イスカリ(Fate)
いすかり
『Fate/Grand Order』にNPCとして登場するキャラクター。
第2部7章『黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン』において、敵キャラクターの一人として登場する。
黒豹を模した仮面とボディスーツに身を包んだ青年。
南米異聞帯の第5層・トゥーラに存在するメヒコシティを拠点とする人型生物『オセロトル』達の王であり、同異聞帯を支配する神霊テスカトリポカの部下としてカルデアに襲いかかる。
一人称は「僕」。
蛮族と軍人が合わさったような性格で、獣の如き凶暴性と軍隊の合理性を以て、敵対者を効率よく容赦なく蹂躙する。テスカトリポカ達には忠実に従い、汎人類史に対しては激しい憎悪を抱いているため対話は困難。
こうした敵対者を見下し容赦なく殺戮する姿勢は、傲慢で血も涙もない人物にしか見えないが、実は殺戮にしか関心のない他のオセロトル達に内心辟易しており、彼自身は「争いのない国」という最終的な悲願を隠している。
なぜなら、自分たちの戦争行為は、敵味方含めて誰へも感情を持たない戦闘機械のようになれるから成し得るものと考えている。汎人類史への憎悪・嫌悪は、人間たちが同胞を殺せない心を持ちながらも、相手を躊躇なく殺せるという、いわば二枚舌のような矛盾を感じ取ったのが根底にある。
自身曰く「テスカトリポカ神に選ばれたオセロトル」「オセロトルの王」とのことだが、実のところオセロトルたちの言語は理解できていない。
また、汎人類史におけるアステカ神話での生贄の儀式において戦わない者の心臓を捧げていたことが間違いであるとし、自分たちは各種犠牲をテスカトリポカへの供物と考え、生贄に選ぶ相手も無駄な血を流さないよう戦士を選んでいる。彼はテスカトリポカを完全な形で蘇らせようと考えており、それには力ある臓器が必要不可欠と考えている。
仮面の下にある額の左上部分には謎の傷があり、カルデア陣営がこの異聞帯に来てからずっと痛みを訴えているのが意味深。
オセロトルを率いての集団戦法を得意とする。
イスカリ自身はアサルトライフルを持ち手を挟むように組み合わせた異形の銃を2挺同時に装備して、素早い身のこなしを活かしたガン=カタのようなスタイルで戦う。
生身の人間であると思われるが、上級サーヴァントにも劣らない強さを誇る。
モーション中では、主にゼロ距離での接射や、下から撃ち上げるような動きで銃撃を放っていることが多く、他にも赤黒い電撃を纏った飛び蹴りを披露する。
また、詳細は不明だが再生能力があるらしく、バトルでは回復スキルとして機能する他、倒されると塵になって消滅するがその後何事もなかったかのように復活する。
信仰を捧げている神霊。イスカリ含めオセロトル達が近代兵器で武装しているのは彼の影響。
自分の身体をテスカトリポカ神のものとしており、その目標とはテスカトリポカ神を完全な形で顕現させること。その手段の過程としてなのか、「生き延びること」を命じられている。
テスカトリポカを名乗る人物は複数おり、イスカリも1年前からその名を名乗っている。
イスカリが名前を授けたオセロトルの一人で、判明しているオセロトルの中では珍しい人間性の持ち主。名前を与えられた事もあってイスカリを敬愛しているようだが、イスカリ自身は彼にどのように接していたかは不明。
イラストを担当した古海鐘一氏は他のオセロトルのデザインも担当しており、手持ち武器はラセングルがデザインしたもの。また、彼がつけているマスクにもデザイン元が存在しており、これについては後編で明らかになるという。
Fate/GrandOrder 黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン
現人神になるはずだった青年の、最後の迷い
こうまで物事を割り切ってしまえる背景には、彼は親から生まれ成長して現在に至った存在ではなく、ミクトランの土を原料に初めから「成人として作られた存在」であるところが大きい。
汎人類史の人間の身体と、ミクトランの王となる精神を組み合わせられた状態で成人男性として作られた彼は、家族や同胞といった人物関係が存在せず、自分に与えられたものへの絶望・自分に従わない者への失望といった衝動、自分を取り巻く全てに対する反動だけを持っていた。
なぜなら、そのあまりにシンプルで淀みない在り方こそが、武器商人の黒いテスカトリポカから任じられた「現人神としてのテスカトリポカ」になるため必要な精神だったのであり、汎人類史を滅ぼすという行動に迷いがないのは当然であった。
だが、そんな彼に人生初の迷いが訪れる。
黒いテスカトリポカが「事象交差」によって一時的に呼び寄せた「ORTによって滅亡したミクトランの未来」を目の当たりにした事を皮切りに、彼から与えられた最後の役割「迷いなき滅亡の意志を持つ自分を生贄にしてORTを目覚めさせる」に躊躇していた。
彼は1年、現人神になるために戦い抜いたが、その末に望んだのは汎人類史を滅ぼすことによる異聞帯ミクトランとオセロトルの繁栄であった。
ここが黒いテスカトリポカとの決定的な考え方の違いであり、「戦いで斃れる数は同数であるべきだから、汎人類史を滅ぼすなら異聞帯も滅ぼすべき」という彼の主張を最後の最後に呑むことはついにできなかった。
それを訴えたことに対する黒いテスカトリポカにとってそれは、自分自身から説教をうけたも同然であり、その理も正しいと手放しにイスカリを認めたのである。
王に意見するなら命を差し出せという原則に則った、一発の銃弾と共に。
こうして彼は、迷いある存在としてORTの生贄には成りえなかった。
それがORTの運命を大きく左右する。
彼に与えられた「イスカリ」という名前は「成長」を意味する幼名であり、彼の本当の名前は『モテクソマ2世』(モンテスマ2世、モクテスマ2世とも)。
汎人類史の人物であり、史実においてはスペイン人のエルナン・コルテスに騙され、アステカ帝国滅亡と植民地化を許してしまった悲劇の王として伝えられている。
彼が騙されたことを知ったアステカの民は怒りのあまり石を投げ、そうして無数に投げられた石のひとつが頭部に当たって死亡したいう。
そのモテクソマ2世の魂を再利用して創造したのが先のイスカリであったのだ。
テスカトリポカによれば、モテクソマ2世の魂を利用した理由は曰く「同情」。
「先の見えない新しい時代でも民が生きられるようにするため、コルテスを受け入れる」
「今まで守ってきた帝国を維持するため、コルテスを追い出し徹底抗戦する」
……という選択を迫られたモテクソマ2世。
結果として彼は前者を選び、国もろとも滅びることとなった。
テスカトリポカの意図は、「民」を選んだ彼の決断は正しかったのかを見極めること。
わざわざ王として人生をやり直させたのも、モテクソマ2世がその上で何を選ぶのかをその目で見届けるためだったのだ。
そして、モテクソマ2世……イスカリは今回も「民」を選んで散っていったのだった。
ちなみに、彼の体には受肉したテスカトリポカ自身の右肺が体に組み込まれており、これが先述の「1年の月日が経過するまでは身体が滅びない」という不死性のカラクリであった。
しかしその右肺はきっちり1年間しか機能しないとも語られており、どのみち彼の人生は「約束の日」で終わりだったようである。実際、テスカトリポカに射殺されずともあと数時間足らずの命であった事が語られている。
モテクソマ2世であることを踏まえて見返すと、伏線がいくつか仕込まれているのがわかる。
まず、イスカリの額にあった消えない傷跡は死因となった頭部の傷。
また、イスカリの衣装等もよく見るとモテクソマ2世の絵画とよく似ている部分が多い。
それから、ストーム・ボーダーへの襲撃時。
新所長が交渉(に見せた時間稼ぎ)した際、一度は交渉に応じる素振りを見せたもののゴルドルフが『金髪の異邦人』とわかるとイスカリは射殺を試みた。
アステカ帝国を滅ぼしたコルテスらスペイン人がゴルドルフと同じ『金髪の異邦人』であったのだから、信用ならないと考えるのはごく自然なことである。
コメント
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