概要
2019年11月現在のpixivでは、「お菊さん」とは主に愛称として複数の人物・キャラクターが該当する。
その属性は主に次の二種類に大別される。
さらに個別の要素から細分化すると、次のようになる。
上記1.のケース(特定のモチーフを源流とするもの)
- 怪談・「皿屋敷」の登場人物
上記2.のケース(愛称としての「お菊さん」など)
- ヘタリアに登場する本田菊(同作のキャラクターである「日本」の愛称)への呼称・愛称の一つ(キャラクターの詳細は「本田菊」記事を参照)
- pixivの森の関連キャラクター(詳細はpixivにおいて「お菊さん」を検索ワードとした「部分一致検索」によってヒットする個別の作品を参照)
本記事では1.のケースにおける個別の事項を記述する。
2.のケースについては上記の個別の記事や個別の検索による具体的な作品を参照。
「皿屋敷」を源流とする「お菊さん」
複数の「皿屋敷」
「皿屋敷」には複数の作品があり、有名なものでは江戸番町が舞台の「番町皿屋敷」や、播州姫路で展開される「播州皿屋敷」がある。歌舞伎や浄瑠璃などの様々な演芸・芸能の題材ともなり、今日でも怪談として継承される物語の一つである。
怪異として共通する点は何らかの形で「皿」の代償として責めを負わされた「お菊」がその死後(殺害、自害などのケースがある)にその怨念とともに亡霊としてこの世に現れ、夜な夜な「皿」を数え続ける、というものである。
「お菊」に浴びせられた様々な不条理とその不条理のためにに命を断たれた「お菊」が死してなお祟りとして顕現し、相手(または不特定の他者)を精神的に追い詰めていく姿が描かれる事が多い。
物語の結びとしては「お菊」の無念の元凶が別の人物によって討ち取られたり、あるいは「お菊」本人も神社に祀られその怒りを鎮めるなどのパターンや、あるいは謂れある人物が亡霊の「お菊」本人の鎮魂に向かうというケースもある。
「皿屋敷」の「お菊」はその後も何らかの逸話と結び付けられる事もあったようで、後話としては例えば「お菊虫」(特定の蝶の幼虫ともされる「虫」の大量発生を「お菊さん」の祟りや舞い戻りと結び付けた逸話)などがある(詳細は姫路城の記事を参照)。
「皿屋敷」を源流とする作品
戯曲・「番町皿屋敷」
岡本綺堂(1872-1939。劇作家、小説家。「狂綺堂」の号による作品発表も行う)による作品。
複数ある「皿屋敷」の作品の中でもタイトルの通り「番町皿屋敷」を作品のベースとしている。戯曲・歌舞伎脚本として制作されたもので、初演は1916年(大正5年)、本郷座(東京)にて。
「皿屋敷」をベースとしつつもその展開や登場人物の心理、結末に違いがあり、怪談としての要素ではなく悲恋へ至る恋愛の物語となっている。本作は愛を誓い合った男女が、時の家柄に翻弄され、疑心暗鬼と裏切りへの憤怒激情の末、互いに取り返しのつかない行動をとってしまうという内容。今日で言うバッドエンド系列のアレンジ。
本作での「お菊」は腰元であり、自らが仕える旗本の青山播磨と身分違いの恋をするが、播磨の親族には反対され、日々つらい思いをしていた。
そんな中、播磨に縁談が持ち上がり、お菊は激しい葛藤を抱くことになる。播磨の親族から「お前の価値など、家宝の皿一枚にも及ばない」と侮辱されたお菊は、播磨の愛を確かめるべく家宝の皿を割ってしまう。
これが後々の因果へとつながるのである。
お菊の皿 / 皿屋敷
上記の怪談をモチーフとした落語演目の一つ。「怪談噺」の一種。
皿数えをする美しい亡霊であるお菊さんがひょんなことから評判となり、お菊さんが出没する廃屋敷が次第に人でにぎわうようになった。やがて廃屋敷にはお菊さんを鑑賞するための客席が設けられ、出店のような商売をする者も現れだす。
お菊さん本人もまんざらではないようで、ノリも良くその盛況ぶりに応じていく。
しかし番町皿屋敷では皿を数えきるのを聞く死んでしまうというのがお菊さんの怪異であり、今日でもその要素がないという確認がある訳ではないため、このお菊さんの舞台では観衆はお菊さんが皿を数えきるまでに逃げだすというのが通例となっていた。
しかしとある日はその盛況ぶりが仇となり、出口に向かう人の波によっておしあいへしあい、逃げ出す事が出来なくなってしまう。
さて、お菊さんはいつもの通り皿を数え続けるが、観衆の命運や、いかに。
番町皿屋敷のモチーフを織り込みながらも落語演目としてその雰囲気をがらりと変え、お菊さんがもたらす怪異への恐怖もスパイスにしつつ亡霊となった今日でもなお美しいその姿に惹かれた人々の活気と粋とが描かれる。かつては悲しみを背負い恐怖をもたらしたお菊さんの華麗な転身と意外なかわいらしさも描かれるなど、「お菊さん」の新しいアプローチの一つでもあった。
落語演目には、怪談の恐怖やそのバックボーンにある悲しみを、独自のストーリーも付加しつつ笑いや人情といった温かみへと転じて新たな創作へと結んだ作品がある。本演目もそういった作品の一つである。
関連タグ・外部リンク
関連タグ
お菊(幽霊):表記揺れ。
外部リンク
- Wikipedia
- 青空文庫
「皿屋敷」と関連したオリジナル・二次創作作品
pixivに発表された作品においても先述のような様々な「皿屋敷」に登場する様々な「お菊さん」をその創作の基盤にしたりモチーフとして織り込んだりした作品が発表されている。
例えば怪談に見られる皿を数える様子などは「お菊さん」に象徴的な点であり、この要素をベースとした作品も見られる。
関連イラスト
- オリジナル作品
- 特定の創作の二次創作
東方Projectに登場する「お菊さん」
詳細はお菊さん(東方project)を参照