「モノを食べるときはね 誰にも邪魔されず
自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ
独りで静かで豊かで……」
井之頭五郎はとにかく食べる。独りで。
スイマセン この「概要」をひとつください
あだ名は「ゴローちゃん」。
2012年から放映されている実写ドラマでは松重豊が演じている。
2017年に配信開始したタテアニメでは堀内賢雄が声優を担当した。
職業は個人経営の輸入雑貨の貿易商。基本的にいつも着ているものはスーツ。なお、原作の仕事場で使用しているデスクトップのパソコンは3.5インチのフロッピーが使用可能なレトロなもの(連載開始が1994年だが連載間隔が開いているため時代背景が曖昧になっている。これについて原作者は『悩んだ挙句「すっとぼける」ことにした』と新装文庫版のあとがきで明かしている)。割と儲かってはいるようで、作中では高級店をハシゴしたり、BMWやボルボなどの輸入車を買い替えたりしている。
喫煙者だが酒は飲めず、甘党である。ドラマでは居酒屋等でも酒を頼まないため『お車ですか?』と店員に尋ねられ、下戸と説明すると『ええ~飲みそうなのに』『見えませんねえ』と言われるのがお約束。
なお、酒に関してはかなり弱いようで、ドラマ第8期・第8話にて「パーティーに参加した際、ワインを勧められても「飲めませんので」と断るも、周囲のにこやかな圧力に気圧されてワイン(乾杯用のグラス1杯分)を一気飲み、その後ふらふらの状態でホテルに戻り、翌朝のチェックアウト時刻まで二日酔い状態で寝過ごす」という失態をやらかしている。
年齢はしばらく明言されていなかったが、新装文庫版あとがきにて30代半ば(細かく何歳かは決まっていない)という設定と明かされた。また、連載時期の間隔が空いているが五郎の年齢は一緒とのこと。
仕事場も兼ねた東京都内のマンションで一人暮らしをしている。かつてはパリに住んでいたことがあり、その頃は小雪(さゆき)と言う名前の女優と付き合っていた。現在は「結婚や店を持つことは守るものが増えそうで人生が重たくなる」と考えるようになり、特に交際している女性はいないようだ。
食べ物の好き嫌いはあまりなく、話の際の空腹具合と勢い次第で多少限界は異なり、食後は食べ過ぎたとして苦しむ姿も見せるが大変な大食漢。セットメニューを二つ平らげる、店員がお会計かと思ったら追加注文、なんてこともしょっちゅうで、一度コンビニで夜食を買った際は実に1892円分もの買い物をした(会計時、さらにレジ横のおでんから卵・大根・白滝を追加したため、作中で正確にはわからないものの合計金額は2000円を超えると思われる)。
五郎の食べる量の多さについては原作者・久住昌之氏の憧れがあり、酒が飲めない代わりにバクバクと食べるキャラになったとか。なお、原作者はお酒好き。
ご飯にこだわりがあり、おかずだけ食べていても白米を食べられないと表情に不満さを表すシーンが幾度か登場する。ただ、ピザ屋やパン屋のパーラーなど、ご飯を頼む方がおかしい店やパンが合うメニューの洋食店の場合は(パンなどで炭水化物は十分取れていることもあって)そういったことは見られない。
また、その場の勢いで食べたい物を選択するので、季節ものでやっていないとして肩透かしを食らってしまったり、頼みすぎて満腹になってしまい残してしまう事やおかずがダブってしまう事もしばしば。
高校までは田舎で古武道を習っており、現在でもトレーニングを続けているため、スーツの下はかなり筋肉質。これで性格の悪い店主に華麗なアームロックをキメたり、アルハラをしていた会社員を投げ飛ばしたことも。
ちなみに、同原作者の作品である『花のズボラ飯』の主人公・駒沢花の夫「ゴロさん」と下の名前が同じであるが、苗字や設定が全く異なるため、別人であると思われる。
弱ったぞ すっかり実写心に火がついちまった
実写版は原作漫画版よりも後年(何年後とは具体的に示されていない)という設定のためか、実写版独特の作風もあり、五郎の性格もいささか異なる。
その為、基本的に原作シーンのオマージュはあっても再現は殆ど無い(一度だけ回想という形で再現されている)。
ただし、「赤羽に来るのは20年ぶり」というセリフもあるので、その程度が想定されているのかもしれない。
具体的に言えば、実写版五郎は原作よりも幾分柔和で人好きのする性格…つまりは「丸く」なっており、食事の前後には合掌して「いただきます」&「ごちそうさまでした」を欠かさないなど「強面だけど礼儀正しく、本当は良い人そうなおじさん」といった人となりをしている。
反面、ハードボイルドさでは原作版五郎には及ばない、という声も。
原作ではあまりなかった個人輸入雑貨商として仕事をするシーンでは、経験からくる豊富な知識と審美眼、それと人柄の良さで信頼を得ており、出会う顧客とは概ね良好な関係を築けている。少し押しに弱い面があり、無茶振りを受けて突然海外に飛ぶといったこともしばしば。
ただしやはり自身の腹具合に正直であり、商談中だというのにいきなり話を打ち切って店を探しに行くことも。
自身の仕事には誇りを持っているらしく、「決算前に経費を使っておきたいだけだから適当にやってくれ」と言われた時は、非常に良い条件だったにもかかわらず断っている(シーズン5、第6話)。
実写版は実在している(あるいは過去に実在していた)店を舞台として使っているため、原作版ではたまに遭遇する「ハズレ店」が一切無く、基本的には「当たり」のお店ばかりである。
なんでも、実写版ドラマ1シーズンにつき、事前に制作スタッフが150件程度を地元住民の情報などを手掛かりに手分けして探し、さらに選定した上でオファーをお願いしているらしく、「地元の人たちに愛されている店」を選んでいるためハズレが無いらしい。
(一度だけハズレに近い店もあったが、単に五郎の食べ方やスタンスに合わないだけで、その店の料理自体は充分満足なものだったので、厳密にはハズレではない)
作品の知名度が高まってからは店側から「ウチをドラマに使ってくれ」という逆オファーも来ているが、全て断ってスタッフが選定した店のみをチョイスしているという。
加えて、実在するお店に対する礼儀という面もあるのか、実写版五郎は(原作通りの大食いぶりを見せるが)食べ切れずに残すようなことはせず、全て綺麗に平らげて去って行く。
ただし、おかずのダブり癖は原作の頃から変わっていないらしく、しばしばやらかす(が、さして気にせず結局美味しくいただいてしまうのも原作通り)。
なお、演じる松重は甘党で下戸の大食いの五郎に対し辛党で少食の酒豪と真逆の嗜好をしているため、収録前には食事を抜くなどして臨んでいるという(ただ、「辛いですが大丈夫?」と聞かれ「辛いの大好きです」と答えるなど、演者の好みも多少は反映されている)。
松重氏のキャスティングについては原作者の久住氏がかなり推しており、原作との容姿の違いも肯定的に考えていたそう。対してテレビ局スタッフは原作ファンの拒絶反応を恐れていたとか。(新装文庫版あとがきより)
また「甘党」という面がクローズアップされてか、シーズンによっては「本命」の店に入る前の軽いジャブとして、甘味処や喫茶店など(もちろん、こちらも実在のお店である)で甘い物を食べるシーンが挿入されることもある。
歳のためか若者のノリにはついて来れず困惑する一面も。
好評を博し10シーズン以上に渡って続く実写版であるが、演者の松重は「おじさんが1人で飯を食うだけのドラマの何がいいのかさっぱりわからない」とコメントしている。
ゴローちゃん名言集……うん!これだ
不思議な魅力を持つ彼の独り言を見てみよう。(太字は個別項目のあるセリフ)
- 腹が、減った… (実写ドラマ版)
- 俺の腹は今、何腹なんだ (実写ドラマ版)
- 焦るんじゃない 俺は腹が減っているだけなんだ
- 持ち帰り! そういうのもあるのか
- うーん…ぶた肉ととん汁で ぶたがダブってしまった
- なるほど…この店はとん汁とライスで十分なんだな
- このおしんこは正解だった
- ラストの2枚……あれが効いたな
- ごはんがあるのか うん! そうかそうか そうなれば話が違う
- ここに並んだ大量のおつまみが すべておかずとして立ち上がってくる
- うん……うまい 確かにうまい しかし……これはどこまでいってもシューマイだな
- 早くご飯こないかなぁ 焼き肉といったら白い飯だろうが
- うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ
- 身も心もあのハヤシライスになっていたのになぁ
- うまい 確かにうまいんだが 今日の俺にはこの肉のうまささえどこか上滑りしていく
- うわあ なんだか凄いことになっちゃったぞ
- ここでは青空がおかずだ
- ソースの味って男のコだよな
- 生きているというのは 体にものを入れてく ということなんだな
- 何も名物にとらわれなくていいじゃないか おいしけりゃそれで
- 人生には…大嫌いなものを黙って食べなきゃならない時もある だけど 人が嫌がるものを無理矢理食わせる権利は誰にもない
- (酒は)なくてけっこう コケコッコー
- がーんだな…出鼻をくじかれた
- ああ…白い飯が食べたい
- 俺ってつくづく 酒の飲めない日本人だな…
- ああ楽しいな 楽しいよこの店ほんと!
- ほー お残し厳禁ねぇ いいじゃないの おっしゃるとおり 日本人なら米を残すな!
- いかん 店のペースに飲み込まれてる
- 慌てるな 心と胃袋がつんのめってるぞ 俺!
- ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので
- モノを食べるときはね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ 独りで静かで豊かで……
……etc
なお、実写版でも似たようなセリフやインパクトのある独り言を数多く生み出している(ここでも原作とは少し違い、かわいらしいものが多いのも特徴)。
シャーリー・メディスンとアームロック うん こういうタイプか
あるエピソードで店員に罵詈雑言をはく店長に五郎が苦言を呈した所、店長は五郎を店から追い出そうとする。だが五郎は逆に店長にアーム・ロックを掛ける。
この場面の相手を店長から「シャーリー・メディスン」に置き換えた漫画が何ものかによって描かれた。出たのはふたば☆ちゃんねるかららしいのだが、その後「ゴローとシャーリー」と言う謎カップリングが発生、pixivにも飛び火することになる。
かたや硬派系グルメ漫画、かたやメイド漫画で両者の共通点は全くないが、それ故なのか見た者の印象に残るらしい。
ここは関連イラストで決めよう
うわあ これみんな関連タグかあァ
腹が、減った... こういうのでいいんだよ うおォン 人間火力発電所
アームロック:五郎が作中で食事を邪魔した失礼な店長に食らわせた技。そのため五郎の代名詞とも言える。
ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話(二次創作)
関連・類似する他作品のキャラクター
シャーリー・メディスン:漫画作品『シャーリー』の登場人物だが、どういうわけか二次創作では『五郎にアームロックをかけられることを望んでいる』という設定が付加されている。
甘利田幸男:同じく食事関係の要素を扱ったドラマ作品『おいしい給食』の登場人物。食事中にモノローグを語る者、ほとんどがフォーマル衣装、独身、甘党、下戸繋がり。但しこちらは五郎以上に食に対する楽しみが貪欲で、オーバーリアクションとなっている(何故か周りは気づかない)。
山岡士郎:漫画作品『美味しんぼ』の登場人物。偶然にも『料理漫画の主人公』という大きな共通点があるが、士郎には『人の作った料理に上から目線で文句を浴びせる』『ひたすら美味なる料理を追求する』等といった五郎と正反対の要素があるまさしく『水と油』であるため、もし鉢合わせたら恐らくこうなる。
アオキ:ポケモンSVに登場するサラリーマン兼ジムリーダー兼四天王と言う三足のわらじ状態(社畜とも言う)のトレーナー(一応本業は五郎と同じくサラリーマンらしい)。やや細身の体型に反してかなりの大食いで、主人公と戦う前に定食を食べていたにもかかわらず、戦った後に大量のおにぎりを頼んでいた。外見が実写ドラマ版の俳優に似ているとの声も。更に攻略本に掲載された原案・設定資料には上記の「腹が、減った...」顔と思しきものが書かれている。因みにアニポケと実写ドラマ版は同じ放送局である為、「アオキのグルメ」という専用のネタタグまで作られている。