主に日本における、日雇い労働者が多く住む地区のこと。
「ドヤ」とは、いわゆる安宿である労働者向けの簡易宿泊施設のことを「ヤド」をひっくり返して(蔑称的に)「ドヤ」と呼んだことが発祥とされており、「ドヤ街」は各地域から労働者が集められる「寄せ場」の近くに簡易宿泊施設が複数建てられて町並みを形成したことに由来する。
多くは都市圏内やそれに隣接する地域にあるが、都会の市街地とは一線を画した、質素である意味ではレトロな街並みが特徴である。
日雇い労働者の中には経済的に恵まれない人、公的なサポートを受けられないような人も多く、衛生面・治安面での問題も大きいことから、日本におけるスラム街、貧民窟に相当するという意見もあるが、完全に同じではない。
「ドヤ街」と呼ばれるゾーンはあくまでそれがある街の一区間に過ぎず、近隣では中流階級にあたる住民も普通に生活している。治安についても、(普通の街に比べれば悪い方ではあるが)重犯罪の温床となっているというわけではなく、わざわざ自分から危険な場所に突っ込まなければトラブルに巻き込まれるようなこともほぼない。住民の多くが(元)日雇い労働者の独身男性である、というのも、スラムや貧民窟との違いの一つである。
しかしながら、定宿がなく仕事がなければ街を彷徨うしかないホームレスや、年齢や体調の関係から仕事を受けられず生活保護を受給して細々と暮らすしかない者、身寄りがなく何らかの理由で公的なサポートからも取りこぼされてしまった者も少なからずおり、特に昭和から平成初期は日雇い労働の劣悪な環境の改善を訴えるための暴動が幾度となく起こっていた。2023年現在日本で起こった最後の報道は2008年にあいりん地区で発生した第24次西成暴動である。
また、暴動と関連して労働者に付け入る暴力団や新左翼系の政治団体による勧誘も確認されている。
さらに、あいりん地区は結核の患者数が日本トップクラスである。
2000年代以降は労働者の高齢化、減少もあって規模が縮小されており、「労働者の街」という雰囲気は少し目立たなくなっている。また都市圏にありながら格安の宿や飲食店が多いこと、再開発の影響が少ないことで独特の古い町並みが残っていることなどから、旅行者、特に海外からのバックパッカーへの人気も高まっている。ドヤがホテルや高齢者向けの長期アパートとして改装されることも増えている。
あしたのジョーの舞台である泪橋界隈もドヤ街である。