である』
西暦時代に作られた、最初期の勇者システム。
装束のデザインは、総じて「靴のヒールが高い」という共通点がある。
基本的なシステムはこの時点で確立されているが、武器をその場で一から生成する機能はまだなく、戦闘時は各々が勇者として覚醒した際に手にしていた各地の神社に奉納されていた神の力を宿す武器をそのまま使用する。そのため、普段から自身の手元に武器を所持しておく必要がある。
また、変身後はスマホを左臀部に直接携帯しているなど、機能面においてはまだまだ原始的で、未成熟な面が見て取れる。
身体能力は向上するものの、初期型故に性能は決して高くなく、星屑には何とか対処できるが十二星座のバーテックスの前身ともいえる進化体への対処はそのままだと困難。故に、この時代独自の機能として神樹の記録にアクセスして精霊の力を一時的に自身に直接宿す「切り札」が存在するが、肉体に大きな負荷がかかり、更に当初は知られていなかったが、使い過ぎると精神が不安定になりやすくなる副作用もあり、大社(後の大赦)からむやみな使用を禁じられている。だが、戦う度に進化していくバーテックスには、この切り札をもってしても力負け(時には傷一つ付けられない事も)する事態が増えてゆく事になり、この「バーテックス撃破に対する深刻な決定力不足」と「攻撃力向上と攻撃方法の模索」は、後の時代まで尾を引く課題となっていった。
他にも、他の勇者やバーテックスの位置を示すレーダー、樹海化を知らせる「樹海化警報(ただしアニメでは実装されていない)」が実装されている。
なお、当初は神樹の意志で変身を強制解除させる事も可能だったが、ある勇者の戦死に繋がってしまった事で廃止された。
大戦後、天の神と講和を結んだ際には「勇者の力を手放す事」が講和の条件とされたため、最終的にこの時代の勇者システムは封印される事となった(だが、いつか来るであろう反転攻勢に備えて、秘密裏に研究と改良は継続される事となる)。
『鷲尾須美は勇者である』
神世紀298年時点の勇者システム。
この時代の装束のデザインは、「黒を基調としたインナー服を纏う」という共通点があるため、肌の露出はほぼなくなった。
西暦時代から300年近いブランクがあったせいか、旧型と比べるとレーダーや樹海化警報がオミットされているなど、むしろ機能が退化している部分があるが、代わりに基礎性能、特に攻撃力の向上が見られ、更には変身者の回復能力を向上させるなど、勇者の身体機能を補助する方面に重点的な改良が施された。その一方で、防御面ではさほど進歩は見られず、現状は装束の耐久性のみが頼りであり(ただし、園子は機転を利かせて、自身の持つ槍を傘状に展開させて即席の盾として防御力の不足を補っていた)、いまだ戦闘のたびに生傷が絶えず、時には大怪我をする事態も依然としてある。
しかし、これだけの改良が施されたにも拘わらず、12星座バーテックスの完全撃破はいまだ不可能であり、良くて撤退させるしかない(撤退させるには、アニメ版では一定のダメージを与えた後に、神樹による「鎮花の儀」を発動させる必要がある)。
なお、使用武器は変身に合わせて自動で出現するようになり、スマホ自体も変身中は直接携帯せず使用する時のみ呼び出せるようになった(なお、この時期のシステムは初回のみ、システムアンロック時に専用の祝詞を唱える必要がある)。
終盤には大幅なアップデートが施され(これには、初代勇者の一人である伊予島杏が生前、独自にノートに書き残していた研究データが参考資料として用いられている)、装束のデザインが後述の神世紀300年型を先取りした物となり、レーダーと樹海化警報が再実装された他、精霊を実体化させて連れ歩く事で攻撃の補助や新たな能力の付加、致命傷となり得る攻撃を自動で防ぐ「精霊バリア」の発動が可能になり、攻撃・防御双方の脆弱さが解決すると共に、勇者の能力を大幅に引き上げる「満開」がここで初めて実装され、各々の装束のどこかに「満開ゲージ」が追加された。ただし、後年の満開とは異なり、「発動時間が非常に短い」という致命的な欠点があり、この欠点に加え、満開後に起こる代償が原因でこの時代の勇者達に深刻な後遺症を残してしまう事になる。
この「精霊の力を直接自身に宿す事なく、間接的、且つ、積極的に攻防の補助に用いる」という、戦術面での大転換によって、勇者自身の身体能力に過度に依存する必要性が薄れた事から、訓練施設での厳しい鍛錬が必要なくなり(ただし、夏凜のように、個人が自主的に鍛錬する事は否定されない)、勇者の選定の基準が緩和された一方で、大幅なアップデートに伴い、今度は神樹の力を大きく消耗する結果となったため、勇者の数は5、6人が限界とされ、「少数精鋭でバーテックスに挑まなければならない」という現状に変わりはなかった。
上記のアップデートをもって、結果的には「勇者が討ち死にする」という最悪の事態こそ大幅に減ったが、裏を返せば「勇者が死ぬ事も許されずに永遠に戦い続ける事を強制されるシステム」が、ここでいちおうの完成を見た、という証左にもなったのであった。
『結城友奈は勇者である』
神世紀300年時点の勇者システム。
装束のデザインは、「脇が露出している」という共通点がある。
基本性能では298年の後期型と差はないが、システムアンロックには戦う意志を示すだけでよくなり、専用の祝詞を唱える必要はなくなった。
この時代の仕様から、十二星座バーテックスの弱点たる御魂を封印する「封印の儀」が可能になる。封印の際は原則として複数人で祝詞を唱える事になっているが、必ずしも口で唱える必要はなく、「封印する」という強い念を込めるだけでも良い(なお、後に勇者部に加入した夏凜が用いた勇者システムは改良型であり、単独で封印の儀が可能となった。そして、その後は彼女以外の部員達のシステムにも同様の改良が施されたと思われる)。この際、御魂の分離と同時にカウントダウンが開始され、この間に御魂を破壊する必要こそあるものの、この時点でようやくバーテックスの完全撃破が可能となった。
他には、樹海化警報以上の重大な脅威が差し迫った場合に発令される「特別警報」という機能があり、作中では東郷が壁を破壊してバーテックスを結界に侵入させた際や、天の神が直接襲来した際に発令された。
『勇者の章』では満開の代償がなくなった代わりに精霊バリアに回数制限が付き、1回でも精霊バリアを使用していると満開が不可能になった。また、満開が事実上1回に制限された事で満開のたびに精霊が増える事はなくなり、精霊は各々に備わる最初の1体のみに制限された。これは「神樹の寿命が近づき弱体化したため」と「天の神との決戦に備えた勇者の大量動員を見越した勇者システムの量産のための機能の簡略化」という側面がある。
『勇者の章』最終話で全てが終わって讃州中学屋上に転送された際には端末そのものが破損しており(画面が割れ電源も入っていなかった)、更に勇者の力の源である神樹が散華してその力自体が失われた事も重なり、勇者システムはそのまま使用不能となった。
ちなみに、舞台版では作品の都合上、精霊の存在そのものが抹消されている。ただ精霊バリアに該当する防御機能は健在。また、装束のデザインも基本は同じだが友奈は髪色が変化せず、東郷の靴が『勇者の章』基準の物になり移動方法がなんとセグウェイに変更されている等の相違点がある。
『花結いのきらめき』では登場する全ての勇者の勇者システムがこの時代の物に統一された事で、基本スペックが大幅に底上げされ、全員がバーテックスの完全撃破が可能となった。
ただし、世界観の関係で満開(西暦時代の勇者の切り札も)は登場せず満開ゲージ自体が存在しない(後に戦況の激化に伴い、双方共に実装され、元々そのような能力を持たなかった芽吹を始めとする防人達にも「強化装束」という形で順次実装された)。
精霊バリアの有無に関しては具体的な描写がなく不明だが、敵のガス攻撃を食らっていたり不意打ちで死んだと勘違いされる事件が起きるなど、精霊バリアが存在しないともとれる描写はある。
また、(ゲームシステム上の機能としてだが)精霊を変更できる機能や、巫女がいる場所を出発地点として解放地域間をワープできる「カガミブネ」といった独自の機能もある。さらに、樹海化警報とは異なる警報音を鳴らしてシステム所有者に招集をかける「緊急招集」という機能が結城友奈の誕生日イベントで発動されたが、東郷が全員のスマホをハッキングして行ったため、元からあった機能なのかは不明(少なくともシステムについて多少の知識を持っていたはずの風は知らなかったため、これは東郷が独断でシステムに組み込んだ物だと思われる)。
アサルトリリィLast balletのコラボイベント『煌めき満ちる勇花』でもこの時代の仕様に準拠しているが、どういう訳か満開ゲージはマギ(アサルトリリィにおける魔力の事)と互換性があるらしく、満開ゲージを用いてのノインヴェルト戦術、続編の『勇花が紡ぐ大樹の奇跡』ではマギ交感の要領で満開ゲージをマギで回復する事が可能だという事が判明した。規格の違うマギの力を使ってるため満開はいつもと少し感覚が違うらしいが、特に戦闘に支障はなかった。また、マギスフィアを取り込むことも可能であり結果的にそれがまさかの奇跡を起こすことになる。
因みに大樹の奇跡では描写から察するにアサルトリリィの世界に神樹に送り込まれたらしいがそれはシステムの機能の一つなのかは不明。
『楠芽吹は勇者である』
防人が使用する、量産型の勇者システム「戦衣」が登場。詳細は同記事にて。
余談
西暦時代に勇者システムが使われていたのは四国のみらしく、諏訪の勇者である白鳥歌野は神の力を宿す装束に普段着から着替えて勇者となる(同じく四国の勇者ではない秋原雪花や古波蔵棗も勇者システムと呼べる物は存在していなかったと思われる)。
なお、赤嶺友奈時代では勇者システムが封印されていたため、『花結いのきらめき』では造反神が友奈達の物を模して用意した勇者装束を着用している。