劇場版ポケットモンスター

げきじょうばんぽけっともんすたー

劇場版ポケットモンスター（ポケモン・ザ・ムービー）は、アニメ『ポケットモンスター』シリーズの映画シリーズ。ここでは、アニポケ本編とアニポケ劇場版シリーズの区別を行う。

概要

1998年 7月18日に、第1作となる『ミュウツーの逆襲』が公開され、観客動員数650万人という通常の劇場版アニメでは考えられないほどの記録的な大ヒット（公開当時基準）となり、それ以降は、夏休みに入る7月の中旬頃に毎年公開されるのが定番となった。

俗称ポケモン映画。

第17作からはポケモン・ザ・ムービーという題名に改名したが、第20作で再び劇場版ポケットモンスターに戻っている。

第7作以降、短編であるサイドストーリーはしばらくの間廃止されていたが、第15作で復活した。しかしその後、第19作の公開を前に再び廃止される事になった。劇場版アニメのサイドストーリーが復活・2度も廃止されたのは、事実上このシリーズだけである。

映画に登場するオリジナルキャラクターには俳優や芸能人などの著名人が特別出演者として起用される事が定番となっている。

中でも山寺宏一(第1作以降)と中川翔子(第10作から第21作、第23作)が参加頻度が高く、同一シリーズにて演じたキャラクターの多さでギネス記録に登録されている。

第7作から第9作ではベッキーが特別出演していた。

ゲーム作品に未登場のポケモンが映画で初めて登場することが多く、毎シリーズ2作目まではゲームに追加される形での登場、配布となり、シリーズ最終章になると次シリーズに先んじて次世代のポケモンが登場することが定番となっている(後述)。

19作目までは旅のメンバーや手持ちポケモンなどは上映当時放送されていたテレビ本編と合わせるなどして大まかな時系列は本編とリンクするように作られていたが、映画の出来事をサトシ達が本編で言及することは滅多にないので、基本的には別の世界の出来事の模様である(特に第5作は物語の舞台が旅の道筋と全く異なる位置にある)。

一方で本編と繋がっている事が言及された作品がないわけではなく、

第1作(無印66話やTVSPとリンク)
第2作(無印222話にて「オレンジ諸島でルギアと会った事がある」と言及)
第5作(新無印146話にアルトマーレが登場し、サプライズゲストとしてカノンが登場)
第7作(ラルースがシュウの出身地だとされている。またラルースシティにデオキシスが現れロンド博士が研究していたことも明かされているが、映画の出来事に関してはサトシたちからの言及は無し)
第9作(サトシ達がキャプチャ・スタイラーの存在を知っている為、少なくとも、AG155話の後)
第16作(地上波で序章が放送。時系列はイッシュリーグの後)

などは本編と繋がっている事が示唆されている。

一部の視聴者からは「元々アニメと映画を連動させようと考えていたが、『ミュウツーの逆襲』の際に諸々の事情で、本編とのリンクがうまくいかなかったことから、放映日程の突然変更や海外でのアニメ版展開の際に融通が利くようにつながりを曖昧にしているのでは？」という意見もある。

先の『逆襲』にだけ前日譚・後日譚が存在するのがその根拠とされる。

10作目から12作目までは連作として作られており、TV本編同様にサトシ達からの言及こそ無いもののそれぞれの作品で起きた事件が明確に因果関係のあるものとなっているため、ファンからは神々の戦い三部作という俗称で呼ばれている。

第20作目では無印の1話から分岐しており、旅のメンバーも過去作や本編とは異なっている。

第21作目、第23作目ではサトシは一人旅をしており、明らかになっている手持ちポケモンもピカチュウのみ、他作品との繋がりを示唆する要素も無いなど完全に独立した物語となっている。

2020年以降の劇場版公開について

2020年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、製作中だった映画『ココ』が公開延期に追い込まれ、同年冬に公開がずれ込んだ。このため、この年は1998年以降で夏にポケモン映画が公開されなかった初の年となった。

翌2021年に至っては映画が公開されることがなく、連続公開記録が23年連続で途切れる(『ココ』は公開時期の関係で2021年初頭まで上映されたが)。

2022年の時点で『ココ』の次の作品の制作発表はされておらず、公式に映画製作の中止が明言されたわけではないが、現在のところ制作が休止されていることは事実と考えてよい。

制作が中止されている理由は定かではないが、後述のように展開がマンネリ気味であったこと、年々興行収入が減少の一途を辿っていたこと、近年は他にも集客力のあるアニメ映画が東宝配給の下多数上映されるようになり、ポケモン映画に拘る必要性が薄れていること（＝要するに、他の人気アニメとの競合に敗れた）等もあるのではないかと考えられる。

ただ、この現状を流石に重く受け止めたか、2022年にはLEGENDSアルセウスの販促も兼ねた初の配信限定アニメ「ポケットモンスター神とよばれしアルセウス」がAmazonプライムビデオで配信。その本作のロゴを見る辺り、2021年に劇場版が公開されなかった代わりになっていると思われる。

2022年に入っても依然として新作のアナウンスは無いものの、アニメ25周年を記念して、歴代の劇場版作品から投票で選ばれた3作品を同年8月から9月にかけて週替りで劇場にてリバイバル上映することを発表。投票の結果、『水の都の護神ラティアスとラティオス』『七夜の願い星ジラーチ』『ディアルガVSパルキアVSダークライ』の3作が上映作品に決定した。

2022年12月には『めざせポケモンマスター』を以てサトシの旅シリーズの完結が決定。

劇場版については、新主人公達をメインとした作品に移行するのか、引き続きサトシを主人公とした作品の製作を続けるのか、はたまたこのまま劇場版の製作が停止するのかは明らかにされていない。

今のところ映画に出られてない彼らやW主人公の肩書きを持つ彼とその幼馴染みである彼女の出演のチャンスも望む声も多い。

一覧

ポケットモンスター(無印・オレンジ諸島・金銀)

これらの5作はアメリカ合衆国でも上映された。

記念すべき第1作となる『ミュウツーの逆襲』は、当時のテレビアニメの劇場版としては日本国内で史上最高の大ヒット。2014年に妖怪ウォッチが公開されるまでは、その記録が破られる事はなかった。

第1作・第2作の脚本担当の首藤剛志は色々あって第3作の製作途中より体調を崩しており、3作目の途中から園田英樹が脚本を担当。

当然ながらヒットシリーズながらも少しずつ興行収入が落ちてきたポケモン映画の新たな脚本担当という重圧はかなりのものだったようで、第4作の制作の際に、首藤は園田から「勝ち逃げですか」と言われたことがあったという。

以降、第17作まで園田が劇場版の脚本を担当し続けることになる。

作	メイン(長編)	サイド(短編)	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
1	ミュウツーの逆襲	ピカチュウのなつやすみ	ミュウツー、ミュウ	市村正親(ミュウツー)、小林幸子(ボイジャー)、佐藤藍子(スイート、短編ナレーション)、レイモンド・ジョンソン(海賊風トレーナー)、山寺宏一(ミュウ)	1998年7月18日	76.0億円
2	幻のポケモンルギア爆誕	ピカチュウたんけんたい	ルギア	鹿賀丈史(ジラルダン)、浜田雅功(ダウンタウン)(ヤドキング)、山寺宏一(ルギア)、さとう珠緒(短編ナレーション)	1999年7月17日	64.0億円
3	結晶塔の帝王 ENTEI	ピチューとピカチュウ	エンテイ	竹中直人(エンテイ、シュリー博士)、加藤あい(リン)、薬丸裕英(ジョン)、山寺宏一(デイビット)、酒井法子(短編ナレーション)	2000年7月8日	48.5億円
4	セレビィ時を超えた遭遇	ピカチュウのドキドキかくれんぼ	セレビィ	佐野史郎(ビジャス)、鈴木杏(ミク)、藤井隆(ホワイト)、山寺宏一(ハンター)、遠藤久美子(短編ナレーション)	2001年7月7日	39.0億円
5	水の都の護神ラティアスとラティオス	ピカピカ星空キャンプ	ラティアス、ラティオス	グッチ裕三(ボンゴレ)、神田うの(ザンナー)、釈由美子(リオン)、山寺宏一(ロッシ)、優香(短編ナレーション)	2002年7月13日	26.7億円

アドバンスジェネレーション

このシリーズから、前売り券特典として通常のゲームで入手困難なポケモンのデータ配布が開始。

作	メイン(長編)	サイド(短編)	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
6	七夜の願い星ジラーチ	おどるポケモンひみつ基地	ジラーチ	牧瀬里穂(ダイアン)、パパイヤ鈴木(ボギー)、山寺宏一(バトラー)、山田花子(短編ナレーション)	2003年7月19日	45.0億円
7	裂空の訪問者デオキシス	-	デオキシス、レックウザ	上原多香子(ユウコ)、KABA.ちゃん(本人)、山寺宏一(ロンド博士)、ベッキー♪#(ヒトミ)	2004年7月17日	43.8億円
8	ミュウと波導の勇者ルカリオ	-	ルカリオ、ミュウ	菊池桃子(リーン、アイリーン)、岡江久美子(ジェニー)、キングコング(西野亮廣(フレディ)・梶原雄太(ウソハチ))、山寺宏一(アーロン)、ベッキー♪#(キッド・サマーズ)	2005年7月16日	43.0億円
9	ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィ	-	マナフィ、カイオーガ	眞鍋かをり(ヒロミ)、藤岡弘、(ファントム・トループ)、ホリ(ペラップ)、山寺宏一(ジャック・ウォーカー)、ベッキー♪#(ジュディ)	2006年7月15日	34.0億円

ダイヤモンド&パール

第11作『ギラティナと氷空の花束シェイミ』は前売り券が238万4198枚を売り上げており、2009年7月9日に「最も前売り券が売れたアニメ映画」としてギネス・ワールド・レコーズから世界記録の認定を受けている。

作	作品名	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
10	ディアルガVSパルキアVSダークライ	ディアルガ、パルキア、ダークライ	石坂浩二(ダークライ)、加藤ローサ(アリス)、山本耕史(トニオ)、ロバート(秋山竜次(ダイ)・山本博(カツミ)・馬場裕之(ドダイトス))、山寺宏一(アルベルト男爵)、中川翔子(マキ)	2007年7月14日	50.2億円
11	ギラティナと氷空の花束シェイミ	ギラティナ、シェイミ	中村獅童(ゼロ)、TIM(レッド吉田(ムース)・ゴルゴ松本(ジバコイル))、南明奈(レイラ)、クリスタル・ケイ(ラッキー)、山寺宏一(ムゲン・グレイスランド)、中川翔子(インフィ)	2008年7月19日	48.0億円
12	アルセウス超克の時空へ	アルセウス	美輪明宏(アルセウス)、北乃きい(シーナ)、高嶋政宏(ダモス)、山寺宏一(ギシン)、中川翔子(ギザみみピチュー)、ロバート(山本博(村人)・秋山竜次(兵士)・馬場裕之(兵士))	2009年7月18日	46.7億円
13	幻影の覇者ゾロアーク	ゾロア、ゾロアーク	陣内孝則(グリングス・コーダイ)、加藤夏希(リオカ)、塚本高史(クルト)、山寺宏一(グーン)、中川翔子(プルーフ)	2010年7月10日	41.6億円

ベストウイッシュ

作	メイン(長編)	サイド(短編)	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
14	ビクティニと黒き英雄ゼクロム/ビクティニと白き英雄レシラム	-	ビクティニ、ゼクロム、レシラム	水樹奈々(ビクティニ)、高橋英樹(ゼクロム)、谷原章介(レシラム)、つるの剛士(ドレッド・グランギル)、石原さとみ(カリータ)、大地真央(ジャンタ)、山寺宏一(モーモント)、中川翔子(セード、オード)	2011年7月16日	43.3億円
15	キュレムVS聖剣士ケルディオ	メロエッタのキラキラリサイタル	キュレム、ケルディオ	中川翔子(ケルディオ)、高橋克実(キュレム)、ローラ(マリン)、山寺宏一(コバルオン)、夏菜(短編ナレーション)	2012年7月14日	36.1億円
16	神速のゲノセクトミュウツー覚醒	ピカチュウとイーブイフレンズ	ゲノセクト、ミュウツー/メガミュウツーY	高島礼子(ミュウツー/メガミュウツーY)、平成ノブシコブシ(吉村崇(エリック)・徳井健太(イシツブテ))、吉岡聖恵(いきものがかり)(イーブイ)、山寺宏一(赤いゲノセクト)、中川翔子(ニンフィア(短編))、前田敦子(短編ナレーション)	2013年7月13日	31.7億円

XY

第18作・第19作は冨岡淳広が脚本を担当。

作	メイン(長編)	サイド(短編)	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
17	破壊の繭とディアンシー	ピカチュウ、これなんのカギ?	ディアンシー、イベルタル、ゼルネアス	三田佳子(ゼルネアス)、足立梨花(マリリン・フレイム)、中川家(剛(メレシー・ナイト)・礼二(アルガス・スティール))、内田篤人(ウッシー)、山寺宏一(ニンジャ・ライオット)、中川翔子(ミリス・スティール)、渡辺麻友(短編ナレーション)	2014年7月19日	29.1億円
18	光輪の超魔神フーパ	ピカチュウとポケモンおんがくたい	フーパ	藤原竜也(バルザ)、篠原信一(ヒポポタス)、山寺宏一(ときはなたれしフーパ)、中川翔子(メアリ)、山本美月(短編ナレーション)	2015年7月18日	26.1億円
19	ボルケニオンと機巧のマギアナ	-	ボルケニオン、マギアナ	市川染五郎(ボルケニオン)、松岡茉優(キミア)、あばれる君(オニゴーリ/メガオニゴーリ)、山寺宏一(ジャービス)、中川翔子(ラケル)	2016年7月16日	21.5億円

オリジナル作品

第20作『キミにきめた!』は『サン&ムーン』以降のTVシリーズとは世界観が完全に切り離され、初代(つまり無印)の時分からのリブートとして展開されている。

第21作『みんなの物語』においては、完全なオリジナルの作品として展開されている。そして初めて監督が湯山邦彦氏から矢嶋哲生氏に交代した。これは湯山氏本人の意向であり、「キミにきめた!」では交代を見据えて矢嶋氏を副監督に置いていた。

脚本に関しては、第20作は米村正二が担当しているが、一部に首藤剛志の脚本も使用。第21作はシリーズ初参加の梅原英司と高羽彩が担当。第23作では矢嶋哲生が脚本として参加する他、冨岡淳広が4年ぶりに復帰する。

この頃から、マンネリ化の打破のためなのか、作風にもかなりの変化が生じるようになっている。

それまでは、伝説ポケモンの脅威にサトシたちが対峙するという内容が多かったが、このオリジナルシリーズでは、“ポケモン”という存在を通して、人間たちが成長する過程や葛藤を描いた群像劇としての側面が強くなっている（リメイク作である『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を除く）。そのため、人間側の心情描写が多くなり、過去作と比べるとポケモンバトルの描写の比重はやや控えめになっている。

作	作品名	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
20	キミにきめた！	ピカチュウ、ホウオウ、マーシャドー	佐藤栞里(マコト)、本郷奏多(ソウジ)、古田新太(ボンジイ)、山寺宏一(マーシャドー)、中川翔子(ジョーイ)	2017年7月15日	35.5億円
21	みんなの物語	ルギア、ゼラオラ	川栄李奈(リサ)、大倉孝二(カガチ)、濱田岳(トリト)、芦田愛菜(ラルゴ)、野沢雅子(ヒスイ)、山寺宏一(オリバー市長、ゼラオラ)、中川翔子(リク)	2018年7月13日	30.9億円
23	ココ	セレビィ、ザルード	上白石萌歌(ココ)、中村勘九郎(ザルード)、山寺宏一(ゼッド博士)、中川翔子(カレン)	2020年12月25日	20.2億円

リメイク作品

第22作は全編フル3DCGで展開される、シリーズ初となるリメイク作品となっている。

作	作品名	メインポケモン	ゲスト声優(役)	公開日	興行収入
22	ミュウツーの逆襲EVOLUTION	ミュウツー、ミュウ	市村正親(ミュウツー)、小林幸子(ボイジャー)、レイモンド・ジョンソン(海賊風トレーナー)、山寺宏一(ミュウ)	2019年7月12日	29.8億円

その他

名探偵ピカチュウ：レジェンダリー・エンタテインメント製作の実写映画。同名のゲーム作品が原作。日本では2019年5月3日に公開された。

先行登場したポケモン

作品	先行登場ポケモン	出典
逆襲/なつやすみ	ドンファン/ブルー、マリル	金銀
爆誕/たんけんたい	ルギア、ヤドキング/エレキッド、レディバ、キレイハナ	"
ドキドキかくれんぼ	カクレオン、ルリリ、ホエルコ	ルビー・サファイア
水の都の護神/ピカピカ星空キャンプ	ラティアス、ラティオス、ホエルコ/ソーナノ、ヨマワル、バルビート	"
裂空の訪問者	ゴンベ	ダイヤモンド・パール
波導の勇者	ルカリオ、ウソハチ、マニューラ、マネネ	"
蒼海の王子	マナフィ、ブイゼル、ペラップ、タマンタ	"
幻影の覇者	ゾロア、ゾロアーク、コロモリ(※)	ブラック・ホワイト
神速/イーブイ☆フレンズ	メガミュウツーY/ニンフィア	X・Y
機巧	マギアナ	サン・ムーン

(※)帽子の柄としての登場。

外部リンク

WEBアニメスタイル - アニメ制作関係者のコラムをメインとしたサイト。脚本担当の首藤氏の連載ページにリンク。
ねとらぼ「新たな一歩を踏み出すポケモン映画――史上初、監督のバトンを渡された矢嶋哲生は何を受け継ぎ変えていくのか」

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