焦るんじゃない 俺は概要が知りたいだけなんだ
漫画版『孤独のグルメ』第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」における、主人公井之頭五郎のセリフ。
土地勘のない仕事先で腹を空かせた五郎。さらに道に迷った上に雨に降られ、目についた大衆食堂に「ええい!ここだ 入っちまえ」と飛び込む。注文を済ませてようやく周囲を観察する余裕ができ、常連らしい男性客がライスととん汁を持ち帰りで注文しているのを聞いて、心中で発したセリフである。
その後漫画連載にドラマ版と、長きに渡り続くヒット作の記念すべき第1話。舞台となった台東区の山谷(さんや)地区はドヤ街として知られる土地であり(『あしたのジョー』の舞台としても有名)、冒頭から日雇い労働者達の姿や地域の殺伐とした雰囲気が赤裸々に描かれ、五郎も心中でのセリフが多く余計な口はきかないなど、全体に後年と比べハードボイルドな雰囲気が強い。(しかし、店の温かい雰囲気に触れ、五郎は思う存分飯を食い満足して店を出ていく。作品の基本はこの時点で出来上がっていると言える。)
ネット上では「◯◯!そういうのもあるのか」の形で、新たな属性や性癖などを開拓するコラージュやパロディに使われることが多い。定番の登場に安心する「こういうのでいいんだよ、こういうので」とは対となるセリフともいえる。
なお、登場する店のモデルとなった食堂「きぬ川」は2017年10月で60年の歴史を終え閉店、作中に描かれたいろは会商店街のアーケードも2018年初めに老朽化で撤去されており、現在は作中の雰囲気を現地で感じるのは難しい。
うーん…名セリフがダブってしまった
第1話からゴローちゃん節は絶好調で、他にも名セリフが複数生まれている。
- 焦るんじゃない 俺は腹が減っているだけなんだ
道に迷い、雨に降られ、土地勘のない場所に入り込んでしまった五郎。周囲は作業服姿の労働者が大半でスーツ姿の五郎は目立ち、視線を集めている。自分に言い聞かせるように五郎が心中で発したセリフであり、今後も腹を空かせて店を探すシチュエーションは作中の定番となる。
- うーん…ぶた肉ととん汁でぶたがダブってしまった
五郎が注文したのは最初「ぶた肉いため」「ライス」「おしんこ(ナス)」だった。しかし店内の貼り紙を見てとん汁をとっさに追加したため、文字通り豚肉がダブってしまったことに注文が届いてから気づいた時のセリフ。ネット上では注文内容を全部ライスにしたコラが有名。
- このおしんこは正解だった
こうして豚肉満載の食事を開始した五郎だったが、ちょうどよく漬かったほとんど丸一本分のナスのおしんこが爽やかな口直しとなり、おいしく食が進む。買い物やゲームのキャラ・装備選択など、正解だったと思える選択ができた時に。