概要
銀河帝国の将官の一人。階級は中将。
後に帝国皇帝にまで出世する事になるラインハルトと同年齢で、幼年学校では首席のラインハルトに次ぐ優等生集団の一人であった。後に士官学校に進んで俊英の名が高かったが、中途退学して前線に身を投じ、実戦指揮官や作戦参謀として武勲を重ねた。士官学校卒業をしなかったわけで、最下層からの出発であるが(士官学校卒業後は中尉からが一般的)、それでも(貴族の息子というアドバンテージがあるとはいえ)将官クラスにまで出世しているのだから、優秀なのは間違いないであろう。
後にリップシュタット戦役にて、幼年学校で学んだ同年齢の貴族の息子たちがラインハルトに対決姿勢を固める中、いち早くラインハルトに味方してその後カール・グスタフ・ケンプ提督の指揮下で少なからぬ功績を上げた。その後門閥貴族の息子たちが戦死・死罪の憂き目に遭う中で「勝ち組」となった。ラインハルトが帝国宰相の地位に就くと、友人の死の後での戦力補強もあり、トゥルナイゼンはラインハルト直属の将官となる。その後、元上官であるケンプ提督がイゼルローン要塞攻略戦で自由惑星同盟軍のヤン・ウェンリー提督に敗死し、トゥルナイゼンは敗軍の一員になるのを免れた。
この驚異的な幸運ぶりにより彼は「自分は選ばれし者」と信じるようになり、さらなる出世を目指し、事あるごとに自分を目立たせるようになる。上官の前でもひと際大きい声で発言したり、ケンプ提督と共に敗軍になりながら生き延びたナイトハルト・ミュラー提督や、平民出身ながら上級大将にまで出世したウォルフガング・ミッターマイヤー提督を例に挙げて「この乱世だからこそ出世できた。だから我々にもチャンスはある」と同将官達に豪語していた。この様子を見ていたラインハルトの首席秘書官ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフはトゥルナイゼンがラインハルトの持つ天才的な才能に目を奪われ自分も同じと思っている事を危惧していた。
「天才は模倣の対象にはならないのに…」
その後、自由惑星同盟を併呑すべく、帝国軍はラインハルトの指揮のもと「ラグナ・ロック(神々の黄昏)作戦」を実行に移し、トゥルナイゼンもラインハルト直属軍として加わる。ランテマリオ星域会戦を経て、いよいよラインハルトの宿敵ヤン・ウェンリーを討つべく、ヴァーミリオン星域において直接対決をする事になる。ここでは大将以上の各艦隊は各星域の制圧に任せ、ラインハルト自らは直属の艦隊を率いてヤン艦隊をおびき寄せた上で包囲殲滅する策を立てる。その上で直属艦隊は重厚な防御陣を張った上でヤン艦隊を消耗戦に持ち込むという作戦を立てる。トゥルナイゼンはその中で艦隊第二陣として構える事になる。
ところが、いざ戦闘が始まると砲撃戦は急激かつ無秩序に広がってしまい、ラインハルトもヤンも軌道修正に苦心をする羽目に陥ってしまう。ラインハルトの軍は中将以下で主将の意思が分からない面々、ヤンの軍は人員が少なく各警備府から招集した寄せ集めの面々だった事が災いしたと思われる。ここでラインハルトが「中級指揮官がいるのだから、それぞれの部署で対応せよ」を指示を出すが、そこでトゥルナイゼンは自分で動いても良いと解釈し「第一陣が苦戦してるのだから、前進を図ってヤンを討つべし」と第一陣の前へ前進を図ってしまう。それにより各艦が接近してしまい、衝突回避システムが急作動して艦隊は大きく隊列を乱した上に、ヤン艦隊にとっては「格好の的」になり、たちまち集中砲火を浴びせられてしまう。これにはさすがにラインハルトも激怒し、参謀長のオーベルシュタインからも「大した勇者だ」と冷ややかに述べている。
その後援軍によって体制を立て直し、本来の防御陣でヤン艦隊の消耗を図るが、それを見抜かれた上に、多数の隕石を用いた囮部隊を用いて帝国軍の主力を引き付ける間に、ヤンの本隊は直接ラインハルトの旗艦ブリュンヒルトに迫る。トゥルナイゼンら5中将はすぐに駆け付けようとするが、囮部隊に集中砲火され大半が壊滅してしまう。トゥルナイゼンは最低限戦線は保っていた分他の中将よりは健闘したものの、ヤンの敵ではなかった。
結局ヴァーミリオン星域会戦は、偶然が重なりいち早く星域に駆け付ける事が出来たミュラー提督の奮闘と、敗北を予測したヒルダの要請でミッターマイヤー、ロイエンタール両提督が同盟首都星ハイネセンに直接進軍し降伏と停戦を促した事で、かろうじて帝国軍の勝利に終わる。しかし戦略面では勝利しても、戦術面では明らかな敗北であり、その一端を作ったトゥルナイゼンは閑職に回され、歴史の表舞台から追い出されることになる。
藤崎版では新領土総督となったロイエンタールの麾下に回されており、旧同盟首都ハイネセンで市民を弾圧する仕事を「犬仕事」と呼んで不平を述べつつも(原作ではロイエンタールの発言)、戦争による昇進の機会が失われたことについては達観したような表情を浮かべ、むしろ他の若手軍人を心配していた。
原作によると、その後の第11次イゼルローン攻防戦時点で一応大将クラスの将官として名を挙げられており、ラインハルトの戴冠に伴って階級上は一応昇進したようである。もっとも職務面では著しく精彩を欠く日々を送り、少なくとも上級大将以上の面々との格差は目立つものであった。
貴族出身でありながら、時勢を見極めて貴族連合軍ではなくラインハルトにつく、あえて前線に身を投じて昇進を重ねるなど先見の明は非凡なものであったと言える。
また、アルフレット・グリルパルツァーのような背信行為を働いたこともなく、一応は真っ当な人材であった。
前線に勤務してヤンと正面から戦った経験を有しながら最後まで戦死することがなかった幸運も、評価できる一要素かも知れない。
しかし、彼の器はそこ止まりであり、獅子の泉の七元帥に及ぶほどのものではなかった。
おまけに、彼の持っていたラインハルトへの対抗意識や昇進意欲は強すぎて、その器に見合っていなかった。
自らの器を自覚して、それを踏まえて職務に精励していれば更なる評価を得られたかも知れないが、器に見合わない強すぎる野心は自らの行動を誤らせ、栄達の道から外されてしまったのであった。