概要
艦名は旧日本海軍の雷型駆逐艦と特型駆逐艦の同名艦「電」から引き継いでおり、いかづち型沿岸護衛艦として1956年に就役した3代目「いなづま」と、のち現在運用中のむらさめ型護衛艦(新)5番艦に受け継がれた4代目「いなづま」の2代が存在する。
以下、代数は日本海軍時代からの通算。
5度の海外派遣を経験した4代目「いなづま」
現在運用中のむらさめ型汎用護衛艦DD-105「いなづま」は、中期防衛力整備計画に基づく平成7年度計画4,400トン型護衛艦、2234号艦として三菱重工長崎造船所で1997年5月8日に起工し、1998年9月9日の進水を経て、2000年3月15日に就役、呉基地に配備された。
同期に竣工した海自艦には、石川島播磨重工東京工場で建造された同型6番艦「さみだれ」、住友重機械浦賀工場で建造された訓練支援艦「てんりゅう」があり、これらも呉に配備されている。
就役後の経歴
- 2002年:7月~9月にかけて、テロ対策特別措置法に基づき、DDG-169「あさかぜ」とともにインド洋に派遣さる。
- 2004年:環太平洋合同演習リムパックにDDG-174「きりしま」とともに参加。
- 2006年:3月~6月にかけて、テロ対策特別措置法に基づき、補給艦「おうみ」とともにインド洋に派遣さる。
- 2011年:3月~8月にかけて、第8次海賊対処行動水上部隊としてソマリア沖に派遣。このとき同行していたのはDD-113「さざなみ」である。
- 2014年:3月~9月にかけて、第18次海賊対処行動水上部隊としてDD-158「うみぎり」とともにソマリア沖に派遣。この際、漂流船を発見し乗船者75人を救助している。
2024年9月現在も呉基地を定係港にしている。現在は第4護衛隊群第4護衛隊所属だが、2008年から6年半の間は、第4護衛隊群第8護衛隊に異動していた。
ちなみに日本海軍の時代から「雷」~「いかづち」との姉妹艦関係が伝統的に続いているが、4代目「いなづま」は同型7番艦「いかづち」との姉妹関係が初めて逆転した。また同型8番艦は「あけぼの」と名付けられたため、3代目で一度は途絶えた「曙」との姉妹艦関係が復活している。
災難に見舞われた3代目「いなづま」
一方、DE-203「いなづま」は、昭和28年度計画乙型警備艦1203号艦として、三井造船玉野造船所で1954年12月25日起工、1955年8月4日進水、1956年3月5日に就役の後に呉地方隊に配属された「いかづち」型沿岸護衛艦の2番艦。ディーゼル機関を採用しており、蒸気機関のDE-201「あけぼの」とは、機関が異なるのみの準同型艦にあたる。
この3代目「いなづま」は1960年6月4日と翌5日の2度にわたり痛ましい事故を起こし、5名の乗員が殉職する事態を引き起こしている。
4日の事故では津軽海峡東口付近で夜間対潜訓練中に僚艦の「あけぼの」が衝突、「いなづま」の艦橋を破損してしまい、「いなづま」側の乗員2名を死に至らしめ、別の2名が負傷した。海自の事故調査委員会によると、原因は「あけぼの」側の操艦ミスであるという。「いなづま」の先祖にあたる日本海軍の初代電、2代目電も衝突事故を起こしているが、初代の衝突事故では自らが沈没し、2代目電は、同じ吹雪型駆逐艦の深雪を沈没させてしまった。
本艦はその日のうちに函館ドックで損傷復旧のため入渠したが、さらに翌5日もまた事故を引き起こしてしまった。
5日の事故では、復旧作業中にガソリンが爆発して乗員3名を死に至らしめ、別の乗員4名とドック従業員2名が負傷した。
これらの事故を乗り越え、3代目「いなづま」は1977年まで現役を続け、保管船への種別変更(DE-203改めYAC-31)を経て、1983年3月30日まで在籍した。なお最終定係港は舞鶴(教育隊係留)である。
関連タグ
むらさめ型護衛艦/むらさめ-はるさめ-ゆうだち-きりさめ さみだれ-いかづち-あけぼの-ありあけ
きりしま(イージス艦)/さざなみ(護衛艦):いずれも4代目いなづまと同じ三菱長崎で建造された。横須賀配属の前者はこんごう型護衛艦の2番艦、本艦と同じ呉配属の後者はたかなみ型護衛艦の4番艦。「きりしま」は2014年10月まで、4代目いなづまと同じ8護隊所属だった。
上記のうち「さみだれ」「さざなみ」「かが」は4代目いなづまとともに4護隊に所属している。