あらすじ
ある昼下がり、おじいさんは仕事も一段落つけて、握り飯を食べようかと包みを開いた。するとおむすびはコロコロと下り坂を転がって行き、ネズミの穴に落ちてしまった。それを追いかけていたおじいさんは、穴の中から楽しげな歌が聞こえてくるのに気付き、穴に耳を寄せると、おじいさんは、うっかり穴に落っこちてしまった。
穴の中は意外にも明るい宮殿が広がっていた。おじいさんは中に棲んでいたネズミたちから「おむすびをありがとう」
と歓迎を受け、帰り際にお土産として大きなつづらと小さなつづらのどちらかをもらう。欲の少ないおじいさんは小さなつづらをもらい、家でおばあさんと中を開けると大判小判がたくさん入っていた。
それを聞きつけた隣の意地悪なおじいさんは、沢山おにぎりを作って片っ端から穴にぶち込む。ネズミは(渋々)横柄な態度を取る隣のおじいさんを歓迎するが、欲を出した隣のおじいさんは宝物殿を捜そうと宮殿の中を荒らし回る。怒ったネズミは齧りつき、ボコボコにされた隣のおじいさんは這う這うの体で穴から出ることができた。
それからというもの、優しい働き者のおじいさんは大金持ちになってからも威張り散らすことなく村人たちに財産を分け与え、隣の意地悪なおじいさんも懲りたのか、欲張ることなく真面目に働くようになりましたそうな。
解説
どこからともなく家の中に侵入する性質から、日本では古来よりねずみは根の国(地下ないしあの世)に住むという伝承があり、その伝承が強く反映された昔話である。
民話なので地方や文献によって話の細部に差異のある類話が数多く存在し、『ねずみ浄土』『ねずみの餅つき』といったタイトルが付けられている物もある。
優しいおじいさんが与えられる宝物についても上記の通り「大判小判」の場合もあれば、「大きなつづらと小さなつづらのうちどちらかを選ぶ」「打ち出の小槌を貰い、それを振ると子宝に恵まれなかったおじいさんとおばあさんに子供が生まれる(ねずみが子孫繁栄のシンボルともされるからか)」といったバリエーションが語られる物もある。
また、意地悪じいさんの行動についても「ねずみの宝物を独り占めするため猫の鳴き真似をしてねずみを追い出そうとする」とされていたり、その後の末路も「慌てて逃げたねずみが地下の国の明かりを消してしまったため意地悪じいさんは穴の中に閉じ込められ、モグラにされてしまった」というオチから「暗い地下に閉じ込められ窒息死する(あるいは行方不明になる)」「怒ったねずみ達に臼と杵で餅のように潰される」といった現代から見るとブラックなオチの物も存在している。
また主に現代の国語の教科書等では、優しいおじいさんが宝物をもらって喜ぶシーンで終わる物もある。